逃げろよ逃げろ
某歴史的に遭ったらしい事を参考に書きました。
よく調べてないんで本当に遭ったのかどうか等、その辺はわかりませんが…。
走っている。
広大で荒れ果てた土地を。
時折風が吹き、赤褐色の砂埃が舞う。
足は素足でさっきから小石が刺さって痛みが走る。
止まりたい。
止まれない。
周りの人達も同じだろう。
とにかく走る。
止まる訳には行かない。
「あの世で償え!!!」
一瞬嫌な音とこの世の物と思えない鋭い痛みを感じた。
俺は死んだとも分かった。
死ぬと何も無いのだから償いようがないだろう…。
嘲笑を浮かべた不気味な顔で俺は逝った。
暫くの後目を開けると赤黒い空と乾いた風の土地に寝ている事に気付く。
俺は死んだのでは…?
混乱する頭で考えるが分からない。
どうやら彼方に人が集まっているようだ。
蟻の行列のようにずっと連なって一箇所に集まる人達。
その黒い帯の一部に俺も加わった。
何か始まるのだろうか?
がやがやと群がり煩い人達の中央には高い石舞台がある。
高すぎる余り上に居る者が良く見えない。
不意に舞台上から咳払いが聞こえた。
静まり帰る人々。
「お前ら屑は多過ぎる。ここに居過ぎなんだよ。」
「だから幾らか上に押し付ける。」
「死ななきゃ勝ちさ。そら、逃げろ。」
そう、言い終わると地震が起こった。
いち早く逃げる。
逃げろと言われたから逃げれば良い。
勿論鵜呑みにはしないが。
今はとにかく逃げるべき。
何故なら遥か向こうから何かがこちらに迫ってきてるから。
逃げろよ逃げろ。
倒れた人々、殴り合う人々、発狂する人々、阿鼻叫喚の地獄絵図。
特に気にしない俺はとにかく走った。
ははは。
俺は走る。
さっき聞いた事が本当なら俺は生き残れる。
黒い金属で出来た建物が立っていたとか。
くはは。
俺は生き残る。
お前らはそこで死ね。
漁夫の利って知ってるか?
あははは。
相変わらず目の前に広がっている赤くて何もない乾いた世界。
風が強く吹き砂が舞う。
途中に何かの骨が落ちていた。
やっと黒いのっぽに辿り着く。
重そうな戸を開け中に入る。
冷んやりしていて気持ちがいい。
「おーい!俺たちも居れてくれ!」
「…あぁ。」
内心舌打ちをして、自身の迂闊さに苛つく。
終わってしまった事は仕方ない。
切り替えよう。
自分が生き残ればどうでもいい。
「ここなら安心だぜ。」
「….そうだな。」
「私扉閉めてくるわ。」
半分程扉が閉まった時声がした。
自分達も入れて欲しいと。
300人は越えている数。
まぁ、おそらくは…。
「残念でした。ばいばーい。」
重低音と耳に刺さる音を鳴らしながら扉が閉まった。
外から打撃音がする。
…生き残るのは俺だけだ。
俺たちは生き残らない。
ひひひひひひ。
「…ふぁ、ん?終わったか。」
名簿を開く。
「生き残ったのは…と。」
・天国行き328名
・地獄行き3名