スタングレネード
周囲を警戒しながら銃声の方向へ向かっていた。古田と吉村は運良く今野と遠藤に合流する事が出来た頃、また別な方向で銃声が鳴り響いた。
「隊長、違う所で戦闘があったようですね」
「まぁどちらもここから西側には違いない、急いで西へ向かおう」
途中の尾根から森を見渡すと僅かだが森全体が揺れておりその揺れは明らかにこちらに向かっている
「何者かは解らんが数が多い、森で遭遇しては危険だ。木に登りやり過ごすぞ」
-----
「アルト殿、敵は我らに気づき木の上に潜んでいます」
「それでは騎馬突撃は止めて、敵の策に乗ってウマー」
「どういうことウォ」
「我々が気が付かず行進するフリをして木を囲んだ頃合いで魔法攻撃で落とし袋叩きにしてウマー」
アルト=ケンタウロスを先頭に行軍を進め敵が潜む大木を何事もなかったように通り過ぎ大木の周囲を囲みリリス族のファイヤーボールを合図を待つだけだったが・・・
木の上からスタングレネードが四方に投げられる
木の上から何か降ってくると突然、けたたましい爆発音と眩い閃光に部隊は包まれ、目が眩み激しい耳鳴りが襲った
攻撃合図の準備をしていたリリス族が果敢に大木にファイヤーボールを放つが逆にその攻撃を合図に敵の攻撃が開始された
誰もが何が起こっているのか解らず自分の居場所も敵の方向も解らずただ一方的に魔法を連射され怒号と悲鳴が響くなか300もの兵がほんの10分で死体の山と化した
一瞬の静寂のあと、後方で閃光を逃れた部隊がすぐさま行動を起こした
ケンタウロス族の背にリリス族ラミア族ドワーフ族が跨り、ライカンスロープはその横を並走し一直線に敵に向かっていった
魔法に撃たれながらも投石、矢、斧、ファイヤーボールなど繰り出すが敵の魔法は止む事無く次々と倒されていく
そんな中・・・死体の下で視界を回復した片腕のミノタウロスが敵の後ろから斧を振り下ろし敵を真っ二つにするが同時にミノタウロスも魔法を至近距離で撃たれ肉片と化した
その隙を付き騎乗の主を失ったケンタウロスの矢が敵の眉間を撃ち抜き敵がまた一人倒れると、魔法の量が減り雪崩のように襲い掛かる
-----
500人以上の化け物の軍勢を木上でやり過ごそうと考えた古田であったが敵に気が付かれている事を察知し他の3人に仕草で合図しスタングレネードを放った。
爆発音と眩い閃光で混乱する化け物を短機関銃の水平射撃で一掃したがスタングレネード範囲外の敵の突撃を受けた
4人は矢や炎が飛び交い皮膚は爛れ矢は何本も刺さりながらも短機関銃の弾幕で化け物が近寄る事を防いでいたが、後ろの死体の山から角の生えた化け物が立ち上がり襲い掛かってきた
不意を突かれた遠藤が斧で殺られ、その化け物に短機関銃を連射した今野はその隙に弓矢で眉間を撃ち抜かれた
残った二人の短機関銃だけでは火力不足で予備のマガジンも無くなった
弾薬を節約しながら撃っているが化け物は目の前に殺到してきた
「もう駄目だな!吉村いいか?」
「はい、隊長お世話になりました」
古田と吉村は安全装置を解除した手榴弾を両手に握り目を閉じた。
二人は迫りくる化け物達を道連れに手榴弾で爆死した。
-----
ドドドドオオオオオン!ドドドドオオオオオン!ドドドドオオオオオン!ドドドドオオオオオン!
石井と加地は爆発音が鳴り響くと足を止め周囲を警戒する
「スタングレネードの後に手榴弾か・・・・」
「集団を相手にしているようですね」
「まだ10キロ以上先だ、とりあえず急ごう」
爆発音を聞きその方向に向かって斜面を疾走していると、ありえない突風で石井と加地は宙を舞い転げ落ちると目の前には全身鱗に覆われた化け物が剣を振り降ろして来た。
とっさに加地が化け物に銃剣を突き刺すが、その刃は鱗に阻まれ加地の体は肩口から真っ二つに斬れた
バランス崩して落下した石井は頭を打ちうずくまっているが、起き上がる前に首をはねられ何が起きたかも解らぬまま屍となった
不意を突かれた石井と加地は戦う事も無く、一方的に殺戮されてしまった
その惨劇の傍らでセシリア達も爆発音のあった、向こうの戦闘の心配をしていた。
「陛下、終わりましたな」
森の中では火や雷の魔法攻撃が難しい為、エルフの風魔法で転倒させドラコニュートの剣術でとどめを刺す事で敵に魔法の使用をさせる事無く倒すことが出来た
「しかしお義兄さまの方は、爆発もあったようですし犠牲者が少なければいいのですが・・・」




