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北海道大学


宮脇哲太郎は、新年度の初回講義で比較形態機能学の説明を行っていた。


新入生達は、厳しい受験戦争後に勝ち取ったこの席に希望を持ち目は輝いていた。



夏休み過ぎたら出席者は3割減って、居眠りや携帯いじる奴が大半を占めるって事になるのは解っているが、真剣な学生が多い講義は気持ちいいもんだ。



「比較形態機能学と言うのは・・・・複雑多様で神秘的ですらある生命活動も、つきつめるとDNAやタンパク質などの生体高分子の構造と相互作用によって・・・・・」



ゴゴゴッゴゴゴッゴゴゴ ゴゴゴッゴゴゴッゴゴゴ ゴゴゴッゴゴゴッゴゴゴ 


地響きが地の底で大太鼓でも打つ不気味さで、少しずつ少しずつ大きくなり、まっしぐらに接近してくる感覚を、教室の全員が共有した



学生が騒めく、さすが地震大国で20年以上暮らしてきた日本人は、声に出す事はなく、壁や天井を注意深く見て体感で震度を測っているようだ。



しかし、留学生達の反応は、キヤー! ざわざわ・・・オーマイガー!



「静かにー!震度2か3くらいで騒がないでくれ、講義は続けるぞ」



・・・



「えーっとどこまで話したかな・・・」


「生化学はそれらの分子の構造や働きを解明して生命現象を・・(略)・・以上で本日の講義は終了 出口で学生証をかざしてから退出するように」



カシャ!カシャ!カシャ!


講義が終わると一斉に黒板をスマホカメラで撮る生徒達


こんなもん写して何になるかね?


俺の講義は黒板を写すの禁止にしようかな・・・・


「宮脇教授、質問があります」


「急ぎでなければ質問は、配布した資料のアドレスにメールしてくれ次回の講義で調べてから返答する、あと俺は教授じゃなくて准教授な!」


「授業のことではなくて、教授・・・宮脇先生は次はいつ山に入りますか?」


「ああ、今週末は夕張岳の麓あたりで生態調査の予定だ」


「私たちもご一緒してよろしいでしょうか?」


「駄目だ!貴重な学術研究の時間を無駄にしたくない」


面倒くせぇ奴らだな・・・・



「真紀子、積極的だね(笑)」


「うん、だって東大卒の独身で大学教授の優良物件だし、宮脇教授の研究は凄くてノーベル賞も夢じゃないんだよ」


「へー詳しいね」


「私この学校来たのは宮脇教授と出会う為なのよ」


ドン引きする女子達の姿がそこにあった


-----


地下迷宮都市 王宮謁見の間


カバラ皇国は多様な種族で構成されているが、数十万人以上の勢力を持つ種族が、代表種族として族長会議に定期的に集まる。


数千人程度の種族は少数種族して扱われいるが、特に差別も存在せず、必要とあらば族長会議にも召集される事もあるし、族長会議からの公示や通達に関して異議を申し立てる事も可能だ。


カバラ皇国王宮謁見の間には、代表種族の種族長達が集まっていた。


旅立の儀にて全ての族長と長男もしくは重要家臣を失ったばかりであるのでここの集まっている者たちは全て若き族長である


若いと言っても種族により寿命が異なるので15才から200才までばらついているが・・・・


「セシリア陛下、旅立の儀は成功したのでしょうか?」


「成功と思う、迷宮の扉の外は土砂で埋まってます、父アンテロ=リリスからはケデシュ地下1000mに移転すると言われてます」


種族長達の間に安堵の表情が広まる


「ゴーレムを使って、迷宮東側入口から地上への道を掘らせてますがまずは30cm程度の小さな穴を地上まで掘りスプライト族に偵察を任せたいがどうじゃ」


「我らスプライト族にお任せ下さいにゃ。必ずや良い情報を得てまいりますにゃ」


「ライラ=スプライト、初回であるゆえ様子見程度で構わぬ、穴から出て誰にも気が付かれずにその周辺の情報を見てくるだけにして下さい」


「承知いたしましたにゃ。陛下」


「本格的な調査は、ライラ=スプライトの報告を聞いてから皆さんで話し合いましょう」



急に皇帝となってしまったセシリアは君主として威厳のある言葉使いが上手く使えずにいたが、気にするものは誰もいないのであった


-----


人里離れた夕張岳の山麓に、水道も電気も通っていない小さな小屋で、能戸満子は自給自足のような生活を送っている


樺太で終戦を迎え生まれ育った夕張に引揚げた、夫以外の身寄りのいない満子はシベリアに抑留されていた夫の帰りを待っていたが、夫は戻ることがなかった。


戦後夕張では炭鉱夫相手に、小さな食堂を寝る間も惜しんで切り盛りしていたが、炭鉱が閉山となった後は、夕張岳の山麓でゆっくりとした時間を夫の思い出と共に、最後の時が来るのを待つように過ごしていた。


「そろそろアイヌネギが採れる頃かね・・・」


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