不幸な非リア充
「で?私のところに来たと?」
「来たというか来ちゃった的なね?」
「そりゃあすまない、ついリア充がいたから消そうとしちゃったよ」
「まあちょっとびびったけど結局なんともないんだからさ!結果なんともなけりゃいいんだよ!」
現在目の前には『俺』?がいる
……なぜこうなっているのでしょう
遡ること昨日の転移の時……
「陸地がある所ならどこでもいいからいってみたいなぁ」
あの気まずいなか唱えたピース
ピース
それはこの世界の人が最低一つは持っている能力
その発動のための詠文を発見することの厳しさゆえ使える者は多くはない。
そして俺のピースは
ランダム転移
発動条件は
「『~~のある辺りなら』どこでもいいからいってみたいなぁ」
という意味のわからない言葉
ついでに『』内は自由に変えていいらしい。
その俺のピースを使い転移した……が
転移した直後に足場が崩れた。
「なぁっ!!!?」
咄嗟に右手を伸ばす。
「彼螺様!!」
メリアも手を伸ばし俺の手を掴んだ。
しかし崩れたのは足元だけ
結果、埋まったのは下半身のみ
伸ばした手、ただ握りあっているだけ
手を繋ぎあっている俺達は顔を赤らめながらゆっくりと手を離すのだった。
「『消えろ』!!このリア充!!」
「今度はなんだ!!?ってぇえええ!身体が消えていくんですけどぉおおお!!?」
突如放たれた言葉の主のせいかわからないが放たれた直後から変な安っぽいエフェクトと共に足の爪先から消えていく。
「彼螺様ぁああ!!?」
「えっ!ちょ!えっ!なぁああああ!!メリアさーーん!!」
「こいつら!!消える寸前まで目の前でラブコメする気か!!
爆発しろ!!リア充!!」
「ってお前誰だよぉおお!!ああっ!!ついに膝まで!!」
「お前みたいなリア充に名乗る名前なんぞないわぁああ!!」
この声の主、あのジジ神と似た臭いがするんだが!
っああ!!
「あああ足が消えたぁあああ!!!」
「彼螺様!?ちょっ彼螺様ぁああ!!?誰だか知らないけど止めてください!!このままだと彼螺様が!!」
「消えちまえぇ!!リア充ううううう!!!」
「ちょ!あ!腰!いや!腹が!!いやいや!!胸まで消えたぁああ!!!」
「……なんか余裕ありません?彼螺様?」
「え?バリバリ余裕だけど?よっと」
そのちょっとした水溜まりを跳んだときのような声が発せれた瞬間に彼螺の身体はいつものような状態に戻る
「ふえっ?」
さっきまで消えろだの消えちまえだのそんなことを言っていたやつの方からそんな情けない声が聞こえた
「よーし!覚悟はしてんだろーなぁーなでっ!!」
「彼螺様!!貴方こそ覚悟はしてるんですか!!」
「えっ?」
「あんなに心配したのに!!心配していたわたくしがばかみたいじゃないですかぁあああ!!」
ガッっとメリアの両手で掴まれたのは俺の首
埋まっていた俺の身体も引っ張り出され宙吊りに
「グバッ!ぢょっぐる!!くびがっ!じ、じまっで!」
「彼螺様の馬鹿ぁああぁぁぁあああああ!!」
「ぢょっじねる!あああぁぁぁぁ…………」
「このっ!このぉおおおお!!」
「…………」
「おおおおおい!!それ死んでんじゃねえの!!?」
「えっ?………………彼螺様ぁあああ!!?」
「…………」
「彼螺様!!彼螺様!!?」
「………この光景を見るとさっきの行動に出た俺を殴りたくなってくる…すまなかった……ほんとにすまなかった……」
「彼螺様!?えっ!?息してない!!?」
「どうか安らかにお眠りください……」
「どどどどどうすれば!!えっと!!あっ!!じ、人工呼吸!!でもっ!!っっっ!!ええいっ!!」
「ナームー」
仰向けとなって倒れている(「この光景を見ると……」の辺りからメリアが倒した)彼螺の唇に自らの唇を重ね……
ふぅううううーー!!
心臓の辺りを……
グッグッ
そしてまたもや……
ふぅううううーー!!
そしてまたまた……
グッグッ!!
さらに!
ふぅううううーーーんっ!!?んんんぅぅ
「ダービーダーブー……え?」
「んっ、ちゅっ、ぅん……」
「えっ?えっ?」
「ぅんん…ぷはぁ……彼螺さまぁ……」
「……あっごめん…目覚ましたらかわいいメリアさんがキスしてたからつい……」
「もう、メリアでいいですよぉ……んっ」
「んぅ…メリアぁ…」
「彼螺さまぁ……」
「なっなっなっなっなっなっなぁああああ!!!このっ!!
