家族を守る
札幌市西区山の手は、市内でも比較的高級住宅が多い街だ。右を向いても左を向いても豪邸で、一般人が立ち寄ってはいけないような威圧感がそこら中に漂っている。
北大に通う真紀子は、高級ではないが周りの自然によく調和した古びた家で、最近では珍しい三世代で暮らしている。
TVから避難を勧める報道が繰り返し流れているリビングで、家族全員で話し合っていた。
祖父母は、避難所は体に辛いと思うから、自分達を置いて避難しなさいと、両親へ話していた。
「おじいちゃん達が、そういうのなら仕方がありません。明日の朝に避難所へ行くから、自分の分は自分で荷物の準備をしなさい。リュックひとつ位にしておきなさい」
父が私と弟に向かって言い放った。
「ちょっと待ってよ。私もこの家に残りますよ。うら若き乙女が、ノーメイクで、体育館で雑魚寝とかありえないから」
「俺もねーちゃんと一緒で残るよ。ネット使えるし、街の様子を動画でアップするだけでお小遣い稼ぎも出来てるしー」
シューッという音が父の脳天からし始めた。怒り心頭である。
「お・ま・え・た・ちの為に、避難しようとしてるんだ! ここにいたら何が起こるのか解らんのだぞ!」
弟は、まるでせせら笑うような言い方で
「避難所行ったって同じじゃん、避難所が襲われるかも知れないじゃん」
少し冷静になった父は諭すように
「今の所は、カバラ皇国の化け物は、我々に危害を加えてこないが、いつ心変わりするのかも知れないんだぞ。奴らを信用し過ぎだ!!!」
「それなら、避難途中に、襲われちゃうかも知れないじゃん。父さんの言ってる事、無茶苦茶だよ」
・・・
「かあさんはどう思う?」
息子の正論に、旗色が悪くなった父は、母に振った。
「どこにいても危険かも知れないですね。私はお父さんの言う事に従いますよ。お父さんが決めて下さい。」
「俺は父さんが避難しても、家に残る」
「わたしも残るよ、お父さんはカバラ皇国の人達を信用出来ないって言ってるけど、私は信用するよ。だって北大の宮脇先生が、カバラ皇国の人達と一緒にいるんだから」
「お前たちは・・・何故わかってくれない・・・」
普段は、明るい筈の家庭内が陰気にしめりかえり、気まずい雰囲気が部屋の中に充満していた。
ピンポーン! ピンポーン! ピンポーン!
張り詰めた空気を崩すように、インターフォンの音が鳴り響いた。
母が玄関に向かうと
キャー!!!!!
と悲鳴が聞こえたので、全員が玄関へと走った。
「母さんどうした!」
そこには、全身毛だらけのライカンスロープが立っていた。
「驚かせてすまんウォ」
「母さん大丈夫か? 母さんに何をした!」
「お父さん、大丈夫ですよ。ちょっと驚いただけです」
安心した父がライカンスロープに
「何の御用でしょうか?」
「ここに、ご老人がいると聞いたウォ、明日避難するのなら、近くまで運ぶウォ」
・・・父は家族全員の顔を見渡したあと
「結構です。私達家族は、この家に残るつもりですから」
「解ったウォ、戦火が及ぶ事もあるので、気を付けてウォ」
「はい、私が家族を守りますから」
ライカンスロープは、あっさり去って行った。
「父ちゃんかっこええわ~」
「大人をからかうんじゃない!」
「いやマジでマジで、マジでかっこ良かった」
真紀子は父の物真似をしてからかう
「私が家族を守りますから(キリ」
「おい、やめろ!」
「「「ハハハッハハーハハハッハハーハハハッハハー」」」
「俺が悪かったよ。人を見た目で判断しちゃ駄目って、お前たちに小さい頃から言ってたのに、自分が見た目で判断していたよ。まさか彼らがお年寄りを避難するのを手伝うなんて・・・思ってもみなかった」
このような家庭は少数で、子供がいるほとんどの家庭は、避難の準備をしていた。




