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少年哲学  作者: 東雲 流水
第一期:十六迄の独白・皮肉哲学
9/19

9.

**********


 産み落とした「弱音」は、いつも僕の手足にくっついています。

 弱音は知らない間に、僕の気管を通って口から吐き出されます。それをゴミ箱や下水道に捨てられたらいいのですが、僕は何故でしょう、捨てようにも捨てられなかったのです。

 ずるずると引きずる貧乏性、それはある意味では弱音を捨てられないという負荷をいつも背負っている状態です。

 吐いた弱音はやがて、腕に巻きつき脚に絡みつき、今では首を絞めかけています。締め付けるたびに僕は、自分の手を首にやり、弱音を引き剥がすのです。

 しかし弱音はがっちりと肉を挟んでいます。

 引き剥がすには相当の力と、痛みがあります。それを我慢して弱音を引き剥がすのは、正直なところ仕事として全く割に合いません。

 じゃあ弱音を吐くな、と言いたくなるでしょう。僕もそう言いたいです。しかし、僕も前までは弱音が出そうになると手で口を覆っていました。しかし、彼らは口から出られないと知ったら、今度は身体中を駆け巡るのです。

 外で爆発できなければ、内部で爆発してやろう、というように、弱音は明確な悪意を持っています。いえ、元は僕自身の弱音なので、その悪意は元を辿れば僕のものなのでしょう。

 四肢に行き渡ってしまった弱音は、段々と黒ずんできます。

 そうなればもう、切り捨てるしかないのでしょうか。

 僕は弱音を簡単に捨てられる人ではないのです。捨てれず、四肢に巻きつけたり、体内で飼っていたり、寄生というのでしょうか、自分の弱音が自分を動かしているようです。

 弱音はどこにいてもついてきます。

 騒がしいわけではなく、ただ重いのです。

 今もくっついているこの弱音たちは、一人一人、確実に潰していくしかないのです。


**********

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