『消えろ』『消えろ』『消えろ』『消えろ』消えろ』『消えろ』リア充うううぅぅ!!!!」
「…んぅっ……少し黙ってろって」
彼螺がなにもないところに腕を振る
すると、声の主が発動させたであろうピースの効果がすべてが消える
「んぎぎぎ!!!
くっそ!……………案内するから!
せめて!せめて客室でしてくれ!」
「……わかったよ」
俺はもうぼうっとしているメリアをお姫様だっこして先を歩く声の主を追った。
いつもならどんな場所にいるのかを考えるところだが今の頭の中には今腕の中にいる美少女のことしかない。
腕の中にいる状態でもキスをせがんでくるメリアはそれはもう
可愛い
当然してあげました。
「目の前見せつけてんじゃねえよ……くっそ」
……いつか君も見つかるよ
「ここだ」
「ありがとな、じゃ!」
「な、なあ!」
「……なんだよ」
「あ、あの、今度どういう感じか教えてくれよな……」
「……任せろ!」
「んー!(ポカポカポカ)」
……やべぇ、可愛い
「じゃ、じゃあ、ごゆっくり」
そういって声の主はトボトボと来た道を戻っていく
「よし」
俺は少し気合いを入れ、メリアと目の前の部屋に入っていった。
そして……
「あ…………」
これが、朝チュン……
俺の右腕にかかる重み
それは俺の『恋人』のメリア
そう、俺はこの異世界で創造神の孫娘に交際を申し込み承諾されたのだ!
一回戦が終わったあとメリアは自分の能力を見してくれた。
姓
フィノジス
名
メリア
性別 女
種族 人族(仮)『神族(封印中)』
種族値
(人族)
18/87
(神族)
1525/……
魔力値
99/100
一日に15回復
神力
0/……
封印がある限り回復しない
性格
ずっとあれ(ジジ神)の仕事をしてきたので基本的に真面目
しかしスイッチが入ると暴走orデレ
彼螺が大好き
(彼螺の困った顔や恥ずかしがっている顔を見ると少し興奮する)
JOB
狂興師
能力
通常、人族レベル
しかしスイッチが入ると……
LUCK
ほぼすべてにおいて成功する
(ジジ神により彼螺の不幸の影響を受けない)
ピース
能力認識(1)
習熟度
1/100
(『~~』の能力が知りたい)
『』内の変更有
個人名を入れるとどんなに遠くとも確認可能
無機物にも有効
祝福
創造神(孫バカ)の祝福
LUCK値の破壊
(値の代わりにほぼすべてに成功&不幸影響無効+α)
魔力値の回復量大幅に上昇
(メリアの今のピースは消費が激しくなると思うからな!)
これ、というか性格のあの部分を見て俺は自分を止められなかった。
とっさに告白をしてしまった俺だったが(全く後悔はしていません、むしろ当時の俺を誉めてあげたいです。)メリアは一瞬キョトンとしたが、次の瞬間に頬を染めながら頷いてくれた。
めっちゃ可愛かった
そのときのことはもう忘れることはできないだろう。
俺はこの娘と一生、生きていこうと心に誓った。
重いかもしれない、しかし……
いや、もうよそう、わかってもらえなくても構わないのだから!
俺は俺の腕の中ですやすやと眠る俺の彼女の頭を軽く撫でる
「ずっと一緒にいような……」
すると、俺の腕の中で眠る嫁は頭を真っ赤にして……
……頭を真っ赤にして……?
