その14 裏切りの凶弾
P6指令室。
「先程の爆発は敵のSCの何台かが爆発した様子です。」と柳沢。
「司令!先程の爆発で、キーンさんらが負傷してます!」と我妻。
「えっ・・・?」松井がキーンの名前にいち早く反応した。
「死傷者多数!特にキーンさんは重症!!」
「そうか・・・すぐ救助隊をあてろ!」
「そんな・・・嘘です・・・キーンさん・・・」松井は混乱した。
「キーン・・・」嘆く弘士。
「司令!第14車両シャフト!間もなく地上です!」と柳沢。
「地上部隊!!いいか!奴等を逃がすなよ!!」
シャフト内のヒデと兵士たち。シャフト内のエレベーターが止まり前方の扉が上に開き始めた。
「行くぞ!」とヒデ。
「腹はくくったぜ!」と他の兵たち。
すると、前方に見えて来たのは銃を構える、15名程のポリス兵だった。ヒデは驚いて周りを確認するが、建物の上や左右の道路すら銃を構えた兵で一杯だった。
「くそっ!!」
後部座席の兵士たちは、銃を構えた。
「抵抗するな!蜂の巣だぜ・・・」
するとヒデらは観念してSC内で両手を上げた。ポリスの兵らは銃を構えながら、ヒデの乗るSCに恐る恐る近寄った。
P6指令室。
「シャフト内、敵兵3名確保!」と我妻。
「うん・・・しかし数が合わんぞ!館内どうした!?松井?」
「・・・は、はい・・・ロク、ダブル隊共に連絡ありません!」
「バズー隊同じく連絡なし!」と我妻。
「松井?地上部隊の半分と地下護衛隊を地下3階に導入する!」
「了解!」
「敵が侵入した!?地下にか!?」とある兵。
「こちらのも同じ報告です!詳細は不明!地下から迎撃に出た兵が全滅!!」と我妻。
「柳沢?前司令と曽根参謀らは?」
「地下3階の非常口近辺で負傷者の手当てをしてます。」
「そうか。地下のモニター監視怠るなよ!まだ館内に敵兵が潜んでいるぞ!!この階の指令室のドアにも電流を流せ!」気を引き締め直す弘士たち。弘士は左手で腰の銃を抜くと席を立ち、ドア付近に狙いを定める。
地下3階SC倉庫内。タケシが、無防備な直美に銃口を向けて関根と対峙している。
「逃がすと約束したじゃない!」
「たった今、事情が変わったのさ・・・」ニヤリとするタケシ。
「くそ!」
関根は、捨て身で直美をかばってタケシに体当たりを掛けた。しかし、タケシは関根に発砲し、関根は腹を押さえてその場で蹲った。
「いやっー!!」関根が倒れたのを見て、直美は叫んだ。
ロクはその時、微かな銃声を聞いた。すぐロクはインカムを使い指令室に無線を飛ばした。
「こちらロク、倉庫内で銃声。そちらに向かう!至急応援を!」
『了解!』と我妻の声。
「23ブロックの備蓄倉庫に桑田が負傷!誰かまわしてくれないか?」
『桑田無事でしたか・・・分かりました!』安堵に変わる我妻の声。
「頼むぞ・・・」
『そ、それとロクさん!』我妻は思い出したかのようにロクに叫ぶ。
「何だ!」
『キーンさんら地上で爆発に巻き込まれ・・・重症・・・』
「キーンが!?」
『詳しくは連絡が来てないのですが、片足が・・・』
「嘘だろ・・・キーンに限って・・・嘘だろ!なあ?嘘だろ?我妻・・・?」我妻の結末を言わない報告にロクは焦る。
『ま、また分かり次第連絡します。そちらに兵を送ります。ロクさんも気をつけて下さい・・・』
「わかった・・・」
地下3階廊下。桑田は自力で廊下を医務室に向かって歩いていた。途中、タケシ隊とポリス隊が銃撃戦をした非常口付近を通る。
