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少年哲学  作者: 東雲 流水
第二期:十六からの自己分析哲学
18/19

18.

原点回帰。

**********


 原点は二つあったが、周りには一つとしか言わなかった。もう片方は自分の中に、心の中に仕舞い込んで、その信条に苦しんでいた。

 十の時から執筆を始めた。当時の作風など覚えてもいないし思い出したくもないが、内容だけを見れば受けはよかった。当時はまだ暗い要素など微塵もなかった。

 原点の一つはこの時点で既に決まっていた。原点であり、今の目標の一つでもある。


『この世にない創作を』


 それは当時まだとても多いとは言えなかった読書量が引き起こしたものである。当時の時点での読書量は少なく見積もっても四十冊ほど。そんな狭い世界の中で生まれた「それ」は大層傲慢な考えである。しかしこの考えは未だに変える気がない。そうなることが俺の中での『プロ』の創作者であり、憧れであるからだ。

 十二まで、つまり小学校の間は半分の自己満足と半分の目標で活動していた。中々小さな人間ではあるが、それが子どもならではの強みだったのだろう。


 中学では文芸部に所属した。三年間という短い間ではあったもののそれなりに長く感じたのは、文芸部のお陰だと思う。廃部の危機に晒されたり馬鹿にされたりとあったが、それなりに充実していた。

 俺の作風が変わったのは、十三の秋頃だと思う。その頃に哲学に興味を持ち、ニーチェを知り、彼の著書を読んだ。それが分岐点だった。

 未だに彼の『ツァラトゥストラ』は半分の理解できない。しかし、それだけで十分だった。彼の声を聞くのに、半分の理解も必要なかった。


『創作で世界を変えよう』


 革命、戦争、クーデター、反政府。そんな言葉を思い浮かべたが、俺が求めたのはどちらかと言えば無血革命だった。世界を変えよう、そう言って異端者を演じたかったのか、と言われるかと思ったため、誰にも言わなかった。言いたくなかった。

 だが、十三の子に世界を変えるなど到底不可能である。当時の自分もそれをよく分かっていた。だからこそ、まずはゆっくりと思想を固めていこうとした。どれが攻撃的でどれが平和的で、というように。当時の俺は歳の割には冷静に判断していたと思う。

 結局十三の秋から十四の始め頃まで、それは続いた。その間に作風の地盤は形成されていった。

 十四の初夏頃、運動部に原稿用紙を破られゴミ箱に入れられるということがあった。前々から厨二だの格好つけだの言われていたが、実害があったのはそれが初めてだった。

 驚きはしなかったが、悔しかった。

 幸い要らない原稿だったから良かったものの、提出の近いものだったらと思うと厭になる。その辺りから事の主犯と思われる者と取り巻き数人が会うたび会うたび煽り文句を言うようになってきた。たかがそんな程度で、とも思われるかもしれないが、その頃から書物を蔑ろにする人間に対して、いざという時のために言葉のナイフを準備するようになった。

 読書をしない、という風潮に最も害を受けるのは文芸部であった。無関心ならともかく、『読書や執筆』が嘲笑の的であったのは許せなかった。唯一の誇りが踏み躙られるのだけは許せなかった。


『読みもしない紙屑』

『唯一荒らすことが愉快』


 そうやって馬鹿にしてくる人間は十五の終わり、つまり卒業までいた。約一年半と考えるとまだ短い期間で済んだと思えるが、しかしその一年半は俺が人間を嫌う理由には十分だった。無論、それだけではないが、約三割程度はこれが原因だったと思う。

 まだ子どもだったため、馬鹿にする言葉などいくらでも言って楽しむのだろう。陰で内緒話をして楽しんだり、虐めすら横行し始める年齢だ。愉悦に浸りたい気持ちは誰でも同じなのだろう。


 未だに彼らを、悪意はあれど子どもであった彼らを根に持つ俺は心が狭いのだろうか。

 彼らに一端の責任を転嫁している俺は、出来ていない人間なのだろうか。


**********

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