「……起きてたの?」
「…最初っから…はい…」
「……そっかぁ……」
「………あ、あの…」
…………
「うわぁあああああ!!」
俺は毛布を頭からかぶり籠る
「ギザったらしいこといった気がするんだが!!いやああああ!!はずい!死にた…くわないけど!!消えてなくなりたい!!やっぱそれもやだ!!でも、いやああああ!!」
くるまってバタバタしていると毛布に潜り込んでくるメリア
「はわぁああ……彼螺様可愛い…」
頭を掴まれそのまま胸元に抱き寄せられる。
「わっぷ!」
抵抗はしないが恥ずかしさが…
「彼螺さまぁ~彼螺さまぁ~」
ぎゅうぎゅうと頭を両腕で強く抱き締めてくるので俺も背中に手を回しデレデレになったメリアを今度は俺が抱き寄せる。
「メリア……もう一回しちゃう?」
「……はぃ……」
起きたばっかりだったが朝からハッスルしてしまった。
行為も終わり、服を着るとメリアが腕に抱きつきもう離さないとばかりにぎゅうぎゅう締め付けてきていた。
ヤバい、ほんとにもう可愛い
お父さんお母さん、そして妹
俺こんなに可愛い彼女と幸せに今を生きています
「だったらさっさと俺の城から出ていきやがれ」
「え?……だれ?」
ノックも無しに開けられた扉から入ってきたのは一人の男だった。
なんだかずかずかと入ってくる。
「なめてんのかこのリア充、マジで死ね」
「ちょなんだよ、俺とメリアの愛の巣を邪魔すんなよ」
「んなもんここでつくってんじゃねえよ、どっかいけ、どっか行って作ってろ、クソリア充」
「あ、そっか、ここお前の家か」
「そうだよ、っていうか俺の城だよ」
「へえ、そういえばこの部屋に案内してもらったとき廊下の壁がそんなようなかんじだったなぁ」
「で?いつ出ていく?というかいつ死ぬ?今死ぬ?」
「なんだお前さっきからずっとイライラしてんな、ちゃんと朝飯くってんのか?」
そこで俺はその目の前まで来た男の顔をはじめてしっかりと見た。
どこかで見たことがある
最初そう思った。
どこで見たんだろう
……鏡?
そう、目の前でイライラしているのは『俺』だった。
正確には、俺のそっくりさんだった。
まて、ちがう、全然正確ではなかった。
そっくりさんどころではない
俺自身が目の前にいた。
「「えっ?」」
どうやら目の前にいる『俺』も今この事に気がついたっぽいようだ
「……なにもんだてめぇ」
突如そいつは怒りを露にする。
「まて、それは俺も同じだ。
少し待ってくれ、まじで
えっと、目の前にいるのが『俺』、いや、俺が俺だから目の前にいるのも『俺』……ん?俺は俺だよな、よし、ってことは目の前にいるのは……『俺』……あれ?あれ?どうなってんの?えっ?ちょっ教えてくれ目の前にいる『俺』」
「オレオレうっせぇ、俺だってわかってねぇんだよ!っていうか俺が最初に質問してたじゃねえか!」
「……お前もじゃねえか……よし、一旦一人称を俺って言うの禁止にしよう、どっちがどっちだかわからなくなるから」
「一人称?なんだかそれ?」
「とにかく俺禁止で、うーん、じゃあ君は私でこっちは僕でいこう」
「まあ、わかった。んで?お前は誰だ?」
「お…いや、僕の名前は高凪彼螺……いやここなら彼螺高凪かな?」
「彼螺高凪……知らんな」
「そりゃあ俺のこと知ってるやつはこの世界でメリアしかいないからな」
「この世界で、ねぇ」
「たぶんお前が思ってる通りだよ」
「そういうことか、わかった、ならお前はお…私の敵ではなさそうだ」
「何がわかったか知らんがそう思ってくれるならよかった」
「ああ、そうそう、私の名前はリィジディア=ハイカルムだ」
……皆さんは経験あるだろうか
自分の名前を英語にしたらどんな風になるんだろうか…と
もちろん俺もやったことがあった。
リィジディルはしらない、普通に彼の名前だろう。
しかし、ハイカルムは知っている
名前を変換するときは基本的に一文字ずつ変換する。
高=high=ハイ
凪=calm=カルム
繋げて……
高凪=ハイカルム
……おっと、どういうことだ?
「どうした?なんか私の名前が変だったか?」
「……いや、変ではない、変ではないんだが……」
「なんなんだ?」
「うーむ……まあいいか」
「いいならいいんだが、そういえばなぜお前らはあの部屋に急に現れたんだ?」
俺はこの世界に来たときから、ここに来るまでの経緯を嘘を入れながら説明した。
いや、普通に考えて最初っからサンドバーにいるはずないから!
嘘入れないとおかしくなるから!!
