迫撃砲部隊襲撃
翌日、日本政府から午後2時から2時間の爆撃時間が、市民に向け通達された
旭丘高校の屋上では、エルフ族10人が飛翔体を警戒していた
「炎の飛翔体が、こちらに向かって来ました!」
「全員で右手の山方向へそらすんだ」
エルフ族は、巡航ミサイルの右側に広大な真空を作り気流を操作すると、巡航ミサイルは大きく軌道をずらし、旭山記念公園へ向かい爆発した
「成功した! 他はどうなっている?」
北星学園へ飛来した巡航ミサイルは、近くのマンションを直撃しマンションは倒壊、麻生高校へ飛来した巡航ミサイルは、駅前の商業施設周辺を破壊していた。
市内で上がる黒い煙を見ながら
「我々は人気のない場所に誘導出来たが、他は周辺に適当な場所がなかったようだな、住民に被害が出ているので自衛隊も攻撃を止めてくれればいいが・・・」
「新たな飛翔体が来ます! それも複数です」
旭丘高校へ120mm重迫撃砲の弾丸が飛来し、エルフ達は同じように軌道をそらすが、ほんとんど軌道がずれずに、旭丘高校を直撃し屋上のエルフ達は、全滅した。
北海道大演習場から市内各所に、120mm重迫撃砲が60発発射され、56発は狙い通りに直撃したが、4発は魔法により僅かに軌道をそらし、周辺の住宅街を爆破し攻撃は止んだ。
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札幌駅地下街の居酒屋だった個室で、セシリアは族長達と共に、ボレリウス=ドラコニュートから今日の状況報告を受けていた。
昨日から始まった飛翔体による攻撃を、今日はエルフの風魔法でその軌道を変え、攻撃を避ける予定であったが、巡航ミサイルの対処は出来たが、迫撃砲に関しては軌道のずれは僅かであった。
「セシリア陛下、風魔法による飛翔体攻撃の対策は、あまり上手く行っておりませんりゅ。このままでは兵士は為す術も無く消耗していくばかりですりゅ。」
上空の鳶で周辺を、警戒していたリリス族が報告する
「陛下、飛翔体の発射地点の場所は把握しております。シラハラヤマ出入口から10キロほど南下した荒地からです」
これを聞いたボレリウス=ドラコニュートが、セシリアに直訴した。
「陛下、直ちに兵を集結し、飛翔体の発射地点攻略の許可を願いますりゅ!」
「悪戯に戦線を広げたくありません。戦火に巻き込まれる民が増えてしまいます」
「陛下、シラハラヤマ出入口から発射地点までの間は、山と草原で住民はほとんど住んでおりません」
「陛下、このままで戦う事もなく死んで行くだけになります。時間がありません。直ちに攻略の許可を!」
「・・・解りました。作戦は任せます」
「ありがとうございます。ではシラハタヤマ出入口から、地下の即応待機兵3万を直ちに向かわせます」
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夕暮れの赤が透明な刷毛でかさね塗りされるみたいに、一段また一段と濃くなり、夜の闇に変わっていった。
コニーの目を通して、部隊を見守っていたセシリアは、いつもに比べて闇の密度が濃い夜のような感覚を感じていた。
それは不安な心中を反映したものなのだろう。
漆黒の闇のなか、120mm重迫撃砲発射地点攻略の為、アンセルミ=ケンタウロスは3万の兵を編成し、シラハタヤマ出入口から途中の剣岳を目指していた。
この世界に移転してから、最大級の部隊移動で有った為、進軍中の攻撃を警戒していたが、自衛隊の攻撃は無く、無人のゴルフ場を超え剣岳へと到着した
杉林は、夜の漆黒を抱え込んでいる。奥に足を進めると、暗い空気が身体を囲んできた。足を踏み出すたびに、自分達の身体が黒く染まり、さらに足を出すと、影に舐められる。
剣岳の麓は、自衛隊の北海道大演習場である為、剣岳の森には無数のセンサーと監視カメラが稼働していた事は、アンセルミ=ケンタウロスは知る術がない
「自衛隊の攻撃は無かったウマ、自衛隊は我らに気が付いてないのか?」
「アンセルミ隊長 しかし、発射地点にはあの恐ろしい90式戦車が10台、その他戦闘車両が20台と兵士が百名程度で、警戒しております」
「陣地だけを強固に守っている訳であるウマ」
「90式戦車を倒す為には、戦車の上に捕り付き蓋を開けければならんウォ、見つかるまで1mでも近づく必要があるウォ」
真駒内駐屯地で90式戦車と戦った経験のある、エサイアス=ライカンスロープが助言をした
「ぎりぎりまで、静かに近づくウマ、戦闘が始まったら怯む事無く、一気に突っ込むウマ!」
剣岳の麓の有刺鉄線の前で、ケンタウロス族に大楯を持ったドワーフが跨り整列をし、その後ろにドラコニュート族、ミノタウロス族
左翼にはゴブリン族とラミア族、最速のライカンスロープ族は右翼から、エルフ族とリリス族は最後尾
陣形を整え突入の時を待っていた
カバラ皇国軍は、初めて火力制限のない、自衛隊の攻撃を受ける事になるのである・・・
年末年始は、更新が滞ります。定期更新は1月中旬から再開します。