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警視庁公安部外事第三課


日本政府が、札幌への移動を危険として警告しながらも、制限を掛けなかった理由は、市民の財産権保証の他に、自衛官や公安を潜入させる目的もあった。


札幌駅周辺のタワーマンションを中心に、札幌市内に住居を構える政府関係者の親族も含めて洗い出し、片っ端から連絡を取り部屋を借りていたのである。



警視庁公安部外事第三課の兵藤は、リュックサックひとつを背負って、小樽から札幌駅へと徒歩で向かった。


同じ任務の人間が相当数いると聞いているが、誰が政府関係者なのかお互いに知らされていなかった。


途中、剣を持ったライカンスロープや、巨大な斧を持ったミノタウロスなどのカバラ皇国兵士に遭遇するが、特に止められる事もなく札幌駅に隣接する警察関係者の家族が暮らしていたタワーマンションに着いた。


一流ホテルのロビーのような日当たり良いエントランスから、非接触型の認証キーをかざし、エレベーターホールへと入り32階の部屋へ迷う事無く入った。


そこは、札幌駅を眼下に望む見晴らしの良い角部屋である。


兵藤は、部屋でくつろぐ事無くリュックサックから、装飾品に似せて作った高性能無線小型カメラを60個窓に取り付けると、ノートパソコンを開き暗号化された専用チャットで作業完了の報告を行った。


今回の任務で兵藤には、任務に関係する事を口に出してはならないとの指令が下っていた。


未だにその原理は解明されていないが、カバラ皇国には高度な盗聴能力がある事が政府から通達があった為である。


兵藤は一通りの作業を終え、ベランダから外の風景を見ると、まるでとっておきの折り紙を丁寧に並べたみたいに、大小のビル群が碁盤の目に沿うようにずらりと並んでいる。


その一つひとつには微細で精巧な窓が編み目のように刻印されていて、ある窓は青を映し、ある窓は緑に染まっていた。


「綺麗な街並みだな~」


兵藤は、煙草を吹かしながら札幌の街並みに魅入っていた。


リビングに戻ると、ノートパソコンのチャットアプリのアイコンが開けるのをせかすように点滅している。


クリックしパスワードを入れると



(カメラ映像の確認終了しました。全て問題無く作動しております。)


→(了解、今後の予定は?)


(後は指示があるまで待機願います。)


→(いつまで、ここにいるのか予定はありますか?)


(申し訳ありませんが、現段階では、交代の予定はございません。)


→(了解しました)



テレビを付けようと、リモコンが無いか辺りを見回すと、花瓶の下に『お客様へ』と書かれている封筒が挟まっていた。


当然、家主から自分宛てだろうと思い封を開けると、一枚の写真と自筆でびっしりと文字が書かれた手紙だった。


写真に映っているのは、制服姿の警察官である、袖章の蛇腹に金色の線が2条になっているので、署長である事がわかる



我が家のお客様へ


お仕事お疲れ様です。私達家族は、東京へ避難しておりますので、我が家をご自宅のようにお使いくつろいでいただければ幸いです。


台所の床下収納に、お米や缶詰、お酒などありますので、お口に合うようであればお召し上がりください。


(省略)


主人は、住民の皆様を守る為に殉職いたしました。報道を見ておりますと、犠牲になった者や残された遺族の事など気にする事無く、無益な争いだ、寛容さを見せる時だ、全て許そうではないかなど、まったく関係ない人達が声を上げております。


主人は大勢の部下を亡くし、自身もそれを悔やみながら逝ってしまったと思います。


主人の死は無駄だったのでしょうか?


大勢の部下を亡くしたのは、主人の責任なんでしょうか?


誰が悪いんですか?


私も平和を願っております。しかし、主人の死は無駄ではなかった、と思えるような幕引きになる事を望んでおります。


お客様の安全をお祈りいたします。



-------


札幌市内にある高層マンションや高台にある住宅を中心に、至る所にネットワーク接続された高性能カメラを設置した事で、地上の防犯カメラやNシステムなどの既存のカメラと連動し、日本政府はカバラ皇国軍の動きをリアルタイムに把握する事が可能となった。






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