そして冒頭に戻る
「で?私のところに来たと?」
「来たというか来ちゃった的なね?」
「そりゃあすまない、ついリア充がいたから消そうとしちゃったよ」
「まあちょっとびびったけど結局なんともないんだからさ!結果なんともなけりゃいいんだよ!」
「ほんとは今でも消してやりたいけどな」
「またまた~冗談が笑えないぞ~」
「あははははー」
「あはははは~」
同じ顔のやつがおんなじ笑いかたで笑っている。
唯一違うのは俺の右腕には可愛い嫁がいること
「ははは……やっぱりむごたらしく死ね、クソリア充……死にやがれ……」
「冗談きついってばぁ~あはははは」
「……ふぅ、一旦お前の死なせ方はあとにしよう」
「…本気だったのか!なんてな、そういえばこの城はお前のだっていってたよな、お前って偉い人なんだ?」
「リィジでいい、
一応この国の王をしてる」
「へぇ、王様だったんだ~スゲーな!」
「スゲーって思うんなら跪きでもしやがれ」
「ん?なんだ?跪いてほしいんならしてやろうか?」
「上から目線がムカつくなぁ……まあ、しょせん小国の王だしな」
「小国なんだ?」
「ああ、どうにか他国から攻め込まれずに生き延びてるけどいつ攻めこまれてもおかしくないからな」
「へぇ、そんな状況なのか」
「ああ、そんなこともあるからさっさと出ていくんだな、あとお前を見ているとイライラするから出ていきやがれ」
「リィジ、俺の能力忘れたのか?」
「おまっ!自分で禁止したのに破ってんじゃねえよ」
「いや、もうわかるからいいだろ?」
「そうだけどさ、お前の能力……ああ、ランダム転移だっけか?」
「そうだ、だからいざとなったとき逃げられるぞ?」
「いいんだよ、この国は小さくとも俺の国だ、王の俺が民や兵士を見捨てて逃げるわけにはいかないんでな。
本当は戦わせることなんてこともしたくはないし、民に幸せに生きててほしいんだけどな」
「……立派だな、俺とは大違いだ」
「ふっ、まあな」
「偉いわ、リィジ、王としてだけじゃなく人として…な
全くお前が何でモテないかまったくわからないくらい格好よかったぜ」
「……お前に誉められると違和感を感じるわ」
「よし!決めた。リィジ、俺お前の下で戦ってやるよ!」
「……は?」
「騎士としてや兵士としてではなく友達として、だけどな
お前はきっと誰よりも王なんだよ。だから俺はお前は死なせたくない」
「いや!お前には関係ないことだろ!?」
「関係あるね、恐らく俺とお前は同じ血が流れてる」
「なっ!!?」
「お前、ハイカルムっていったよな?」
「あ、ああ、俺の家名はハイカルムだが?」
「俺の名字、高凪はな、俺の世界の違う言葉で言うと、ハイカルムって言うんだ」
「……なんだと!?」
「そういうことだ、俺がここに転移してきたのも偶然じゃないのかもな」
「……俺も納得できなくもないかもしれない、お前が『この世界』っていったとき頭によぎったことがあったんだ」
「そういえばなんか納得してたな」
「それだ、俺が思うに俺とお前、リィジと彼螺は同じなんだよ」
「どゆこと?」
「だから、この世界のリィジとお前の世界の彼螺はイコールだったってこと」
「……わかったようなわかんないような」
「もっと分かりやすく説明してやろうか?」
「よろしく」
「ったく、この世界の俺はお前の世界のでも俺ってこと」
「おお!ってことは最初の俺のオレオレいってたことは間違ってはいないってことか!」
「まあ、仮説だから深く気にしないでくれ、まあ、それでもお前がわからないが」
「なんで?」
「彼螺は彼螺、俺は俺だろ?だったら自分の人生を生きろよ」
「マジでお前何でモテないんだよ」
「知るか」
「まあ、お前を尊敬したってことと感謝してるからだよ」
「感謝?」
「ああ、お前のお陰でメリアと一緒になれた」
腕にしがみつくメリアの頭を優しく撫でる
「……やっぱり死にたいのか?」
「ちげぇよ、本当にお前のお陰なんだよ、だから、俺もお前になんかしてやりたいんだよ」
「けっ、お前もかっこいいじゃねえか、さぞかしモテモテだったんだろうな、俺とは違って」
「メリアと会わなければ俺はお前みたいな感じだっただろうよ」
「そうなのか?」
「ああ、というかもっとひどかったかも」
「マジかよ」
「だから、余計にな」
「はぁ、わかったよ」
「任せろよ、最悪俺一人で敵全員ぶっ殺してやらぁ」
「お前ってそんなに強いのか?全然強そうに見えんが…」
「は?戦闘経験なんてもの一切ないが?」
「……おいおい、冗談だろ?」
「まあ、任せとけって」
「いや、いきなりお前がうさんくさく見えてきた」
「えー?」
「ちょっと俺と戦ってみないか?」
「信じてくれるんならやってやるよ」
「ああ、勝ったら全然信じてやる」
「よーし、やべぇ、燃えてきたわ、ごめん、ちょっと離れててくれるか?メリア」
「……わかりました、なんなら審判もやりましょうか?」
「頼める?」
「任せてください!」
「じゃあ、相手を気絶させたら勝ち、降参もあり」
「ああ、いいぜ」
「じゃあ、メリア、よろしくね!」
少し戦う場所としては狭いが……
「はい!……それでは、開始です!!」