創世記
真駒内駐屯地応接会議室には外務省総合外交政策局と防衛省情報本部の面々が妖精を囲み会談を待つ間に宮脇が作成した資料に目を通していた
資料は信じられない内容だが、それ以上に信じられない妖精が目の前を飛んでいるので信じるしかない状態である
防衛省の園田から官邸へ荒谷の報告とTV会議のビデオ映像を提出した結果、外務省総合外交政策局からは国際テロ情報収集ユニットが派遣されている
国際テロ情報収集ユニットは外務省、警察庁、防衛省、公安調査庁、内閣情報調査室出身者で構成されるスペシャリスト集団で各国の軍事や外交のみならず宗教や民俗学に精通した者もいる
「東大の五神教授のレポート通り実際にこの妖精から採取した細胞にミトコンドリアの存在がありません」
「それは何を意味するんだ?」
「解りやすく言えば、植物や菌類も含めた地球上のほぼ全ての生物の細胞に存在していますので、この妖精が地球上で進化した生物ではありません」
「では本当に荒谷が言うように宇宙人と言う事なのか?」
「それは解りませんし、そもそも宇宙人の定義があいまいです」
「貴方はどこから来たのですか?」
「カバラ皇国だにゃ」
「どうやって来たんですか?」
「転移してきたにゃ」
「転移とはワープ見たいな物なのか・・・」
「今何人位がどこにいるんだ?」
「それは言っちゃいけないって言われたにゃ、陛下に直接聞いてにゃ」
「私の方でも事前に色々と質問させて貰いましたが、現状についての情報は得られませんでしたが、過去に彼らの世界から地球に何人か来ているらしいです。」
「それはどう言う事か?」
「まず、2万年前にリリスと言う女性が彼らの世界を追われ地球へ来たと言うのですが、これは旧約聖書の創世記にアダムの最初の妻として記録されています。」
「アダムはバツイチだったのか、知らんかったなハッハハハハハ!」
「そこに食い付きますか? 今関係ないじゃないですか・・・続けますよ。有名な指輪物語と言う小説はほぼ同じ内容が彼らの神話にあるそうです。小説に出て来るエルフやゴブリン、ドワーフは彼らの国に存在し今日はエルフも来るそうです」
「では他国、特に欧州は既に彼らと接触している可能性もあるのか」
「じゃ魔法とか使えるのですか?」
「使えるにゃ」
「ここで見せてくれませんか?」
「陛下に駄目って言われているにゃ」
-----
ヨエルは地下迷宮都市に残り作戦指揮をとる事になった為、会談にはこのメンバーで行く事決まった。
カバラ皇国皇帝 セシリアとその姉シーリとその夫アルベルト
エルフ族からは、フローラとエルフでは珍しい剣士トピアス
スプライト族からヒリヤとイーリス
そして宮脇も同行する
会談には同行しないが、周辺で小動物をテイムする為に2人のリリス族も宮脇のランドクルザーに乗り真駒内駅の近くで降ろされた
真駒内駐屯地の入口に着くと迷彩服の荒谷が出迎えてくれた。
「お嬢ちゃん約束通り総理大臣に直接伝えることが出来る政府の人間を呼んでおいたぜ」
「ありがとうございました。貴方ならお約束は守って頂けると信じておりました。」
「でもな~これから先どうなるかは保証できんよ。」
「覚悟の上でここに来ました」
鍵を付けたままのランドクルザーを入口の守衛に預けセシリア達は、荒谷に案内され奥の建物に徒歩で移動した
「お嬢ちゃんは双子だったのか?」
「いえ、姉です」
「そうか見分けは付かんから多少は警戒して来たってことだな、でもお嬢ちゃんを暗殺するって事は考えてないと思うぞ」
「まぁ念のためですよ」
「それよりこの子さっきから俺を見る目が殺気だっているんだが・・・」
「義兄さまの指揮で貴方の部下相手の戦で500人の犠牲を出しましたので」
「そう言う事か・・・俺だって部下10人殺られてるんだけどな」
-----
地下迷宮都市ではヨエルを中心に部隊編成を行っていた
事前に用意されていた真駒内駐屯地の出入口は最後に魔法数発で地上へ通じる状態で保たれ、その周辺に兵士が陣を張っている
その先頭でテイムされたカラスの視野を映した水晶をヨエル=エルフとボレリウス=ドラコニュートが注視していた。
「いよいよ陛下達が自衛隊の駐屯地に入ったりゅ」
「うむ、しかしこれが戦へと繋がる訳ではない、我々は最悪の事態に備えているだけだ」
「兵達の士気は高くいつでも戦える状態りゅ」
「いや、戦はまだ先になるであろうから、各部隊に交代で休憩を取るように指示してくれ」
「承知だりゅ」