表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/122

扇動

S部隊が夕張岳周辺に潜伏してから20日を過ぎようとしていた


この世界に転移して以来一日一食の貧しい生活を強いられながらも、調査団が持ち帰る地上の情報をあちこちで話し夢を語り合う事が唯一の娯楽であった


だが最近は森に人間が入っていると言う事で地上調査が中断され地下迷宮都市の住民たちの不安と不満が高まっている


今まで集まって夢を語り合っていた場が生活の不満やカバラ皇国の政治への愚痴の場に変わっていた


「毎日フフ一枚じゃ足りねーよな」

「陛下は転移前と同じ生活しているから、庶民の苦しさを解ってねーし」


「兵士達は、地上のゴーレムに恐れをなしているんだよ」

「いつになったら地上に出られるんだよ!」


「アルベルト=リリス殿下は戦いを支持しているらしいぞ」


あちこちの集まりで同じ事を繰り返して言っている扇動者の姿があった


本来カバラ皇国では、リリス族による小鳥や小動物などの目や耳で庶民の動向を把握し多様な種族を統治して来たのだが

現状はリリス族テイマー総出で地上の監視をしている為、今の民衆の動きは察知出来ていない


異世界への転移、薄暗い地下迷宮都市の雰囲気と相まって民衆の心の暗い闇を利用し扇動者は反体制へと世論を誘導していた



-----


国道274号線 パーキングエリア


30日間のサバイバル訓練を終えるS部隊を迎えに陸上自衛隊の兵員輸送車が停車していた。

陽が落ちると森の茂みから出て来た兵士が一人また一人と輸送車に乗り込んでくる。


「全員揃ったな」

「報告は習志野戻ってからだ、無駄口は叩くなよ」

「隊長、明日から休み貰えるんですか?」

「報告が終わったら全員一週間休みだ」



翌朝、習志野駐屯地へ戻った荒谷は司令部に入り直ぐさま3日後に夕張岳で10名のサバイバル訓練の命令を出した


今回サバイバル訓練参加の五名と書記官がブリーフィングルームに集まり報告が始まった。

この報告に関しては事前にビデオ撮影されている事が通知されているが、気にする者はいない


各自報告事項に関しては、特に無いのだが全員森にいる間なんらかの気配と視線を常に感じたと言う共通事項があった。


荒谷自身妖精の件を報告していないが、今回特に成果はなかった

次回10名でのサバイバル訓練で何もなければ任務としては終了となるだろう


(やはり妖精は幻想か何かだったのか・・・)



-----


宮脇は大きめの鳥籠に梟を入れていたが、窮屈そうなので研究室を改造し部屋で放し飼いする事にした。

改造と言っても窓に金網を付け出入口を引き戸と金網戸の二重化し室内に何か所か止り木を設けてやる

自身のDIYで研究室の改造を終え梟を籠から出すと梟は宮脇の腕に乗る


「お前に名前付けないとな! 何がいいかな?」

「キューーーーー」


不思議と宮脇の脳裏に「コニー」と言う単語が浮かぶ

「コニーでいいか?」

「キューキュー」とコニーは二度三度頷く


「東京から先生が来て検査とか始まるから、今のうちゆっくり休んでろ」

「キューキュー」



-----


小さな水晶を使いコニーの視覚を映して満子とセシリアを様子を見ていた


「セシリアちゃんはテレパシー使えるんかい?」

「テレパシー?」


「セシリアちゃんが念を送ったら、宮脇くんがコニーにコニーって名前付けたじゃろ」


「そうですね、コニーは特別で生まれた時から育てているので、コニーを通してだけ薄っすらと相手に伝わる事はありますが確実じゃないですよ」


「そうかえ、コニーは何才なんじゃ?」

「50才くらいですよ」


「え?じゃセシリアちゃんはいくつなんじゃ?」

「93才ですよ」


「わっわしと同じ年じゃわ~あわわわわわ」


コンコン


「陛下よろしいでしょうか?」

「どうぞ、何かありましたか?」


「また人間が空から森に入ってきました」

「そうですか、各族長を地上監視室へ呼んで下さい。私もすぐ行くわ」


人間の兵士が近いうちに森に入ってくる可能性は高いと読んでいたセシリアは十分な準備をしていた、遠くまで調査に行っているのは、畑調査のゴブリン族と山岳調査のラミア族、麓に


湖を調査するウンディーネ族だけであった


その他種族は出入口周辺での調査や演習であった。各種族にはオオワシが急降下して来たら兵士が山へ入った合図として伝えており直ぐに地下迷宮都市へ戻るように指示が出ていた。

例外はウンディーネ族で水に溶け込み見つかる心配はないのでそのまま湖での活動を許可した



地下迷宮では早々と地上から戻って来た調査団を見て、民衆があちこち集まりヒソヒソ話をしていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