表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
四天王  作者: 原善
第四章 住所のないラブレター
86/209

その13 母と子

 桑田がいる倉庫。桑田が一人左腕を押さえ苦しんでいた。

「関根さんが言ってた時間だ。ロクさんには動くなって言われたけど・・・」


 桑田はよろよろと立ち上がり、倉庫の入口の様子を伺った。

「銃声は聞こえない。ポリスの兵ばかり。大丈夫・・・」

 桑田は倉庫を出ると、廊下を一人で医務室に向かった。



 車庫前の廊下。バズーと石森が構え向かいあっている。互いにやや顔が腫れ、息が荒くなっている。

「名前・・・何って言うんだっけ?」と石森。

「ああ?バズーだ!」とバズー。

「ふざけた名前だな・・・だが始末したら、俺の背中にお前の名前を入れてやるよ・・・ありがたいと思え。」

「ああ、なんなら俺が入れてやるよ・・・てめぇの尻になっ!」


「ふふふ・・・小僧が・・・」

「ふふふ・・・」

 今度は、互いに蹴り合いを始める。互いのキックを紙一重でかわしたりガードする両者。



 ポリス地下3階SC整備室。タケシとヒデらはポリスの屋根付きのSCを見つけると、SCにキーが付いてるのを確認する。

「こいつ動きます!」とヒデ。


 すると、隣の整備室からタケシの兵が一人入って来る。

「隣にも、ジープタイプが・・・実弾もそのままです。」

「ヒデ、2台に分かれよう!ヒデはこいつに、俺は奥ので上がる!」

「こんなポンコツでですか!?地上のストラトスは?」

「残念ながらもうない・・・恐らくこっちの方が楽に逃げれるよ。」

「はあ・・・?」

 タケシは早坂を連れ、奥の整備室に入って行く。


「こっちも行くぞ!」

 ヒデは他の兵2人をSCに乗せてSC用シャフトに入った。



 P6指令室。松井が何かに気づいた。

「司令!14車両用エレベーターが作動!敵の逃走してる付近です。手動で地下から動いているようです。」

「現在、使用は全て停止してるよな?」弘士が叫ぶ。

「下からの手動と思われます!」

「敵逃亡の可能性あり!松井!14エレベーター地上部分に地上部隊を至急集めろ!」弘士が急ぎ指示を飛ばす。

「はい!」



 倉庫内でタケシと兵一人がポリスのジープ型SCのエンジンを掛けようとしている。

「俺らみたいに、エンジン掛けたら爆発しないよな?」


 タケシは恐る恐る車両の下部を見回った。

「よし!エレベーターを呼び出せ!」

 すると、突然倉庫のドアが開き2人はSCの影に身を潜め銃を構える。しかし、入ってきたのは関根とそれに連れられた直美だった。

「直美・・・」

 タケシは2人を見ると、SCの影から出てきた。直美もタケシに気づく。

「タケシ・・・」驚く直美。


「やはりここで保護されていたか?しかし・・・」

 タケシは関根の方を睨む。

「なぜ、こいつをお前が・・・?」

「顔見知り?そうよね狭い基地ですものね?」皮肉そうな関根。

「説明しろ!瑠南花!」

「約束よね?私たち親子を解放するって・・・?」


「えっ!?」直美は関根の顔を見上げる。


「親子だと・・・?馬鹿な・・・」とタケシ。



 バズーと石森。2人は細い廊下で寝そべり絡み合っていた。上になった方が殴り、更に逆転しては、上が下を殴る。

「しぶといんだよガキが!」関根がバズーの顔に拳を当てる。

「ああっ?もう根を上げたかじじぃ!」殴られても口が減らないバズー。

「誰がじじぃだぁ!!」


 石森がバズーの上になり、上からパンチを繰り出す。バズーは何発ものパンチを食らいガードが緩んできた。それと同時に石森の上からのパンチが徐々にバズーに当たり始める。石森も必死になり、繰り出すパンチが大振りになる。バズーはまともにパンチを食らい、意識がなくなりそうになっていた。石森も最後だとばかり、拳を大きく振り上げた瞬間だった。バズーは態勢を返し、石森の肩から首にかけて自分の両足を絡めた。

