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四天王  作者: 原善
第五章 カラー・フィールド
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その8 ミュウの謎

 現在。ロクの独房。ノックの音が聞こえドアの方へ振り向くロク。

『高田よ。点滴と検診よ・・・』

「どうぞ・・・」


 部屋に入って来たのは、高田と銃を構えた2名の若い兵。

「あんたたち!その距離じゃ間違いなくロクに殺されるわよ!?」

 高田の声に動揺する2名の兵士。二人はロクから少し距離を取った。

「そ、そんな事しませんよ。仲間ですから・・・」

「さあ?どうかしら?ポリス兵はロクが謀反を起こしたって騒ぐ兵もいるのよ。」

高田は笑顔でロクに点滴の準備を始める。


「ハハハ!謀反か?まあ俺が本気なら、先生を人質に取ってるかな?」高田の冗談と知ったロクは、敢えて後ろの若い兵に聞こえるように話した。ロクの笑顔に脅える若い兵たち。

「いい手ね?たまには旦那以外の男に抱き締められるのも嬉しいけど・・・これでも、格闘技はプロよ!四天王とは言え、そう簡単に人質に出来るかしらね?」と高田。

「あらら、そうなんですか?怖い怖い・・・」


 高田はロクの服をめくり、右脇の傷口を診始めた。

「さすがね~もう傷口がくっついてる。あんたの回復力も驚くけど、さすが関根ね!いい仕事をする!」

「関根さんとは長かったんですか?」

「元々、私はポリス専属よ。顔を合わすくらいで、話した事もあまりなかったのよ。私はずっと地下で別の部署も預けられてたしね。彼女も地下に降りれないでしょ?でも上ではいい腕だって事は知ってたわ!」


「そう!先生!死龍の容態は?」

「まだよ・・・意識が戻らないわ・・・」

「そうですか・・・死龍は本当にミュウなんでしょうか?」落胆するロク。

「ジプシーに生まれたら、誰もが不安がるよね?ポリスで育った私には分からない不安ね・・・でもしょうがないのよ。今の我々の科学じゃ太刀打ち出来ないほど、ミュウは複雑で厄介なのよ!」

「治らないなら、いっそ戦場で死なせたかった・・・」

「馬鹿ね?まだ死ぬって決まってないでしょ?」

「じゃあ治るんですか?死龍?」

「それも難しいわね。今の容態じゃ・・・でも次の犠牲者を出さない為にも、ここで治療をしなければならないと思うわ。」

「そもそも、何でポリスは発病せずジプシーだけの発病なんですか!?」


「放射能汚染された大地に育ったとか?放射能を多く摂取した魚を食べたとか?進化した蚊から変なバクテリアが伝染したとか?大気の変動や核でオゾン層がなくなり、今まで降り注がなかった未知の太陽の光線に当たり過ぎて皮膚から染まっていくとか?核の熱や温暖化で、今まで凍っていた古代の細菌が世界中に飛び回ったとか・・・?色んな説がたくさんあるけど、どれもみんなピンと来ないのよね?」

「どうしてですか?」


「いくつかは、核戦争前にでもあってもおかしくないし、ポリスだって太陽を浴びたり、魚は食べるしね。最後の菌の説もポリスの我々に感染するしね・・・大体発症はこの近辺だけって噂もある・・・」

「P6・・・この近辺だけですか?」

「まあ偶然かもしれないけどね?今は大体のジプシーはここに居るんだから、ここからしかミュウも出ないでしょ?・・・さてさて、次の点滴は明日ね。ちゃんと食べて置くのよ?いい?痛み止めの薬はここよ!」

「はい・・・」

 高田と兵士らは、ロクの独房から出て行った。



 ジプシャン軍鹿島台本部。寛子のいる部屋に犬飼が入って来る。

「寛子様!タケシ様の部隊の者がP6より戻りました。」

「通せ!」不機嫌な寛子。

「ははっ!通せ!」


 銃を持った兵に囲まれて、部屋に入って来たのはヒデの仲間の丸田や羽生たちだった。

「お前らは・・・あの時の?」丸田に気づく寛子。

「この者らの話ですと、タケシ様らはP6内部に侵入後、連絡が取れないとの事!」

「ふん!タケシは死んだか?しかし、下手に捕らえられ薬でベラベラ吐かれても困る。奴に連絡をせよ。最悪は始末するようにと連絡を取れ!」

「よ、よろしいのですか?」

「戦死なら、タケシ派閥の参謀らも納得する。さて、聞かせてもらおう?ヒデの仲間だったな?タケシは何と言ってたのだ?」


「はい・・・真・四天王がどうのこうのと・・・地下に入り確認すると。我々には、ここに装甲車で戻るよう指示をされ、それっきりで戦闘も終了し・・・詳しくは・・・街に突入した仲間たちともはぐれてしまい・・・」


