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地下迷宮都市公開

冒頭ナレーション


太陽の光が徐々に弱くなって行く事に気が付いた、カバラ皇国の人々は、30年の月日と多大な戦士の犠牲を出しながらも、地下迷宮の魔物を駆逐し、この土地を開発したと言う。


そして、太陽の火が消えた時、大人たちの命を犠牲にした魔法で、地下迷宮都市と呼ばれるまで開発した、この地下施設ごと、地球に転移して来たと、カバラ皇国の人達は語っていた。



重厚なナレーションの後、映像は最大の出入口である真駒内駐屯地から始まった。


12時間に及ぶ生放送の始まりである。


「皆さん、おっはようございます。今日は、一日掛けて地下迷宮都市を私フローラがご案内しまーす。それでは早速中へ入りましょう」


流暢な日本語を話すフローラ=エルフに導かれ、しんと沈んだ湿気のある空気の真っ暗な洞窟を、撮影隊の照明に照らされながら進んで行く。


生放送と言う事もあり、道中は放送事故のように、無言で代り映えのしない映像が続くが、リアルタイムの視聴率は落ちる事はなかった。


そして、やっと奥に一筋の光が輝きだし、一歩一歩ひかりの方向へ歩いて行くと一気に視界が広がった。


地下迷宮都市第一層に到着したのだ。


そこは、東京ドーム10個分程度の広さの『区画』であった。高さは50m程度で、天井は宝石のような鉱物がひかり洞窟内を照らしていて、少し薄暗く夢の中の場面を思い出したように赤黒く霞んでいる。


そこに、一万人程度の兵士が思い思いに待機していた。


赤黒のユニフォームを着た、フローラ=エルフがカメラの前に立ち


「地上への出入口のある区画には、常に兵士が常駐し守りを固めております・・・あれ? こんな事教えていいんだっけ? まぁいいか」


笑顔で誤魔化したあと


「隣の区画に行きましょう。そこは、第一層の大部分を占める耕作区画です。」


フローラ=エルフに導かれ隣の区画まで歩き、門のような縦穴をくぐると、小麦のような作物が雑多に生い茂る畑が広がっていて、無数の蝶々が舞っている。


すると、蝶がふらふらと宙をさまよってきて、フローラ=エルフの肩にとまった。


蝶はカラフルな大きな羽を折り畳み、安心して眠り込んだ。


「可愛いですね~」


同行しているアナウンサーは、フローラ=エルフの言葉も聞こえないかのように、立ち尽くし景色に見惚れていた。風の音と、虫と鳥の鳴き声しかない。息を吸い込めば、その音すら身体に取り込めそうと思った。


・・・


フローラ=エルフからすると、いつもどおりのぱっとしない耕作地の、ぱっとしない風景がそこに広がっているだけだ。


雑多に生い茂る作物は、土埃をかぶり、錆を浮かべた鍬がいくつか放置されていた。


『作物を勝手に採ったら重罪です。お腹が空いても我慢が必要。皆で力を合わせて危機を乗り越えよう』とルーン文字で書かれた恥ずかしい標語が掲げてある。


このアナウンサーは、何に見とれているのだろうかと不思議に感じていた。


・・・


アナウンサーが視線を上に向けると、小鳥が気高くのびやかに舞い飛び、ぱちぱちと口ばしを鳴らして蝶をくわえる。


蝶をついばむたびに、ぱちっ、ぱちっと空中で弾ける音は高らかに愉しげに、命をたたえるように力強く響いていた。


それは、この地下で生態系が維持されている証拠である。


地表に目を向けると、流れ出てきた水が、うねりうねって、解きほぐした絹糸の束のようにつやつやしく、なほやかに揺れながら流れている。


虫の鳴き声とせせらぎの音は、まるで誰かがしゃべっているようである。


用水路のような川の周りには、びっしりと作物が植えられているが、雑草があられもなく茎を伸ばし、お世辞にも効率的な農地には見えない。


川の片隅に、大きな水車がしぶきの息を吹き、しずくの汗をたらして、がらがらがらと動いていた。


水車小屋の傍らで、フローラ=エルフが説明を始めた。


「ここで脱穀・製粉をしたあと、水でこねてから乾燥させた物が『フフ』です。これが私達の主食になります。食べて見ますか?」


アナウンサーにフフを渡すと、一口食べて感想を言った。


「ふっくらしていて、もちっとした歯触りで、悪あがきすることなくやわっと噛み切れてしまうけど、あまり味はしませんね。」


それから一時間ほど進むと、恐竜のような巨大な肋骨がトンネルのようになっていた。


「すごーい! これは、何ですか?」


「この階層を守っていた、女王地竜の亡骸ですよ。」


「こんなのがいたんですか?」


「女王地竜は、通常の地竜の4倍の大きさで、最後に仕留めましたが、数百人の兵士が犠牲になったので、記念碑として残しているんですよ」


「大変だったんですね」


「自衛隊の方が大変ですよ。一晩で3万人も犠牲になりましたから」


「そうですか・・・」


浮かれていたアナウンサーが、そのたった一言で現実に戻される。


日本とこの人達は、今戦争をしているんだと・・・



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