第三話「夢とフクロウ」
あれ・・・?さっきまで俺は何してたんだっけ?
辺りを見渡すと、そこは暗い部屋で前がよく見えなかった。
俺は部屋の冷たい床に座り込んでいた。自分を足を動かすじゃらじゃらと音がした。見ると片足に枷がついていた。
そうか・・・逃げたのに捕まったのか。またあの生活に逆戻りか・・・。
大人が俺にあれをしろこれをしろと命令する。時には理不尽に殴られ蹴られる・・・そんな生活。
「あぁ、捕まるならあそこで死ねばよかったな。」
あそこってどこだ?
ふと、考えたが思い出せずどうでもよくなった。
「君は本当に死にたいのかい?」
突然どこからか男の声が聞こえた。
誰だ・・・・?どっかで聞いたような声・・・。
しかもどこかで聞いたことがあるような質問を俺はまたされた。
「あんたに関係ないだろう?てかあんた誰?」
そう言った時だ!目の前に猫の仮面を付けた男が現れた。
「あれー?私をもう忘れたのかいナギ?」
俺に顔を近づけて、聞き覚えのある名前をネコの男は最後に言った。
ナ・・・ギ・・・・?
その名前を聞いた時、俺の記憶が蘇ってきた!
「あっ・・・・!?おまえは!!」
ネコの男は嬉しそうに笑うと、急に周りが光に包まれた。
うっ目が・・・眩しい・・・!
「さぁ、そろそろ起きる時間だよナギ。」
目を覚めると俺はベットの上に寝ていた。
「ここは・・・・?」
さっき見ていたのか夢だったのか?
ベットから起き上がると周りを見ると見知らぬ部屋だった。広めな空間に綺麗な装飾がついたランプが天井に付き、小綺麗な机に椅子がベットの横にあった。どこかの宿のようだ。
ベットから出て、窓を見ると見慣れた景色と雪が降り続いていた。
どうやら、まだ町にはいるようだ。
しかし、何で俺こんなところにいるんだ?確かネコの男と通りにいたはずなのに?
すると、俺の腹がグゥーとなった。
そうだあの時、確かあいつを殴ろうとしたんだ。でも、腹が減りすぎてまた倒れたんだ。
「クソ・・・あいつを殴り損ねた。しかし、腹減ったな。」
腹を抑えながら俺は食べ物がないか部屋をうろついていたその時。
「起きたか子供。」
誰かの声が耳に入ってきた。俺は声のする方を見たが誰もいなかった。
誰が話しかけてきているんだ?
「私はここだ子供。」
見ると声が聞こえてきたのは、椅子にかけられたフクロウの柄の形した杖だった。
これあいつ(ロジカ)が手に持ってたような・・・。何で杖から声がするんだ?
すると、杖が突然全体が真っ黒に染まり、形が変わっていった。
何だ・・・!?
そこにいたのは真っ黒なフクロウだった。瞳はまるで星空のような輝きを放っていた。
「杖がフクロウに・・・!?」
しかもしゃっべってる・・・・これもあいつの力なのか?
「子供お前が目覚めたら、食事を与えるように伯爵様から命じられている。」
あいつが俺のために食事を?
「暫しここで待って、宿の者に食事を準備させよう。」
フクロウがドアに近づいた時だ。
「おい待て!あいつはどこだ?」
俺はフクロウを止め、今もっとも聞きたかったことを聞いた。
「あいつとは伯爵様のことか子供・・・?」
フクロウは少し不機嫌そうな顔をしながら俺に質問した。どうやらあいつと呼ばれることが嫌なようだった。
「そうだ、その伯爵様のことだ!あいつはどこにいる!!」
まだ遠くには行ってないはずだ。
あいつの場所さえ分れば、あのネコ野郎の腹を今度こそ一発殴ってやる!じゃないとこの怒りが収まらない!!
「伯爵様は今こちら側の世界にはいない。」
フクロウの答えに俺は理解が出来ず困った。
「こちら側の世界にいない?どういう意味だそれ??」
こちらの世界って何だ?このフクロウ何を言ってるんだ?
「子供よ、お前に言ったところで理解はできないだろう・・・。」
フクロウは俺を蔑むように言った。
このフクロウもあいつ一緒でムカつくな・・・。
「伯爵様はこちらの世界とは違う影の世界にいらっしゃる。」
影の世界・・・?何だそれ?
フクロウには俺の思ったことがわかったかのように言った。
「哀れな人間、お前には一生無縁の世界だ。」