第一話「死と怪物」
子供の頃、私は非力で何もできない子供だった。
雪降り止まぬ町「オルド」
真っ白な雪の中に俺はいた。
服はボロボロなったつなぎの服に片方だけの靴を履き、冷たい雪の地面に俺は蹲っていた。
通りかかる者は、皆俺を見ないように避けて通りすぎていく。
手や足の感覚がない。身体は氷のように冷えきっている。
俺はこのまま死ぬのか?
視界が少しずつ暗くなる。心臓の音が小さくなる。
あぁ・・・・あと少しで俺の命の火は消える。
死んだら、俺はどうなるのだろうか?もし生まれ変われるのなら、次はもっとマトモな人生を送りたいな・・・・。
誰かが倒れる俺の背の後ろに止まった。
誰だ・・・・?逃げた俺を捕まえに来たのか?
「なぜ君は倒れている?転けたのか?」
知らない男の声?何だこいつ?
答える気力もなかった俺はただ黙っていた。
「答えないということは、君はもう死んでいるのか?」
「・・・・うるさい。」
凍える唇で俺は男に聞えない小さな声でボソッと呟いた。
「なんだ、生きてるじゃないか。死んだふりなんてするなよ。」
男は俺の声が聞こえたのか、返事を返してきた。
こいつ本当に何なんだ?何で俺の声が聞こえるんだ?
「俺の勝手だろうが・・・。」
もう疲れたんだ。これ以上俺に考えさせないでくれ。静かに死なせてくれ。
「おや怖い。でも、もう死にそうだね。君はここで死にたいのか?」
ここで死にたいのか?男の言葉に俺は少し悩んだ。
別に死にたいわけじゃない本当は・・・・。でも、死んでもうあんな生活しなくて済むなら、ここで死んだ方がきっと良い。
「・・・そうだ。」
俺は男の質問に一応答え、目を瞑った。
もうこれ以上は話す声も出ないな・・・。そろそろか・・・あぁ・・・やっと楽になれるな。最後に変な奴にあったな。
「ふーんそうか、なら生きろ。」
え?
男が俺の身体に触れた。その時だ!
体が熱くなるのを感じた。体の中を炎が駆け巡るようだった。
何だこれは?何が起こっている!?体が熱い!!
「さぁ、これで君は死なない。」
何言ってんだこいつ!?
気付くと手足が動くようになり、視界もはっきりと見えてきた。
あれ・・・?
更に凍えきっていたはずの身体が暖かくなっていた。潰えかけていた命の火がまた灯ったのだ。
「伯爵様・・・・この子供を生かすのですか?また気まぐれで禁を犯すのですか?」
「あぁ、私の気まぐれだ。それに死にたいという人間ほど、私は生かしておきたいんでね。」
男は誰かと話しているようだったが、その時の俺は自分に何が起こったのか理解出来ずにいた。
何で・・・死にかけてたのに。どうして俺は生きているんだ?
「やぁ君、気分はどうだい?死ねなくて残念だったね!」
こいつ・・・!
男の言葉に俺はカッとなった。
「俺は死にたかったんだ!何なんだよおまえ!!俺に何したんだ答えろ!」
立ち上がり、俺は男に振り向き際に怒鳴った。
その時だ。男の姿を見て俺はゾッとした。男が一瞬真っ黒な影のような塊に見えたのだ。
何だ・・・アレは!?
その後見ると、男は背の高いネコの仮面を被った紳士なっていた。。
さっきのは一体何だったんだ?何でネコの仮面付けているんだこの男は?
「何をしたか?君に生きろと言っただけさ。」
なんだよそれ!?
「生きろと言っただけで、こんなことできるはずない!」
「あと。私が誰だって質問だが。私はそうだな・・・・こちらではなんと言われるのだろうな。そう闇だな。」
闇?
「こちら側では、私なぞ存在しない方がいい異物なんだよ。」
ネコの男は何か悟ったように言う。
「何言ってるのか分からねぇよ!闇とか異物とか!」
俺にはネコの男の言葉が理解できなかった。
「そうだなもっと簡単に言うべきだったな。私は人間じゃない。」
「はぁ?人間じゃない?じゃあ、あんたなんだって言うんだよ!」
ネコの男は口に笑みを浮かべて、こちらを見て言った。
「私はね・・・・怪物さ。」
これがロジカと私との出会いだった。