第二話「ナギとロジカ」
「怪物」・・・それはこの世界に存在する筈がない異形の者。
人が作りだした創造上の生き物だと当時の私は思っていた。
彼に会うまでは・・・・。
雪が降り続く通りで、俺はネコの男の言葉に理解が出来ずにその場で固まっていた。
「怪物・・・・?そんな者いるはずない!デタラメ言うな!!」
俺はネコの男の言葉を強く否定した。
この世の中にそんな怪物なんているはずない!でも、さっきのことはどうなる?俺は死にかけてたのにあいつのせいで生きている。
こいつが本当に怪物だからできたのか?
「デタラメ何かじゃないよ?まぁ信じろという方が難しいから、軽く流してくれていいがね!」
ネコの男は楽しそうに話ているが、俺は呆れていた。
こいつ本当に信じてもらう気ないんだな・・・・。
「そうだ!せっかく助けたんだ。君の名前くらい教えてくれよ。」
名前だと・・・・?
ネコの男の質問に俺は嫌な顔して返した。
「嫌だね!あんたに何で教えないといけないんだ!!」
怪物だか何だか知らんが、なぜこいつに名前まで教えないとならないんだ!
「そんな冷たいこと言うなよー。助けたんだしさー。言わないと私の力で無理矢理言わせてもいいけど?」
ネコの男の言葉に俺はイラッとした。
こいつ・・・・自分勝手か!!
でも、こいつならさっきのこともあるしやりかねないな・・・・。名前以外のこともしゃべらせようとするかもしれない・・・・。
俺は嫌な気持ちを押さえつつネコの男に教えた。
「俺の名前は・・・パアシー。」
「ほう、パアシーと言うのかい。」
「クリス、アルベルト、トム・・・まだまだあるけど、どれで呼ぶ?」
沢山の名前を言われてネコの男は困っていた。
「何でそんなに名前があるんだい?君の本当の名前が知りたいんだが。」
本当の名前・・・・。
「俺に本当の名前なんてない・・・・。あるのは売られた所でつけられた名前だけだ。」
俺は自分の本当の名前を知らない。
聞かされた話だと赤ん坊の俺を親は売ったらしい。
最初に売られた店で名前を付けられた。そのあと色々な所に売られては名前が増えた。
俺には偽りの名前しかないんだ・・・・。
まぁ・・・どうせ俺に本当の名前なんてあっても仕方ないけどな・・。
「ふーん、なら私が君に本当の名を与えようか?」
ネコの男の言葉に俺はびっくりした。そして怒った。
「何であんたに名前をつけられないといけない!これ以上名前なんていらない!」
本当の名前って何だよ!それもどうせ偽りに過ぎないじゃないか・・・・。他と何が違うって言うんだ!!
ネコの男は楽しげに悩んでいた。
「そういうなって♪そんな沢山名前があっても仕方ないだろう?君という一つの名前を決めるべきだ!そうだなー何がいいかなー?」
こいつ・・・人の話を聞かずに本当に・・・・!!
「ムカつく!あんた本当にムカつく!!」
俺はネコの男に今の怒りをぶつけた。
何だよ!頼んでもないのに俺のこと助けるし、今度は名前まで・・・・俺の意見は無視か!
「そんなに怒るなよー。そうそう私もあんたという名前じゃないよ。」
こいつの名前?そんなもん知るか!知りたくもない!!
その時の俺はネコの男の名前なんてどうでもよく、ただムカついていた。
「私の名はロジカだ。覚えたかいナギ。」
ロジカ・・・・それがこのネコの男の名前のようだ。
ん?さっきこいつ最後になんて言った?
「ナギ・・・・?」
「ナギ、良い名前だろう。さっき思い付いたんだ。今日から君の名はナギだ!」
こ、こいつ・・・!!
「もう偽りの名を使わないですむぞ!よかったなナギ!!」
ネコの男は嬉しそうだったが、その時の俺は全然嬉しくなかった。
勝手に・・・・!勝手に・・・・!!
「だから・・・勝手に決めるな!!」
怒りが爆発して俺はネコの男の腹にパンチを食らわせようとした!