「くっ・・・」


 バズーは、徐々に足で石森を締め始め、最後に石森の頭の上下を掴むと左右に力任せに引く。“ゴキっ”という音がすると石森はそのまま動かなくなった。バズーもそのまま果ててぐったりした。


「はぁ、はぁ。こ、こいつ・・・つ、強えぇ・・・」

 バズーは起き上がると、バズーカと拳銃を拾い再びタケシを追い始めた。



 ポリス地下3階車両倉庫。

「直美は、大場の娘じゃないのか?姉貴に人質に取られた娘って・・・まさか直美が・・!?」と困惑のタケシ。

「そうよ・・・この子よ。」と関根。

「えっ!?」

 直美は関根の顔を再び見上げた。

「あなたが・・・私の・・・?」戸惑う直美。

 関根は改めて直美の顔を見つめる。


「びっくりしたわ、大場がこの街に来て、あなたを連れて私の医務室に検査に来たんだもの・・・」

「えっ?」

「慌てて部下に対応させたの。大場と顔を合わせないようにね・・・その時、私はすぐわかったわ・・・あなたが私の娘だと・・・」

「父は、母は死んだって・・・」

「そう言うでしょうね・・・」


「・・・」タケシは二人の会話を黙って聞いていた。


「ちゃんと説明して!」直美は関根に詰め寄る。

「あなたが3歳の時、ジプシャンに襲われ、あなたを奪われたの。あなたを殺さない条件に、私はここにスパイとして潜入させられたの。」

「どうして?」

「医師免許を持っていた・・・ジプシャンはそこに目を付け、ポリスに送り込んだの。大場は知っていた・・・ただあの人が、あなたを育てていたとは思わなかったわ・・・」

「まさか・・・父を殺したのは・・・?」

「そうよ・・・私よ・・・」

「えっ?」

「・・・」直美もタケシも驚く。



 タケシ軍襲撃の日。ポリス住居街。大場が暗殺された時。

「久しぶりね・・・大場・・・」と銃を構える関根。

「瑠南花か・・・?」

 大場は関根が銃を持ったのを見て後退りする。


「上の女の子は・・・直美ね?」

「スパイ活動をしているとは聞いていたが・・・まさかP6だったとはな・・・?」

「ジプシャンの策士としては、情報不足ね。」

「俺を殺しに来たか?」

「ジプシャンは脱走兵は銃殺。その家族も・・・」

「なら、直美も殺すか?」

「死ぬのはあなた一人よ、ジプシャンの裏切り者!なぜジプシャンを逃げたの?直美まで危険にさらすなんて!」

「仕方なかったんだ・・・このままでは直美が・・・」

 関根は銃を構え直す。


「言い訳はいいわ・・・あなたを殺せば、私と直美は解放される。総帥はそう約束した。」


「直美とここで暮らせばいい・・・」

「なに!?」

「もう、人質ではない。直美に全てを話し、2人でここでやり直すんだ!」

「馬鹿を言うな。他のスパイに私が狙われる・・・P6だけで何名のスパイが居ると思っているのよ!」

「直美に全てを話し、ポリスに事情を話せ。ポリスは守ってくれる・・・」

「ポリスは無力よ・・・ここでは子供一人守れない・・・例え地下の隔離房でもね・・・」


「いつまで、ジプシャンにいい様に使われるつもりだ!目を覚ますんだ!瑠南花!」


「黙れ!裏切り者が!」

 関根は大場に発砲した。大場は階段を転げ落ちていく・・・



「お前が大場を・・・」

 その時、タケシが関根に銃口を向けた。

「なに!?」


 関根も瞬時にタケシに銃口を向ける。しかし、早坂に察知され逆に発砲されてしまう。関根は、拳銃を握っていた右手の甲を撃たれてしまった。

「くっ!!」

 右手を押さえ、跪く関根。そこにタケシが関根の側にやって来る。

「逃がすと言う・・・約束だぞ・・・」と関根。

「大場は我が師でな・・・」

「何だと!」

「しかも、脱走兵!直美はその脱走兵の家族だ!話は別だな・・・」


 タケシは直美に銃口を向けた。

「あぁ・・・」尻込みする直美。

「ゲスがっ・・・」と関根。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