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七色の矢

夏休みで旅行へ行っていたので、更新が遅れて申し訳ございませんでした。



平壌市中心部の自宅と地下で繋がっている執務室で、一人の男がイライラしながら何かを待っていた。


コンコンと扉が叩かれ、女性の声で

「戦略ロケット軍 文大将がお見えいたしました。」


「とおせ」

「かしこまりました。」


静かに扉が開かれると、バリとした軍服を着た老人が一礼していた。


「将軍様、準備が整いました。」


「待っておったぞ。日本の状況は掴んでおるか」


「はい偉大なる将軍様、現在東京は電子機器が破壊され沈黙、自衛隊の市ヶ谷も被害にあい命令系統を失ったままであり、自衛隊は混乱しております」


「クックックッ、我が国の力を世界に示すには絶好のチャンスだ、兄者監禁の大義名分もある。ゴミどもを燃やしてやれ!」


「弾頭はどういたしますか?」


「核に決まっておる。」


「失礼ですが・・・米軍からの反撃の心配はないでしょうか?」


「核を持った我が国に、攻め入ってくる度胸などないわ、心配無用だ」


「かしこました。これからミサイルを発射します。そちらの映像で見守り下さい。」


老人が執務室を出て間もなく、大型ディスプレイに移されているミサイル発射基地には、慌ただしく動く兵士達の姿が映っていた。


「やっと、我が軍が長い年月を掛けて開発してきた成果が、この目で見られる。」


小太りの男は、満足そうな表情を浮かべ、葉巻に火を付けた。



-----



矢部総理とセシリアは、アメリカ大統領から原子炉に問題が発生しているロナルド・レーガンの対応を依頼され、ヘリで横田基地に到着していた。


米軍・自衛隊双方と連絡が取れる「共同統合運用調整所」(BJOCC)で説明を受けている時、


バーン! とドアが開き


「総理! 大変です!」


同時にJ-ALERTの有事サイレンが鳴り響いた。


ブー・ブー・ブー・ブー・ブー・ブー・ブー


「何事だ!」


「北朝鮮がミサイルを発射しました。予想攻撃目標は東京、6分後に東京上空に飛来します。弾頭は不明」


「迎撃態勢はどうなっている!」


「習志野と朝霞でPAC3の準備を始めると思いますが、間に合う保証はありません!」


横田基地は、それぞれが怒鳴り合うように大声で話し始め、それが逆に誰が何を言っているのか収集が付かない状況になっていた。


まったく様子が解っていないセシリアが、隣で立ち尽くす園田に


「どうしたと言うのですか?」


「簡潔に言えば、他国からのミサイルが6分後に東京上空で爆発し最悪の場合100万人以上の人間が蒸発してしまいます。但しあくまでも可能性でしかありません。」


即座に園田が説明し続けてセシリアにお願いした。


「時間的に我々には為す術がありません、魔法で何とかなりませんか?」



・・・セシリアが考え込む間にも時間は刻々と進んでいた。


「陛下! 私達が何とかするにゃ~」


「しかし、それでは貴方達が・・・」


すると園田が、床に膝を付き自尊心をかなぐり捨てて懇願する。


「時間が無い! 何でもいい! 何か手があるならやって下さい。例え1%の可能性でも・・・お願いします」


「その1%の可能性に、この子達の命を犠牲にしても価値のある物ですか?」


妖精達の命の犠牲と聞いて、園田は一瞬言葉に詰まるが


「・・・あります。最悪の場合多くの市民と共に、ここにいる私達も蒸発してしまいます。」


「陛下、それならやるしかないにゃ~」


セシリアが黙って頷くと、ライラ、アイラ、ヒリヤ、イーリスは窓から勢いよく外へ出て、手を繋いで空中に浮遊した。


「何をすると言うのだ」


「お互いの魔力を共振させる事で、オーバーロードした魔力を体から放出させながら、矢となりミサイルへ体当たりします・・・」


「体当たりか・・・」


「これは自衛隊のミサイル攻撃への対抗手段として、検討していただけで実際にはやった事はありません。」


「それでも構わない。お願いします」

園田の額は地面から離れる事はなかった。



4人のスプライト族は、赤橙黄緑青藍紫と虹のような粒子まとい回転し始めた。


「陛下、行ってくるにゃ~」


「「「「残ったみんなを頼んだにゃ~」」」」


七色の矢が信じられないスピードで上空へと飛んで行った。


上空へと真っ直ぐ伸びる七色の矢は、J-ALERTの有事サイレンに怯え外へ出ていた多くの都民の目に映っていた。


母親に抱かれた赤子が、その光に一生懸命手を伸ばし触ろうとし


縁側でお茶を飲んでいた老夫婦は、目を細めて空を見上げ


スマホで何か検索していた女子高生は、その手を止め口をあんぐりと開けて、光の向かう方向を見つめていた。



事情は解っていなくても、誰の目にも希望の光に見えていたのである。




4人のスプライト族は、ミサイルを目指しグングンと高度を上げて行った。


ミサイルが視界に入って来た。もう直ぐ自分達は死んでしまうのだが、何故か恐怖は感じない? 多くの人の願いや希望を背中に感じて、むしろ暖かい心地よさを感じていた。


「日本の皆さん、さよならにゃ~」



大きな爆発音の後、東京の空は7色の粒子に満ちた。


それは、オーロラとも電飾のイルミネーションとも違う。人類が見た事も無い美しい光であった。




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