その7 ツヨシ登場
当時のP6の四天王は2期生のタンク、レボ、SSと3期生のロクからの4人から構成されていた。タンクは当時17歳。2期生でも、四天王の4人の中でもリーダー的な存在だった。温厚で明るい性格は、誰からも愛されていた。バズーを凌ぐ体格。まるで歩く戦車だった事から、皆にタンクと呼ばれていた。今回は2期生を中心にP4支援の出撃だったが、途中で音信不通となり、ロクら3期生の出撃となる。
「こいつ、うちらの四天王の首まで・・・殺れよロク。お前が致命傷を与えたんだ。このままでもこいつは死ぬ。とどめを刺せよ!」残がロクに詰め寄る。
「まだ・・・子供じゃないか?」躊躇するロク。
「モスキートもこいつだ!お前がやらなきゃ俺が殺るぞ!」残は腰の拳銃を急ぎ抜いた。
「待って、残!・・・キキいい?」その様子を見ていたホーリーがキキを呼んだ。
「えっ?うん・・・」そう言うとキキは、躊躇う事もなく自分の拳銃を抜き少年を額を撃ち殺した。
「キキ・・・」動かなくなった少年から目を反らすロク。
「いつか、こんな日が来るとは思っていたけどね・・・」キキは坦々とみんなに話す。そんな中、残だけはロクを睨んだ。
「何だよ!仲間の仇もとれねぇのか?えっ!新四天王はよ!?」
残はそう言うと、少年兵のいた建物の中に入っていった。そんな中、ダブル班の残りの10名も合流してきた。
「何だ?今の銃声は?」
ダブルは、横たわる少年の死体を見て状況を察した。
「残は?」キキに尋ねるダブル。
「この建物に入って行った。今日はここでキャンプね?見通しがいいもん・・・」キキもそう言うと建物内に入って行く。
「そうね。ロクいいでしょ?」ホーリーがロクに尋ねる。
「ああ・・・そうだな。夜まで動けないな。ダブル?モスキートの様子は?」
ダブルは首を横に振った。
「そうか・・・」
「こんなガキが狙撃兵とはな・・・」
「奴が持っていた・・・」
ロクは少年兵が持っていたドッグ・タグを放り投げた。
「タ、タンクのか・・・うちの四天王がこんなガキに殺られたのかよ・・・」
「ジプシャンもこんな若い兵を戦場に送るんだな?」
「俺らだって、7歳から戦場に出てるじゃないか。どこも同じだろ?ああ、モスキートがお前にってよ!」
ダブルは、持っていたモスキートの拳銃をロクに渡した。
「モスキート・・・」
「もう、一丁は俺が継いだ。モスキートを埋める。後で手伝え!」
「ああ・・・」
トンネル内のバズー班。キーンは狭い通路を走っていた。100メーター後だろうか、なにか照明のような光がキーンを追いかけていた。
「弾切れとは情けない・・・斬りつけるには数が多いな・・・」
すると、キーンの走った先にはバズーがバズーカを構え待っていた。
「バズーか!?」
「キーン!伏せろ!」
キーンが前のめりに倒れると、バズーはトンネル内のたくさんの光に向けバズーカを発射した。弾はその追手たちに命中したが、そのバズーカの威力でその付近の通路の天井は崩れ掛かってしまった。
「あーあー、バズー?」
「すまん・・・って仕方ないだろ!?」
「どうすんだよ?戻れねぇよ・・・」
真っ暗になったトンネルで二人は再び暗視スコープを掛け始めた。
「で?みんなは?」
「この先に居る。違う広いトンネルに繋がったんだ。」
「そうか・・・抜けたか・・・」ホッとするキーン。
P4の5キロ南の荒野に、どこぞやの国の空母と戦艦がバツの字でクロスする奇妙なサンドシップが停泊している。ポリスのレヴィアとは真逆で船底の下部の所がない。正面から見て、左が空母、右が戦艦。空母の甲板部分には戦闘機ではなく、30台くらいのSCが並べられていた。長さは300メートルとこの世界では大きく、荒野では目立つ存在だった。環境は空母も戦艦部分も健在だが、戦艦の艦橋部分が司令塔となっている様子だ。
その艦橋部分に、一人の若い男が座っていた。砂漠迷彩の軍服には、たくさんのバッチが取り付けられて、どこか涼しげな顔で前を向いていた。そこへ一人の兵が艦橋に入ってくる。
「ツヨシ様!」
ツヨシと呼ばれた男は、席を立ち上がりおもむろに兵に近寄った。
「出番かい?」
「いえ・・・北でタケシ隊が妙な動きを・・・」
「なんだ、出撃ではないのか?つまんない!」
「ツヨシ様・・・」
この男。ジプシャン軍の土井一族の一人で土井ツヨシ。歳は当時15くらいであろうか。タケシの弟にあたるが、母違いで兄のタケシとは仲が悪い。軍の中では、長男のタケシよりこのツヨシを次期後継者に押す者が多い。兄弟とは言え、タケシとは真逆の性格で、温厚で策士でもあった。
「ここに配属されて10日。砲弾一つ撃ってないよね?両角?」
「はあ、ここは瓦礫の要塞でございます。我々は南方部隊の支援が中心で・・・」
「つまんない!つまんない!」
「ツヨシ様・・・兵が見ております・・・」ツヨシをなだめる両角。
両角はツヨシ隊の参謀。若いツヨシの教育係りでもあった。歳は40代後半。
「モロズミー?また兄貴に手柄を横取りされるぞ!」
「ここの指揮は、タケシ様になります・・・」
「とは言え、つまんない!それで?その兄は何と?」
「はっ!ポリスの援軍との交戦を確認しております。」
「北か?志村口って奴か?敵の数は?」
「SCはわずかの陸戦部隊とか?」
「北の担当はタケシ隊の死神だったな?」
「その死神が苦戦とも情報が・・・」
「北に偵察に行く。船を出すぞ。」
「し、しかしこちらに待機では?」
「なぁーに偵察偵察!P4への牽制にもなる。」
「は、はぁ・・・」
トンネル内のバズー班。新しいトンネルを警戒しながら進む。
「おい、これどこまで続いてるんだ?」とバズー。
「これって、旧半蔵門線になるのか?」とライ。
「無線返答なし・・・」ブイは無線機に呼び掛け続ける。
「このまま出れないんじゃないのかい?」
キーンはバズーを睨んだ。
「おいおい怒るなよ。あの時はああするしか・・・」
その時だった。ブイの無線に反応がある。
『こち・・・4・・・です・・・せよ・・・』
「来たぞ!こちらシャチ!聞こえるぞ。」
『今・・・こだ?』聞き取りにくい無線音。
「ルートM、13オーバー。バルーン」(三田ライン、13キロ過ぎで道に迷う)
『・・・のまま、ミナ・・・に下れ。』
無線は一方的に切れたが、ブイは少しホッとした顔に戻る。
「なんとか、通じた・・・南だとよ!」
「このまま、南でいいのか?ってどっちが南だ?」とバズー。
「・・・って、誰かのせいで戻れないし・・・」
再び、キーンはバズーを睨んだ。
「おいおい、命の恩人を睨むなよ。よ、よし!このまま逆V字隊形。隊を前進する!」
隊は再び動き始めた。しかし、キーンだけが、その場を動こうとしなかった。
『しかし、志村口の入口で見た、あの新しい足跡・・・入ったままで出て来る足跡はなかった・・・もしポリスの兵であれば、奴らは一体どこに消えたというのだ?』