第六話貧乏くじ
「おわったか・・・」周りを見渡すとそれは無残なものだった。
人や馬の骸が転がっている。何の変哲もない雪原は帝国兵、皇国兵、猫、軍馬さまざまな種族や人種の血で染められた墓場のようなありさまだった。
「小隊!集まれ」自分の小隊の掌握と被害を確認するために小隊を一度手元に集める。
「曹長、被害はいくらか」この小隊の最先任の国木田へ問う。
「はっ、猫一匹と兵七名が死亡重傷のものが二名、軽傷の猫が一匹であります中尉殿」
野太い声ではっきりと国木田曹長は答える。
「わかったありがとう曹長」騎兵に突撃を食らってこれなら安いものだと思う。
「通念兵!第一小隊へつなげ我レ損害軽微軍務続行ニ支障ナシだ」
_通念兵とは、念動力によって同じ能力を持つものと遠隔地でも更新できる念力を持った兵科の事だ。_
「はっ伝達いたします。」若い通念兵が第一小隊の通念兵へと俺の言った内容を伝える。
しばらくすると血相を変えて通念兵が第一小隊からの返信を伝える。
「第一小隊からです。我レ損害甚大、赤坂大尉以下20名戦死、士官不在ニツキ指示ヲ乞ウです。」
「何?大尉が戦死だと、そのほかの士官も全滅・・・」敵の主攻をまともに食らったのか、しばらく呆然としたが、我に返り通念兵へと返信を伝える。
「了解した。後方ノ林ニテ合流サレタシ伝えろ」
「はっ了解しました」
鉄虎歩兵一個中隊は、120名と猫30頭で構成されている。それを3つの小隊40名に分かれていたが、第一小隊は、半分近くの将兵が死傷し壊滅状態であった。
幸い猫は3頭ほどの被害しかなかったが、中隊長赤坂大尉以下第三小隊小隊長野田中尉士官二名が戦死したのは痛かった。
何しろ私がこの中隊の最上級の指揮官になってしまう。
林に集結した第一中隊の面々は、指示を待っている。ああいやだ、将校になっておきながら言うセリフではないが、指揮官なぞやりたくない。やはり、風呂屋の旦那にでもなっておけばよかったんだ。
にゃおと私の愛猫花楓が鳴く。コラしっかりせんかといっているように聞こえた。
そうだなと心で返事をすると花楓の顎をやりながら指示を飛ばす。
「これより大隊本部への合流する。第一小隊は、解体第二小隊へ合流。第三小隊は、国坂少尉貴様が取れ。以上」
「はっ国坂少尉小隊指揮します!」まだあどけない新品少尉は、返事をする。
大隊に合流しても我が大隊は、殿というトンデモもない貧乏くじを引いている。
よしんば合流できてもどうなるか・・・心ではそう思いながらも表情は指揮官としてふるまわねばならない。まったく軍人なんて最悪な職業になったものだ。