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塹壕戦


地下迷宮都市第一層へと侵入してきた無人兵器に対し、カバラ皇国軍は塹壕を掘り対抗していた。


ドドドドドドドドドドット、ドドドドドドドドドドット


SWORDSの機銃掃射が、空間に穴をあけながら塹壕の上を通り過ぎる。


ドドドドドドドドドドット、ドドドドドドドドドドット


塹壕の中は、負傷者の血と全員の汗の臭いが混じり、奇妙な臭気を醸し出しているが、誰一人としてそれが気にならない。


ドドドドドドドドドドット、ドドドドドドドドドドット


銃声が響き、弾丸は金属音を伴って乱れ飛ぶが塹壕の中では、子守唄のように感じ、その心地よさと疲労からもの睡魔に襲われている者までいる。


ドドドドドドドドドドット、ドドドドドドドドドドット


「まだ来ねーのか?」

屈強なドラコニュート兵が、目を閉じながら聞くと、兜を被ったゴブリンが塹壕から少し顔を出して周囲を確認する。


「まだ、300メートル以上アル。」

「100メートル切ったら起こしてくれりゅ・・・あいつら足遅せーからな」


「よくここで眠れるアルな」


・・・銃声は至近距離で、止まることなく鳴り響いている。


「起きるアルよ」

「ん、んん・・・来たかっ!」


「一台だけだから、俺達が盾持って引き付ける、その隙に頼むアル」

「解った。お前らは、当たるなりゅ」


10メートル先の塹壕の中からアンダマイトの盾に隠れながら、ゴブリン達が奇声を挙げて塹壕を飛び出すとSWORDSが激しい機銃掃射を浴びせる。


屈強なドラコニュートは、その隙に剣を振りかざしながらSWORDSへ突撃し剣を振り下ろした。


SWORDSもとっさにドラコニュートに銃口を向け発砲するが、真っ二つに斬られて動きを止めた、ただ数発銃弾を受けたドラコニュートも、その場に倒れ込んだ。


ゴブリン達は、倒れ込んだドラコニュートの尻尾を掴んで塹壕まで引きずっていった。


「う、うう、痛てー、痛てー、痛てー、痛てーりゅ。」

「固い鱗で防いでいるアルよ。そんなに痛いアルか?」


「貫通しなくても、ミノタウロスにハンマーで殴られているくらい、痛てんだりゅ!」


「まぁ俺達ゴブリンなら、弾が当たればミンチになるんだから贅沢言うなアル」


塹壕の中では、既にリリス族が待っていて、直ぐに治癒魔法を施していた。


「撃たれて、治療されて、戦って、撃たれて、治療されて、戦って・・・・・・拷問と同じりゅ・・・」

と、治療するリリス族に毒突くと


「じゃ、治癒魔法止めますか?」

「止めないでりゅ・・・ごめんなさいりゅ」

と、涙目になっていた。


「上から来るアル!」

天井から爆弾を抱えたドローンが急降下してきた。


「危ない! 伏せるアル!」


ドカーン!


数十メートル後方のエルフ弓隊が、ドローンを撃墜した。

「ふぅ・・・助かったアルな」



網目状に張り巡らせた塹壕を使い、SWORDSやビックフットに至近距離まで近づき一機一機潰しているが、上空から突っ込んでくる爆弾を抱えたドローンで全滅する部隊も出ている。


族長達は、そんな最前線から1キロほど離れた地点から戦況を眺め指示をだしている。その時、一機のドローンが塹壕内で待ち伏せしていた部隊を直撃し爆発した。


「エルフの弓矢部隊は、何をしてるんだりゅ・・・撃ち漏らしがあるぞ・・・」


「すまん。ボレリウス、数も多く、天井をかすめて落下してくる物、地を這い突っ込んでくる物、上空から弓兵を狙ってくる物とあり、我々も全力でやっているのだが・・・本当にすまん。」


「ヨエル、こんな時に愚痴を言ってしまいすまんりゅ・・・気にしないでくれりゅ、皆全力で戦っているのは解っているが・・・」


日本の報道により、セシリアが東京を攻撃し文明の無力化に成功した事は聞いていたが、敵の攻撃は激しさを増している。


塹壕戦で必死の抵抗はしているが、戦士達の消耗は止まる事はなく続いていた。


「陛下の攻撃で日本の態度は変わることはなかったのか・・・」


「それよりもセシリア陛下が心配だりゅ・・・捕まって拷問でもされているんじゃ・・・」


「先々代の皇帝陛下は、人間に捕まって、手足の腱を切られ、魔法封じで舌を抜かれ、50年間城の地下に閉じ込められていたからな・・・」


「人間は野蛮で残虐だりゅ、それなのにセシリア陛下は人間に甘すぎりゅ。話し合いで解決など無理な話だ・・・」


「元の世界の人間と日本人は違うぞ。」


「そうだな、元の世界で3万の兵が一晩で殲滅される事はなかったりゅ」

「そ、それは・・・」


「今回の陛下の攻撃も、事前には教えて貰えなかったが、人間の機械を止めただけだりゅ、そんな中途半端な攻撃じゃ成功しても人間の態度は変わらんりゅ」


「陛下にはお考えがあってだな・・・ん?」

「・・・ん? 敵が後退していりゅ。」

「ん? ん? ・・・んん?」


「しかし、攻撃は止まってないぞ、何かの罠か・・・」

「罠かもしれんが、前進させりゅ。」

「解った。」


ヨエル=エルフは高台に立ち大きく息を吸い胸を張ると

「この機を逃すな! 塹壕を這って前進するんだ。失った陣を取り戻せー!」

と、大声で指示を出した。


すると、塹壕内で待ち伏せしていた前線が、注意深く周囲を確認しながら、少しずつ前に進んでいった。



セシリアの義兄であり、この戦いの発端を開いたアルベルト=リリスが何やら深刻な顔で近づいてきた。


「アルベルト何かあったか?」

「はい、マコマナイ上空を覆っていた。黒鳥の群れが一掃されてしまい、新たな兵が続々とヘリから降りております。」

「増援か・・・陛下の攻撃が逆に怒りを買ったのか・・・一旦引いてから、大軍で一気に攻勢にでるのかも知れんな」


ヨエルの表情が曇る。


「・・・ますますセシリア陛下が心配だりゅ。」

「見せしめに火刑にされるんじゃ・・・アルベルト念話は届いてないのか?」


「かなり遠いので、念話は一切通じないんだ。コニーも何も反応しない」


「陛下に万が一のことがあれば、カバラ皇国全臣民で・・・」

ヨエルがボレリウスの言葉を書き消すようにかぶせた。

「陛下は、もし自分に何かあっても行動は起こしてはいけないと、おっしゃった。ボレリウス! お前も聞いていただろ!」


「・・・しかし、臣民が黙っていないりゅ!」

「陛下の行動でたくさんの臣民の命が失われて、一番心を痛めるのは陛下自身だと、解らないのか!」


「・・・解っておるりゅ」



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