「父が恐れた真・四天王か?しかし、よくポリス内部に入れたな?ふふふ我が弟ながら関心する・・・」不敵に笑う寛子。

「手引きした者がいたようです。それで内部に!」と犬飼。

「ふん!しかし、事実上タケシ隊は崩壊か・・・」


「我々はどうしたら?」不安がる丸田たち。

「好きにするがよい。いっそポリスに投降したらどうだ?」

「そ、それは・・・」

「タケシ様に拾われたのだろ?既にここでは不要だ!立ち去れ!」と犬飼。

「くっ・・・」

丸田たちは無言でその部屋を後にした。



 再び3年前。P4近くのダブル班。4階建てのビルの上にはロクが見張りに立っている。日は西に傾きかけていた。その廃墟ビルの横には、モスキートの物であろう、錆びた鉄骨で作られた十字架がある。ダブルとキキはそのすぐ側にいた。


「なんで、前線に上がって来た?」とダブル。

「仲間は救う・・・それがうちの班長よ!」とキキ。

「バズーが危ないってどういう事だ?」

「班長曰く、罠だと・・・」

「確かに、バズーたちをつけてる足跡はあったが・・・さっきのガキならもう問題ないはず!」

「それだけじゃないよ。ロクは前に出てるイブたちも捜すつもりよ。」

「心配するな。後は俺らがやる。キキらはもう所定キャンプへ戻れよ!ここから先は命の保証は・・・」

「わかってる!でもロクがなんて言うか・・・」

「キキ!?俺の言うことが聞けないで、ロクの言う事は聞けるのか?」

「これは作戦よ!ロクはここでは上官なの!そんな風に言わないでよ!」


 そこに、ホーリーが戻って来る。

「あら?お邪魔だった?」二人の様子を察するホーリー。

「う、ううん。いいのよホーリー・・・」

「チビ助!キキを泣かす真似したら、あたいが承知しないよ。」

「うるへぇー!デカ女!」


「ここの周りには、残が爆薬を仕掛けた。取りあえず夜までは安心よ!」ホーリーはダブルを無視してキキに話掛ける。

「ホーリーはどうしたい?この先?」

 ホーリーは、突然のキキの質問に戸惑った。

「ああ・・・ロクが行くと言うのなら・・・だな?」

「そうか・・・」

「キキは?」

「それは・・・」キキはホーリーの逆の質問に戸惑う。


「ロクの助けはありがたい。でもな・・・」二人の会話に口を挟むダブル。

「それはあんたの私情でしょ?なんならキキだけ戻そうか?それで納得なんでしょ!?」

「ホーリー!お前な・・・!?イチイチ俺らの事を・・・」

「プロジェクトソルジャーが恋愛禁止なのは、こういう事でしょ?作戦に私情が出るなら、あんたら二人ともソルジャーなんて辞めちまいな!」


「お前!言い過ぎだぞ!」怒るダブル。

「・・・」下をうつ向くキキ。

「モスキートやタンクは死んだ!もう帰らない!仲間が死んで動揺するなら、この先には行かない!ただこの先に不明の仲間がまだ居るかあもしれない!それを救いに行く!簡単な事でしょ・・・?」


「ごめん・・・そうよね!」ホーリーの言葉に意を決するキキ。

「キキ・・・お前まで・・・」落ち込むダブル。

「仲間を救う・・・私たちいつもそうやって、先頭を走ってきたんでしょ?ロクもバズーも・・・私たちに選択の余地なんかはないわよ。うちの班長が行くというなら、私は地獄でもどこでも行く覚悟よ!それがロク班の答えでしょ!?」

「ホーリー・・・話にならん!勝手にしろ!」

 ダブルはそう言うと、高い廃墟ビルに入っていった。

「ダブル・・・」キキがダブルを目で追う。

「キキ?陽の所まで戻りたいなら戻ればいい!私から班長に言うわ!」

「ホーリー・・・?」

「ここから先はもっと危険よ!それはモスキートたちが教えてくれたでしょ?あんな風にあんたも砂の中に入りたいなら別だけど・・・」

ホーリーはモスキートの十字架を見つめる。



 トンネル内のバズー班。暗視メガネをしている一行に、先方から明かりが見えて来る。

「んっ!」

 バズーが制止の合図に拳を挙げた。トンネルの左右に分かれ警戒態勢を取るバズー班。皆が緊張した。すると懐中電灯でか、照明信号が届く。


「ワレ、ピーフォー・・・ソチラハ?・・・おい、P4だ!」

 ブイは同じく持っていた懐中電灯で、照明信号を送った。 向こうも信号で返す。

「ポリス信号・・・仲間だ・・・」


 ブイの言葉に安心したのか、バズー班は緊張を緩めた。

「バズー!俺がまず行く!」ブイがひとり前に出る。

「任せる!」


 ブイは、暗視スコープを外すと、手に持っていた懐中電灯を持ってゆっくり先に進んだ。バズーらは、その場で警戒しながらブイの背中を見つめる。その時だった。トンネル内に、一発の銃声が響いた。すると前にいた、ブイが前のめりでトンネル内で倒れた。


「ブイ!?」バズーが叫んだ!

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