3話
紗菜と通学路を歩いていると、だんだんと登校する生徒の数が増えてきた。
真新しい制服に身を包んだ人も見受けられる。
その表情は期待に満ちあふれているようだった。
だけど俺は…。
「あ、音楽科の制服だ。」
ふと紗菜が口にしていた。
「…。」
俺は何も言えずにいた。
なんでよりにもよって俺は、音楽科のある青海高校に来てしまったんだろう…。
家から近くて、学力的にも青海高校普通科ばは滑り止めとしていいと担任から進められた時は正直迷っていた。
音楽科のある高校に行ったら、いやでも思い出してしまうんじゃないか…と。
だけど、だからこそ受験勉強にも身が入るのではないか、とも考えた。
公立落ちなければいいんだ。
落ちたら青海高校…。
そんなの絶対嫌だからな…。
絶対公立受かってみせる。
こうして俺は一念発起して、勉強に励んだ。
その作戦はこうして見事に大失敗に終わったわけだが…。
「あ、凪2組だって。わたし7組だよー。離れちゃったね。」
俺と紗菜はクラス表が貼られている掲示板の前に来ていた。
そして紗菜は、自分と俺の名前を見つけるとしょんぼりとそう言った。
「まじか、早く友達できるといいな。」
「凪こそー。」
「だな、じゃあまた。」
俺たちは別々の教室へと入っていった。