国家緊急事態対処会議
国家緊急事態対処会議は以下のメンバーとそれぞれの補佐官で構成されている
内閣総理大臣 矢部
官房長官 内村
外務大臣 三上
防衛庁長官 野々村
国家公安委員長 渋谷
「以上が派遣した国際テロ情報収集ユニットと防衛省情報本部からの報告になります」
防衛省情報本部情報官園田が事前に徹夜明けの真駒内駐屯地のメンバーと入念な打ち合わせの上まとめた情報を発表し
最後に現地メンバーの強い意向を受け
「国際テロ情報収集ユニットの最終提言は、彼らとの交流は我が国の発展に寄与する事から、現実的な妥協案として夕張岳を中心とした無人の国有地を有償で租借する事となっております。」
園田の説明のあと最初に声を発したのは防衛庁長官の野々村である
「我が国の警察官、自衛官が殺されているのに、戦争を仕掛けるぞ! と脅されて国土を提供するなど弱腰を通り越して売国奴だ! 自衛官であるお前が何を言ってるか解っているのか!」
上官にあたる野々村から売国奴と罵られ顔を真っ赤にしている園田を見て、矢部が口を開いた
「野々村長官、園田くんは現場の意思を代弁しているだけだ落ち着いてくれ、それで1000万人は今どこにいるのだ?」
「それについては問い合わせたようですが、現段階では答えられないと言われております。」
「それが一番大事な所なんだよ! これから来ると言うのであれば何としても止めなければならん」
「現場の推測ですが、近くに控えており直ぐにでも出て来れる状態に感じたようです」
「魔法で姿を隠しているとでも言うのか?」
「現段階では解りかねます」
続いて外務大臣の三上が
「狭い国土の中に1000万人の国家が新たに出来るなど受け入れられないです。万が一彼らがテロリスト支援国家と繋がりが出来た場合我が国は打つ手がなくなる」
落ち着きを取り戻した防衛庁長官野々村は
「陸続きの国境が出来る事は我が国では想定されていない。新たに陸上の国境警備をどうするのか準備が必要だ」
国家公安委員長の渋谷は
「治安維持の保証がまったくできん。組織の立ち上げから始めないとならん」
官房長官内村は
「自衛官を殺害したテロリスト集団との妥協結果など私は国民にどう説明したらいいのか? 国際社会からも舐められるだけだ」
最後に総理大臣である矢部が
「仮にその案を受け入れるとしても実現には10年はかかりそうじゃな、急いで閣議決定で緊急法など出したら国民の支持は受けれないぞ」
結局、出て来る意見は反対意見のみである
「ここで何も進展がなければ戦争になると彼らは言ってますよ!TV会議でも良いので総理が直接会談で方向性を定めるべきではありませんか?」
園田が叫ぶと場は静まり返り内閣総理大臣矢部が補佐官達へ法律的解釈の説明を促し
法律的な対応について説明した
彼らをテロリスト集団と認定した場合は、現段階では自衛隊治安出動の要件を満たしているとは解釈出来ません。
彼らを警察に引き渡し捜査すると共に、SATや機動隊での拠点制圧を行う事が必要です。その上で総理大臣の判断と内閣全閣僚の署名により自衛隊治安出動となります
彼らを国家もしくはそれに準ずる組織とした場合ですが
彼らからの武力攻撃は確認されておりませんし外交交渉を求めている相手に対し防衛出動の要件も満たしておりません
つまり相手からの明確な武力行使が認められない状況で自衛隊がこの事案に関わる事自体が法律的には問題となります
「現段階では法律的には警察の事案と言う事だな。彼らが明確に武力行使してくるまで自衛隊を動かす事は出来んと・・・」
「報告書を読む限り彼らは好戦的な種族ではないと思えるが」
「交渉団はそのように思えますが、皇帝であるセシリアは暗に軍部を抑える為に交渉に臨んでいると言ってます」
「それなら交渉チャネルのセシリアとやらを確保していればちょっと弓矢が飛んでくる程度で収まるじゃないのか?」
「どう言う事ですか首相!」
「我が国民の平和ボケを治すいいチャンスだ、このまま何も結論を出さず相手の出方を確かめて見るのもいいのではないか」
園田が皮肉口調で「総理は田舎の基地で戦闘がお望みなのですね」
と言うと矢部は皮肉とは受け取らず肯定した
「向こうが弓矢でも放って来たら、自衛隊の火力で一軍を壊滅させれば目が覚めるじゃろ交渉はそれからじゃ食料等の物資支援は人道的見地から最大限行う用意はしておく」
「小競り合い程度で収まるとは限りません。相手は未知の敵ですよ」
「10人の機関銃しか持ってない部隊に500人も被害を出しているのだろ?その程度の戦力だ」
最後に防衛庁長官野々村が
「だから札幌で何かあると住民の被害が心配されるから他の基地へ移しておけ」
「承知いたしました・・・」
(ボケてるのは国民じゃなくてお前らだ、この老害共は彼らがもたらす国への利益を想像出来ないのか)
園田は呟いていた




