テロリスト
テロリスト
荒谷に連れられ部屋に入ると20名の日本の高級官僚達が笑顔でセシリア達を迎えた。
セシリア達がカツラや帽子を脱ぐと一瞬驚いたようだが、事前に宮脇から伝えられていたようなので動揺はない様子であった
席に座りお互いに自己紹介を行い挨拶を交わすとセシリアは時間を置く事無く、
自分達の存在を認識して貰えたなら総理大臣もしくは全権委任された者との交渉の場を用意して欲しいと嘆願した。
「ちょっと待って下さい。もう少し順序だてて事を進める必要があります。まずは貴方達について教えて頂けませんか?」
「カバラ皇国の事については、宮脇様から事前に資料を提出している通りであり、それ以上の情報は現段階で教える事は出来ません」
「それでは我が国で起きた事件についてお答え下さい、警察官四名と自衛官十名の殺害に関して関与を認めているようですが、我が国では殺人罪となります。」
「この国は戦争と殺人事件を同一視しているのですか?」
「戦争とは国と国との争いであり、貴方達をまだ国と認めておりませんので犯罪扱いとなります。」
「我が国の兵士と日本の兵士が戦い、日本の兵士14名、我が国の兵士が500名がこの戦いで犠牲となったのは事実です。これは戦争であり犯罪ではありません」
「日本政府の立場としては、貴方達は不法に我が国へ潜入し接触した日本国民を殺害したテロリスト集団です。不服があるのであれば裁判で証明するしかありません」
「今日は妾達を犯罪者として裁く事が目的なのですか?」
「違いますが、事実は事実として確認が必要です。その上で今後について話し合いをする必要があります」
黙って話を聞いていたアルベルト=リリスが立ち上がり声をあげた
「陛下の制止を振り切り、兵を出したのは私です! 私の処遇であれば貴国の自由にして構わぬ! 欲しければこの首差し出そう」
「解りました。いずれ事実を明確にしたいと思います。その時は真実を話して下さい」
お互いの意見が平行線を辿っていることで一旦休憩することになった
水やお茶とお菓子が用意された部屋に案内されると宮脇からたぶん盗聴されているので気を付けるように言われ一同は頷く
「宮脇様これからどうなると思いますか?」
「日本の官僚は時間の掛かる仕事の手順を踏むので、交渉の場に付くには相当の時間がかかると思うよ」
「妾達には時間はありません。せめて交渉の場が用意されないと・・・」
「セシリアちゃん焦っては駄目だよ。少しでも糸口を模索して妥協点を探るんだ」
「はい・・・」
二時間の休憩を終え再開される事になった
外務省の田中から我々では判断出来ないので交渉の概要と目的を教えて頂けばその内容を官邸へ伝え総理の判断を仰ぐ事が出来ると提案して来た
「妾達の目的は戦を止める為、直接日本の指導者と交渉する事です。」
「ですから何を要求するのですか?」
「確実に要求は伝えて頂けますか?」
「伝える事は必ずいたします」
「カバラ皇国臣民1000万人が安心して暮らせる土地の提供です。」
「1000万人ですか・・・日本でなければならないのですか?」
「日本ではなく札幌周辺でなければなりません」
「札幌周辺に拘る理由はなんですか?」
「それは言えません」
「それが叶わぬ場合に戦争になると言う事なんですか?」
「いいえ、交渉次第です。妾達からも提供できる物もあると思います」
「例えば何ですか?」
「金等の鉱物資源や魔法研究での協力など出来る事はいたします」
「確実に官邸へお伝えします。但しテロリスト集団との交渉は原則行わない方針ですのでどのような結果になるかは我々では判断できません。」
「承知しております」
「本日は皆さんでこちらで宿泊して頂きたいのですがよろしいですか?」
「お断りした場合はどうなりますか?」
「申し訳ございません。我が国の法律上で犯罪者となる皆さまを現状では自由にする事は私の権限では出来ません」
「陛下を犯罪者扱いするとは、貴様正気か!」
激高したトピアスを制止しセシリアは
「承知しました。本日はこちらに宿泊させて頂きます」
「ご理解いただきありがとうございます」
「明日なんらかの方針をお聞きすることが可能と考えてよろしいですか?」
「正直に申しますと、我々はこれから官邸へ報告いたしますが、その結果がいつ下されるのかは分かりません」
「そうですか、妾は戦は望んではいませんが妾がいつまでも戻らぬ場合、臣下の者が戦を始める危険性がある事を認識して下さい。」
「承知いたしました。その事も官邸にお伝えする事は約束させて貰います」
宮脇が出されたペットボトルの水を飲み干し資料を突っ込んだペットボトルをテーブルの中央に置いてセシリアに目で合図すると
一瞬で資料が燃えると今度はペットボトルが水で満たされ最後は氷となった
「魔法とはこのように我々の常識が通じません。魔法の研究は日本の利益に必ず通じます。なんとか彼女達との共存を進言して下さい」
外務省の田中はその様子を見て驚嘆すると共にこの力が日本の国益になると確信し交渉をまとめる決意を固めた