妖精をみた自衛官
セシリア達と宮脇はそれぞれ街の調査とデータ分析を数日間行い昼は完全に別行動だが夜には宮脇の部屋でお互いの疑問をぶつけあい、朝まで話しが尽きない日も何度かあった。
数日間の札幌の調査とその過程で出会った人々との触れ合いでセシリアは、争いではなく話し合いで解決したいと強く思うようになり
その為に宮脇へ全てを話し、話し合いの為の協力を依頼する事にした
セシリアはカバラ皇国は札幌周辺の地下に1000万人の民と100万人の兵士と共に転移し現在は地下で僅かな食料で食いつなぎでいる
カバラ皇国臣民はこの世界で生き残って行く為に地上の領土が必要と考えその手段として札幌を奇襲により占領しその後の交渉で札幌と交換する形式で大雪山系の周辺を領土する案が有力視されている
カバラ皇国臣民の多くは、生き残る為に争いは必要と考えその犠牲も覚悟している
このままでは確実に戦となる! 戦を止める為に日本の皇帝に直接会い交渉したいと宮脇に話した
宮脇は、戦の準備をしていた事気付き悩んでいたが話し合いでの解決には協力する! と言ってくれた
「宮脇様は知っておりましたか・・・」
「君達を見ていれば、そりゃ気が付くよ。止めようとも思ったけど満子さんがありのままの日本をセシリア達に観て貰えば考えを変えるかも知れないと言うので今まで協力してきたんだ」
「満子さんが・・・」
宮崎がセシリアの相談に乗る形で話し合いの可能性について話し始めた
日本では皇帝(天皇)には何の権力もなく、政府の最高責任者は選挙で選ばれた総理大臣であるが宮脇の人脈では早い時期に会わせる事は難しいので
カバラ皇国の人々が地下から出てきて支援を訴え世論を味方に付け政府と交渉する方法を提案するが
無防備な状態でカバラ皇国の存在を明らかにする事は危険すぎるしカバラ皇国臣民の理解を得る事は出来ないと却下された
「日本でこんな事は初めてだから世論を含めて政府がどのような対応となるかは正直解らないな」
「トップもしくはその側近との会談以外は無意味です。その会談である程度の情報は伝えるつもりです」
「側近か・・・」
宮脇はふと【妖精をみた】と言った自衛官を思い出した
「君たちの存在を理解してくれると思う軍人なら連絡を取れるが・・・」
「高位の軍人ですか?」
「たぶん偉いと思うよ、その人は森で妖精をみたと言っていた」
「スプライト族を見たんですね。会って見ますか」
「陛下、軍人は危険です!」
「どのような話をするのかは様子を見て決めます、いきなり切りかかってはこないでしょう」
「森の件で話があると言えばここに来てくれると思う」
「それではお願いします。スプライト族にもここへ来てもらう事にします」
「妖精を連れてくるの!?」
「自分で来て貰います」
そう言ってセシリアはアニーとトニーを見つめると二匹は大きく頷いた
「この梟に話せば妖精に話が通じるのかい?」
「リリス族は、テイムした動物と視覚聴覚嗅覚を共有する事が出来るので、アニーとトニーに聞こえればカバラ皇国に要件は通じるのです」
「それは凄い・・・後で調べさせて・・・」
「宮脇さんが教えて下さったテレビやラジオの原理と同じで、梟の波長に合わせる事で梟の視野を遠隔地で共有出来るんですよ」
「脳波を合わせられるって事か・・・」
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暫くしてから宮脇が荒谷へ連絡を入れると荒谷は千歳勤務になっているので
早速、明日に宮脇の研究室へ来てくれる事になった
そしてセシリアが日本政府へ要求する内容を宮脇に相談する
北海道地図を広げ
居住区として大雪山系を指差しこの山脈と周辺の森
夕張市、由仁町、長沼町あたりを囲み農地として欲しい
と説明した
「セシリアちゃんそれは無理な要求だ。国有地の山脈の一部なら可能性はあるが、私有地である農地は不可能だな」
「もちろん、無償とは言いません。迷宮の地下資源や金貨など差し出す事は出来ます。」
「それでも無理だよ、それに目的は生き残る事で領土の確保は手段でしかないでしょ?」
「確かにそうですね・・・今まで考えた事もなかったです。しかし地上に領土がないと生きて行けません」
「まぁ話し合ってお互いの妥協点を見つけるしかない、それは手伝うからセシリアちゃんも退く所は退かないと交渉にならないよ」
「解りました・・・」
「後は、既に戦闘で犠牲になった日本人がいるので政府の判断によっては交渉にすらならないかもしれないな」
「兵士同士の戦ですからお互いさまじゃありませんか?こちらの方が被害者が多いのですよ」
「現代の価値観では兵士も市民も命の重さは変わらないしどっちが被害が多いとか少ないも関係ないな」
8月11日から21日まで家族旅行となりますので更新は止まります。22日以降に更新は再開します