切り札
ホワイトハウス周辺でデモが発生した事で、矢部総理はポーカー大統領へ電話を繋いだ。
「大統領、大規模なデモが発生しておりますが、共同作戦の継続は大丈夫でしょうか?」
「矢部総理、心配するな一度のデモ程度で、作戦を中止するような愚かな行為はしないと約束しよう」
「ありがとう。大統領」
「産業界からは無人兵器の実用試験に関して感謝すらされておる・・・但し、これ以上の米兵の犠牲は許されん! 周囲の警備を厳重に頼む!」
「分かりました。それはお約束させて頂きます。」
「それと、洞窟を突破した後、最初の一歩は米兵ではなく、自衛官がその役割を担って頂けるか?」
「・・・」矢部は即答する事が出来なく、言葉に詰まった。
「矢部総理、約束出来ないのか?」
「・・・いえ、お約束致します。我が国の問題は、自衛官が中心になって解決する姿勢をお見せします。」
「頼んだぞ!」
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セシリアが執務室で、満子のペットである黒白猫のベルの毛並みを楽しんでいると、ボレリウス=ドラコニュートが入室してきた。
「陛下、戦況のご報告いたしまりゅ。」
「続けて下さい。」
「真駒内駐屯地の襲撃作戦は、失敗致しました。申し訳ございませんりゅ。ただ三方面から同時に攻撃した事で、下水溝から真駒内駐屯地への侵入は成功し自衛隊へも甚大な被害を出しましたりゅ。」
ニャーオ
ボレリウスの言葉に、セシリアの膝上に寝ているベルは何故か得意気な顔で泣いた。
「地下の方はどうですか?」
「自衛隊の小型ゴーレムは一台一台は対処出来てますが、とにかく数が多く我々は被害を出しながらじりじりと後退しておりますりゅ。洞窟を突破され第一層へ侵入されるのも時間の問題ですりゅ。」
「どれくらい持ちますか?」
「明日いっぱい、持ちこたえるのがやっとですりゅ。」
「・・・そうですか・・・それでは・・・妾が東京へ行って争いを止めて来ます。それまで何とか持たせて下さい」
「陛下が単身で東京へ行くなど危険過ぎます! どうか考え直して下さいりゅ」
「自衛隊の侵攻を止める手段があるのですか?」
「それは・・・」ボレリウスは言葉に詰まる。
「これまでたくさんの犠牲を出して来ました。それでも何も進んでおりません。もう妾が直接行くしか打開策はありません」
「しかし、どうやって争いを止めるのですか?」
「最終手段を使います。それは、 」
「陛下・・・私には理解出来ませんが、こちらはボレリウスにお任せ下さいりゅ」
ボレリウスはセシリアの話した意味は理解出来なかったが、その決意に掛けた。
「ありがとうボレリウス」
セシリアは満子の部屋へと向かった。
満子の部屋では、宮脇と満子がちゃぶ台の前に座りお茶を飲んでいた。
セリリアは部屋に入るなり直ぐに
「宮脇様、妾を東京へ連れて行って下さい!」
「とっとと突然どうしたんだ?」
唐突な急なセシリアの言葉に宮脇はお茶をこぼす
「戦況が思わしくございません。このままでは地下迷宮都市が占領されてしまうのは時間の問題なのです。妾が直接東京へ行き交渉するしかありません」
「そうか・・・東京まで連れて行くのはなんとかするけど、それから先が問題じゃないのか?」
「既に協力して頂けるあては付いておりますし切り札もあります。どうか妾を首都東京まで連れて行って下さい。」
セシリアは深々と頭を下げた。
「切り札って何なんだ?」
宮脇がセシリアを凝視し問う。
「それは宮脇様へも言えませんが、妾を信じて下さい・・・」
「・・・」宮脇は少し嫌な感覚を感じた。
コンコン! コンコン!
「失礼します。田中様をお連れ致しました。」
そこえ従者に連れられて、外務省の田中が入ってきた。
「田中さん・・・切り札と言うのは田中さんなのか?」
「はぁ?」宮脇の言葉に状況が解らない田中はキョトンとしていた。
「宮脇様、それは違いますが田中様が東京での交渉について話をつけてくれました。」
「総理との直接会談の場を作ってくれたのか?」
「宮脇さん、私も何度も頑張ったのですがそれは叶いませんでした。その代わりに、在京テレビ局の生放送を使う段取りを用意しました。」
「そんなの札幌テレビ局と同じじゃないのか?」
「いいえ、東京で行う事で総理が直接セシリア陛下に会う事になる・・・その為の切り札をセシリア陛下がご用意するとの事です」
「しかし・・・東京ならセシリアは拘束されてしまうのでは?」
「私は同行出来ませんが、東京の協力者がその辺も十分に考慮してくれてます。」
外務省の田中の言葉には自信がみなぎっていた。
話しを聞いていた満子が
「わしも東京に行くのじゃ」
「満子さん!」
「止めても駄目じゃぞ、きっと役に立つから連れて行っておくれ、宮脇くんもさっさと用意しなさい」
「解ったよ。小樽から始発電車に乗って函館に向かいましょう」
「ありがとう宮脇様、ボレリウス!明日いっぱい持ちこたえてください。明日中になんとか戦闘を止めます」
「陛下、承知いたしましたお任せ下さりゅ。陛下もご無事でお願いいたしますりゅ」
外務省の田中にも宮脇にも知らされていない『切り札』を頼りに東京へ向かう事になった。
次話投稿は、ゴールデンウイーク明けになりますので、少々時間が空きます




