勝利の後
地下迷宮の出入口で陣を張っていたアルベルトは、敵の殲滅及びアルトの戦死を含む被害状況の報告を受けていた
そこへリリスら各族長達も戻ってきた
「リリス無事であったか・・・」
「お義兄さま、妾達に犠牲者は出ませんでした。そちらの被害状況はどうですか?」
「それは・・・」
言葉に詰まるアルベルトだが
「すまん、リリス・・・」
被害を察したリリスは戻ってから報告をするように言うと撤収の準備を始めた
「陽が昇る前に撤収しもうこの出入口は封鎖します。撤収後、完全に塞いで下さい」
セシリア達が王宮広場へと戻ると民衆は、一斉に床にひれ伏し頭を床に擦り付けていた
その中から農民風のゴブリンが意を決したように立ち上がりリリス前にひざまずき声をあげた
「陛下、申し訳ございませんでした。我ら民衆が煽り兵士を蜂起させ今日の戦となってしまいました。ここに残っている者は皆、陛下の処罰を受ける為に残っております。どのような処罰でも構いませんのでお願いします」
「頭を上げなさい、我々はこの戦で勝利したのです、多大な犠牲を払いましたが、今後の戦に活かせる多くの情報を得る事が出来ました。済んだ事を悔やむより、今後の事を皆で考えましょう。今は国内で争う時ではありません、皆で力を合わせこの世界で生き延びる道を進むのです」
セシリアは族長達を率い王宮に戻るが、各自疲労の色が濃い為今日は一旦解散し明日の族長会で今後の方針とアルベルトの処分について話し合う事にした
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北海道大学 宮脇研究室
「この子が例の梟かね?」
「コニーです、かなり賢い梟ですよ」
「檻に入れずに放し飼いかい?」
「コニーは好奇心旺盛で賢いので、狭い檻では可哀想なので私の部屋全体を檻に改造して部屋で放し飼いしてます」
「貴重な検体なんじゃから気を付けるのじゃよ」
「宮脇くん、君を疑うつもりはないんじゃが、全部わし自身の手で調べさせてくれ」
「五神教授、解ってますよ。私もまだ信じられないんですから・・・」
五神は自らの手で注射器を使いコニーから採血を行い調査を始めた
・・・・
「宮脇くんが送ってくれたサンプルと同じじゃわい。ミトコンドリアが存在しないが元素も分子も構造も普通じゃの」
「ミトコンドリアの替りにこの赤い細胞内構造物がATP産生をしてます。私はこのような細胞内構造物は知らないのですが、五神教授は何か似たような物をご存じですか?」
「わしも知らんの、この赤い細胞内構造物は東京でも調べたがイオン化電子化の能力が桁外れじゃ」
「細胞はこれくらいにして、CTとかでコニー自身を調べさせて貰うよ」
「はい、構いません。麻酔も普通の梟と同じように効きますので大丈夫ですよ」
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王宮謁見の間でセシリアと族長達の前でアルベルト=リリスは妻でありセシリアの腹違いの姉であるシーリ=リリスを伴い跪いていた
「お義兄さまお姉さま頭を上げて下さい」
「セシリア陛下、この度は私の勝手な行動により多数の兵士を失ってしまい申し訳ございませんでした。私の首ひとつで今回の件は収めて頂き、生還した兵士達には処罰することなくむしろ勇敢に戦った事を称えて頂きたく願いします」
「お義兄さま達は臣民の声に答えて蜂起したに過ぎません。臣民に十分な説明もせず不満を抱かせていた妾にも責任の一端はあります。」
「陛下、その臣民を陰から煽り火を付けたのは、私の指示によるものです。今回の件、その始まりから終わりまで全て私一人の責任であります、もう一度最後の願いを申し上げます。私の首ひとつで今回の件は収めて頂き、生還した兵士達には・・・・」
アルベルトの言葉を遮りセシリアは処罰を命じる
「なりませぬ、お義兄さまにはお姉さまとご一緒に責任を取って貰います。」
「陛下、シーリには何の罪もございません。全てわたしひとり・・・」
「お義兄さま一人では無理だから言っておるのです。」
「し、しかし・・・」
「処罰を命じる!アルベルト=リリスとシーリ=リリスの全ての公職を解きます。二人には、今回戦死した者の全ての家庭を周り、残された家族に今ここで話した事をそのまま伝え頭を下げなさい。また戦で四肢を失うような怪我をした者の家庭にも赴き今後自立した生活を送る為の仕事を与えなさい」
「そして残された家族の声を全て受け止めたあとには、その声をカバラ皇国の統治に取り入れる為にここへ戻り臣民を導いて下さい」
「以上です」
武人としてのプライドの高いアルベルトには死よりも辛く慈悲深いシーリであれば言われなく行う処罰であった。
肩を落とし小刻みに震えるアルベルトを抱えるようにシーリが手を添えセシリアに深く深く一礼し謁見の間を退出していった




