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怪物の軌跡  作者: ポチ
3/6

第一話「死と怪物」

 

 子供の頃、私は非力で何もできない子供だった。


 雪降り止まぬ町「オルド」

 真っ白な雪の中に俺はいた。


 服はボロボロなったつなぎの服に片方だけの靴を履き、冷たい雪の地面に俺は蹲っていた。


 通りかかる者は、皆俺を見ないように避けて通りすぎていく。


 手や足の感覚がない。身体は氷のように冷えきっている。


 俺はこのまま死ぬのか?


 視界が少しずつ暗くなる。心臓の音が小さくなる。


 あぁ・・・・あと少しで俺の命の火は消える。


 死んだら、俺はどうなるのだろうか?もし生まれ変われるのなら、次はもっとマトモな人生を送りたいな・・・・。


 誰かが倒れる俺の背の後ろに止まった。


 誰だ・・・・?逃げた俺を捕まえに来たのか?


「なぜ君は倒れている?転けたのか?」


 知らない男の声?何だこいつ?


 答える気力もなかった俺はただ黙っていた。


「答えないということは、君はもう死んでいるのか?」


「・・・・うるさい。」


 凍える唇で俺は男に聞えない小さな声でボソッと呟いた。


「なんだ、生きてるじゃないか。死んだふりなんてするなよ。」


 男は俺の声が聞こえたのか、返事を返してきた。


 こいつ本当に何なんだ?何で俺の声が聞こえるんだ?


「俺の勝手だろうが・・・。」


 もう疲れたんだ。これ以上俺に考えさせないでくれ。静かに死なせてくれ。


「おや怖い。でも、もう死にそうだね。君はここで死にたいのか?」


 ここで死にたいのか?男の言葉に俺は少し悩んだ。


 別に死にたいわけじゃない本当は・・・・。でも、死んでもうあんな生活しなくて済むなら、ここで死んだ方がきっと良い。


「・・・そうだ。」


 俺は男の質問に一応答え、目を瞑った。


 もうこれ以上は話す声も出ないな・・・。そろそろか・・・あぁ・・・やっと楽になれるな。最後に変な奴にあったな。


「ふーんそうか、なら生きろ。」


 え?


 男が俺の身体に触れた。その時だ!


体が熱くなるのを感じた。体の中を炎が駆け巡るようだった。


 何だこれは?何が起こっている!?体が熱い!!


「さぁ、これで君は死なない。」


 何言ってんだこいつ!?


 気付くと手足が動くようになり、視界もはっきりと見えてきた。


 あれ・・・?


 更に凍えきっていたはずの身体が暖かくなっていた。潰えかけていた命の火がまた灯ったのだ。


「伯爵様・・・・この子供を生かすのですか?また気まぐれで禁を犯すのですか?」


「あぁ、私の気まぐれだ。それに死にたいという人間ほど、私は生かしておきたいんでね。」


 男は誰かと話しているようだったが、その時の俺は自分に何が起こったのか理解出来ずにいた。


 何で・・・死にかけてたのに。どうして俺は生きているんだ?


「やぁ君、気分はどうだい?死ねなくて残念だったね!」


 こいつ・・・!


 男の言葉に俺はカッとなった。


「俺は死にたかったんだ!何なんだよおまえ!!俺に何したんだ答えろ!」


 立ち上がり、俺は男に振り向き際に怒鳴った。


 その時だ。男の姿を見て俺はゾッとした。男が一瞬真っ黒な影のような塊に見えたのだ。


 何だ・・・アレは!?


 その後見ると、男は背の高いネコの仮面を被った紳士なっていた。。


 さっきのは一体何だったんだ?何でネコの仮面付けているんだこの男は?


「何をしたか?君に生きろと言っただけさ。」


 なんだよそれ!?


「生きろと言っただけで、こんなことできるはずない!」


「あと。私が誰だって質問だが。私はそうだな・・・・こちらではなんと言われるのだろうな。そう闇だな。」


 闇?


「こちら側では、私なぞ存在しない方がいい異物なんだよ。」


 ネコの男は何か悟ったように言う。


「何言ってるのか分からねぇよ!闇とか異物とか!」


 俺にはネコの男の言葉が理解できなかった。


「そうだなもっと簡単に言うべきだったな。私は人間じゃない。」


「はぁ?人間じゃない?じゃあ、あんたなんだって言うんだよ!」


 ネコの男は口に笑みを浮かべて、こちらを見て言った。


「私はね・・・・怪物さ。」


 これがロジカと私との出会いだった。

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