「ジプシャンの兵か?」
そこには、銃撃戦で倒れたのであろう、ジプシャンの兵が3名程倒れていた。3名とも既に息はない。桑田はそれを見て見ぬ振りをして、そこを通り過ぎた。そこに桑田をつける黒い影があった・・・
地下3階SC倉庫内。直美が関根をかばって、タケシから守ろうとしている。
「この子だけは、逃がして・・・約束でしょ・・・」虫の息の関根。
「こいつらは俺を裏切った!!」
「どう言う事よ!?」
すると直美がタケシに向かって吠える。
「裏切ったんじゃないわ!もうジプシャンが嫌になっただけよ。だから父と逃げたのよ!」
「同じ事だ・・・」
タケシが直美の頭に銃口を向けた。
「やめてぇー!」
目を瞑る直美・・・次の瞬間、一発の銃声が倉庫内に響いた。目を開ける直美。目の前には、タケシの拳銃は床に落ち、タケシが手の甲を押さえている姿があった。
「またかよ・・・次から次へと・・・」とタケシ。
タケシは銃声のあった方向に顔を向ける。そこにはポンチョコートにハット姿のポリス兵の姿があった。ハットに隠れ顔が見えない。タケシは先程のでかい兵かと思ったが、別人なのに逆に驚いていた。タケシについて来た、早坂がそのポリス兵に向かって慌てて銃を向けた瞬間だった。再び銃声が聞こえた。早坂はは肩口を撃たれ後ろに飛んでしまう。
「あらら、すまんな。今日は調子が悪い・・・」
「ロク・・・?」
「ロク?」直美と関根はすぐロクだと気づいた。
ロクは、ハットを上げてタケシを睨み付ける。
「誰だ、今度は?」とタケシ。
ロクはタケシに向かって銃口を向けた。
「ストラトスのタケシか?」
「・・・だとしたら?」即答しないで間を空けて答えるタケシ。
「なら、何度も荒野で逢ってるぜ!」
「き、貴様・・・雷獣か・・・?」余裕のロクに対して顔色が変わるタケシ。更に動揺したのかタケシの声は裏返った。
「お前が・・・あの雷獣なのか?」
「さあな・・・」
「ん?どこかで一度見たツラだな?」
「ああ、一度な。P4のお前らの司令室・・・あの時の、小火覚えてるか?少女兵が消えたのを?」
「あの時のガキか?下手な猿芝居打ちやがるな!」
「覚えてたか?その猿芝居に騙される方もどうかと・・・?」
「で?・・・何モンだお前は!?」
「俺かい?俺が四天王・・・P6の四天王のロクだ!」
「し、四天王・・・!?」と直美。
「四天王だと?ふはははっ!やっと逢えたな?」
「何だと!?」
「ふっ・・・」
すると、タケシは隠し持っていたサバイバルナイフを取り出し、直美の後ろに回り込んだ。
「なに!」驚くロク。
「直美!」と関根。
タケシは左手で直美の首を絞め、右手で直美の顔にナイフを突きつけた。
「くっ・・・」
「直美・・・」
「雷獣!銃を捨てろ!さもなくばこの女を殺す!」
「野郎・・・」
桑田は薄暗い廊下を一人歩いていた。やはり後ろには黒い影が桑田をゆっくりと後をつけていた。その影はジプシャンの使う拳銃を桑田に向けていた。桑田はそれに気づく事なく前を向いて歩いて行く。
その時だった。一発の銃声が聞こえた。その銃声は狭い廊下に響き渡った。しかし、桑田の耳にはそれは聞こえなかった。桑田は今まで感じたことがない痛みを感じていた。周りの風景だけがスローモーションで流れ、気が付いた桑田の目に映っていたのは廊下の床の部分だった。
『う・・・撃たれた・・・のか?』
床には大量の血が流れ出した。桑田は、倒れて初めて自分が撃たれたのに気が付いた。