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それぞれの人体実験

地上でカバラ皇国軍と自衛隊の戦いが行われているなか、宮脇は地下迷宮都市で生物学者としての研究に没頭していた。


魔法とは何なのか?


それは全てプラズマ化で、ある程度の説明は付くが、宮脇は物理学者ではないので、その現象に関しては深く追求していない。


宮脇は、何故分子の電離を操作出来るのか? と言う謎に着目した。


プラズマと言う単語は、あまりにも広義にであいまいであるが、地球上の生物の神経伝達も細胞膜に生じる膜電位によって行われているので、我々も無意識にプラズマを操作してる事になる。


宮脇の仮説は、人間が扇子を使って紙吹雪をまいたり、息で風車を回すように、カバラ皇国の亜人は、自身の生体電流により分子の電離を操作している。と言うものである。


宮脇は、仮説の検証の為に、北大医学部から各種検査機器を持ち込み、セシリアの許可を得た上で、リリス族の従者を使って人体実験を行っていた。


神経伝導検査機、生体電流インピーダンス測定機を使い測定したが、生態電流は、200μAと普通の人間と同じ数値が出た。


試しに魔法を使って貰った状態で測定したが、大きな数値の変化は見られなかったので、宮脇の仮説は、自身の検査により否定された。


次は、その健康への効果などは、疑似科学と馬鹿にされるがプラズマの測定に適しているマイナスイオン測定器を使って見ると、マイナスイオンが特に大きく発生する大きな滝で、10,000/cm3であるが、ただ単にリリス族へ近づけただけで、300,000/cm3と30倍の数値が測定された。


リリス族の従者に、ライトの魔法を使って貰うと、999,999/cm3とデジタル測定値の最大値となり、それ以上の計測は出来なかった。


実験の結果からリリス族は、荷電粒子が体から溢れだしており、魔法を使用した場合には、その量が跳ね上がると言う事になる。


天体観測などに用いられるプラズマ波動観測器があれば色々と検査も可能だが、そんな物は、ここにはなかった。


地球上の生物も荷電粒子を出し、体内で電流が発生しているが、その源は、ミトコンドリアである。


カバラ皇国の亜人達には、ミトコンドリアが存在しない代わりに、似たような細胞内器官があり、ほぼ同じような働きをしていると、宮脇は考えている。


「結局、こいつに戻るのか・・・いつまでも『こいつ』じゃ解り難いから名前を付けるか・・・」


・・・


「まぁ糸ぽっくないから、ボールコンドリアでいいか・・・」



宮脇がボールコンドリアを観測し続けるが、地下迷宮都市にある機材では、ミトコンドリアよりブラウン運動が激しい位しか解明出来なかった。


宮脇の手に最新機器さえあれば、魔法の原理を追及できそうなのであるが・・・



※ミトコンドリアとは、直訳すると糸顆粒と言う意味です。


------



千歳駐屯地に謎の地下施設がある、20年前、もし宇宙人を捕獲した場合に幽閉する事を目的として、大真面目に作った施設である。


そこに、最新の医療機器と北海道大演習場から、損傷の少ないカバラ皇国亜人の遺体が運び込まれていた。


遺体は、所沢の防衛医科大学の教授によって解剖され、その一部始終は精密に記録されていた。


ドラコニュート族の解剖は困難を極めていた、全身を覆う硬い鱗は、メスを通さない為、鱗を一枚一枚丁寧に剥ぎ取ってからメスで解剖するが、ほとんど外傷が無いにもかかわらず、内臓は原型を留めておらず、骨は砕かれ骨格も解らない状態であった。


何体かの遺体を確認すると、奇跡的に頭部のみ損傷し胴体は無傷であると思われる遺体があった。


銃弾を物ともしない、ドラコニュート族の分析は最重要項目と指示されていた為、この遺体は、解剖する前にいくつかの軍事的な試験が行われていた。


そこへ、荒谷が不愉快さをできるだけ表したいとでも努めている如き表情で入室してきた。


「おい! 遺体とは言えやり過ぎなんじゃないか?」


防弾ガラスで仕切られた部屋の兵士は、スピーカー越しに聞こえる荒谷の声を聞こえないふりをして銃を構えた。


「撃て!」と言う掛け声で、兵士はドラコニュート族の遺体の右肩を撃ち抜いた。


「おい! お前ら正気か?」荒谷はマイクに向かって怒鳴る。


防弾ガラスの中では、荒谷を無視し、医者らしき者達が銃弾が当たった箇所を診察するように、その損傷度合を調べていた。


「おい! 聞いてのか?」


いよいよ荒谷が鬱陶しく思ったのか、白衣を着た責任者風の人間が重そうな扉を開け、荒谷の所へ近づいて来た。


「防衛医科大学医学研究科教授の村井です。荒谷さん兵士達が委縮してしまうので、怒鳴るを止めて頂けませんか?」


「お前ら正気か? 遺体とは言えこれは人体実験だろ、こんな事して許されると思っているのか?」


「荒谷さん、彼らはその身体そのものが武器のような物です。白兵戦で打つ手がない状況で、彼らを調べる事は必要な事です!」


「しかし、遺体でも尊厳と言う物があるだろ!」


「遺体は遺体でしかありません。捕虜を使って生体実験をすべしと言う声も上がっております。そんな悪魔的な実験を止める為にも、遺体を使った実験が必要なんです。解って下さい。」


荒谷は、眉と口のあたりに、むごたらしい軽蔑の影をまざまざと浮かび上げ渋々と退出していった。


荒谷退出後、研究者達は、各種火器による身体への影響、化学薬品の効果、電流や熱など様々な実験を行い、詳細なレポートを作成していた。




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