射殺
宛先:東京大学五神教授
件名:新種らしき野鳥のサンプル送付
お久しぶりです
北海道大学宮脇です
五神教授、私の知識では新種に思える、梟らしき野鳥の羽毛と細胞サンプルの写真を添付しております。また実物も宅急便で送付いたします。
実は夕張岳の麓でカラスに襲われていた、梟を偶然保護し治療後、戻してやったのですが
その後、残っていた羽毛と細胞を調査したところ、羽軸の偏りが異常であり更に細胞にミトコンドリアが確認出来ませんでした。
突然変異だとしてもミトコンドリアが無いなどありえない事ですので、五神教授に観て頂こうと思いご連絡いたしました。
異端研究者扱いされるのは嫌ですので、まだ誰にもこの事は話しておりません。
PS.また旨いスープカレー屋を見つけたのでご訪問頂けばご紹介しますよ
-------
夕張市 国道274号線
まだ陽が昇っていない早朝の国道で警察官達が取り締まりの準備を行っていた
「あーあ、薄暗い早朝から隠れて取り締まりってまさにネズミ捕りって感じで良心の呵責を感じるな」
「仕事なんだから、愚痴るな」
「茂みの近くで一人レーダーの横に座る、私の気持ちを察して下さい!」
「山本!愚痴ってばかりいないで所定の位置で準備を行え!」
「はいはい」
山本がレーダーを設置していると
ドン!と言う衝突音のあと、森の木々が揺れる・・・
「ひっ!?鹿か?熊か?・・・」
------
夜間の偵察を終えライカンスロープ族が地下迷宮への帰路、森の中をを全力疾走している
「陽が昇る前に地下迷宮へ戻るウォ!遅れるなウォ」
木々をすり抜けるように疾走していたライカンスロープ族だが2匹が接触しバランスを崩した1匹が巨木に激突した
ドン!
頭を打ち付けてしまったライカンスロープが失神してしまっている
失神して伸びてしまっている若いライカンスロープをエルッキ=ライカンスロープは抱き上げ頬を二、三度引っ叩き起こすとウォを頷き立ち上がる若いライカンスロープ
そこへ後方から殿を任せているエサイアス=ライカンスロープが何やら報告にきた
「族長!今の衝突音で人間がこちらに向かってきてまウォ」
森の中で息を潜めているライカンスロープ達に人間がゆっくりと近寄ってくる
「まずいウォ・・・気が付かれたか、皆息を潜めウォ・・・」
「人間は何人いるウォ?」
「こいつ以外に後ろに3人いるウォ」
森の手前で止まった人間は、何か大声を挙げながら付近の石を手に取り投げつけてきた
石が命中してしまった、エンシオ=ライカンスロープは思わず唸り声を挙げて立ち上がってしまい
それを見た人間は発狂したような呪文のような声を挙げながら指先から魔法を放ってきた
2発3発と連続して放たれた魔法はエンシオに命中し激高したエンシオは血みどろになりながら人間に飛び掛かっていったが、魔法が眉間を打ち抜くとその場に倒れてしまった
「エンシオが殺られたウォ!」
族長であるエルッキ=ライカンスロープは、ミスリル剣を鞘から抜くと一気に間合いを詰めエンシオへ魔法攻撃していた人間の喉元を躊躇なく切り裂く
後方から駆け寄って来た人間が立ち止まり族長に指先を向けると族長の危険を察知したライカンスロープ唸り声を上げてが飛び掛かるが、指先からの魔法を食らって倒れる
それを見ても怯む事無く次々と人間に襲い掛かるライカンスロープ達だが近寄る前に魔法を食らって倒れていく
しかしその魔法も長くは続かなった
先ほどまで3人の人間から次々と放たれた魔法は止みカチカチカチと魔法失敗?のような音が出るだけとなった
「こいつらは魔力切れだ、一気に始末しウォ!」
ライカンスロープ達は魔力切れの3人に一斉に飛び掛かり魔法を放つ腕を切り落とし喉元を突くと人間は沈黙した
「エンシオと負傷者を担いで地下迷宮へ戻るウォ!」
早朝の国道脇の茂みには4人の警察官の死体だけが残されていた
-----
王宮謁見の間
「・・・・・ですウォ、陛下大変申し訳ございませんウォ」
セシリアと各族長達は、エルッキ=ライカンスロープから事件の報告を受けた
「起きてしまった事なので仕方がありません。今回の戦闘を今後の戦に活かす為、皆で話し合い対策を考えましょう」
「犠牲者は丁重に埋葬し負傷者の手当てを全力で行って下さい」
「今回の事件で人間達がどのような出方をしてくるか解るまで、夜間の調査は中止、スプライト族とテイムした黒鳥での調査は続行、妾もコニーを使い出入口周辺を警戒します」
-----
翌日、国道で警察官が熊に襲われたとしてマスコミが一斉に報道し警察官を千名動員した大規模な山狩りが行われた
セシリア達はその様子を黒鳥を通して警戒していたが、山狩りは最初の尾根を超えることはなく終わり地下迷宮の出入口付近へ近づく事はなかった