その8 タケシの野望
タケシのストラトス。
『ポリス内に入ったのは18台です!』と丸田の無線。
「隊を街の中央に集結させよ!」
『了解!』
『タケシ様!内部と連絡が取れます!短波無線を使ってください!』と変わって石森の無線。
「分かった・・・聞こえるか?こちら第一SC隊隊長、土井タケシだ!」
雑音とエンジン音の中、耳を澄ましていると慌てた女の声が流れてくる。
『こちらは総帥直属部隊。この臨時無線を使うなんて・・・どういうつもり!?』
「瑠南花という者か?」とタケシ。
『そうだ・・・私は総帥直属の・・・』
「分かってる!これから地下に入る。手引きをしてくれ!」
『出来ない相談ね。私は・・・』
「事情は知っている。協力すればお前とその家族は開放してやる。」
『ば、馬鹿な・・・』
「本当だ!時間がない。信用してくれ!」
『信用してよいのだな?・・・わかった。わかるようにしておく。目立つようにな・・・』
「助かる!」
無線を切るタケシ。
「よし!石森!ヒデ!突っ込むぞ!」
P6指令室。
「ストラトス、北ゲートに入ります!」
「入れるなよ!」弘士が叫んだ。
ストラトス3台は、迎え撃つポリスSCも少なく、塀からの機銃を潜り抜けると、簡単にP6の北ゲートに突入した。ゲート内は先程のサンドシップの衝突により混乱していた。
「奴め、いい仕事してくれてる・・・」タケシが呟く。
その頃、ロクに異変が起きていた。昨日撃たれた傷口から出血が多くなっていたのだ。運転しながら必死に腹を押さえる。
「タケシめ・・・街の中に・・・アシカムは何してる?」
するとロクの車のそばに1台のバイクが近づいてくる。キーンだ。キーンはヘルメットのインカムで無線を送ってくる。
『大丈夫か?ロク?』
「そっちこそ、無茶してないか?」
『久々なんで勘を戻すのに苦労したよ・・・』冷静なキーンの声。
「タケシは、中だ!ダブルは?」
『追って行ったはずだ!どうする?お前は負傷してるだろ!?』
「俺らも行くぞ!」
『言ったらきかないよな・・・わかった!』
2台は並走して北ゲートに突っ込んだ。
タケシのストラトス。ストラトスは軍事施設から、住居街に入っていた。タケシは運転しながら出撃前の事を思い出していた。古川基地の駐車場。タケシの部隊の兵50名程の前にタケシがいた。
「我々は、これよりP6に再び襲撃を仕掛ける!しかし、最初に襲撃を仕掛けた時の戦力は3分の1にも満たない!だが俺は総帥の座はいらない!欲しいのは仲間を死に追い込んだ雷獣の首だ!」
そうタケシが叫ぶと、兵全員が手を上げタケシに答える。
「そう兵の前では言ったものの・・・俺が本当に知りたいのはP6の謎・・・親父が恐れたこのP6の謎だ・・・それが分かればいい・・・」
『タケシさま!間もなく街の中心です!各車集結しつつあります。』石森の無線。
「仲間が何らかの手引きをする。各車見落とすな!」
『了解です!』
ヒデのストラトス。街の様子を見ている。
「久しぶりのP6内・・・なんらあの時と変わっていない・・・さて、タケシさんよ?雷獣を背にしてどうするんだか?」
P6指令室。
「敵SCは街の中心に集結しつつ・・・」と柳沢。
「中心だと??うちのSC部隊は?」弘士が再び席を立つ。
「山猫が追っていますが・・・」と松井。
「敵艦は?」
「敵シップ完全に圏外です!」
「黒豹、風神は?」
「北ブロックから敵SCを追っています。」
「アシカムを戻せ!外はレヴィアだけで十分だ!」
「なぜ、奴ら街の中心なんだ?」と久弥が顎ひげをさわる。
「しかも街に入って攻撃はしていません・・・」と曽根。
「我妻!守備隊はどうなってる?」
「間もなく近くに到着します。」
「SC隊と連動してこの区域を封鎖する!奴らを街から出すなよ!」
「ま、まさか・・・」
久弥は急に大声を出した。
「どうされましたか?」と曽根。
「奴ら・・・地下に入りに来る・・・」
「まさか・・・」と弘士。
その時、指令室に聞きなれない警報が発報音がなる。
「なんだ?」
「火災発報!第88エレベーター!」と桑田。
「エレベーターは全部下に降ろしたはずだ!」
「モニター出します!」
中央スクリーンに映し出されたのは煙だらけの白いだけの映像だった。
「ん?」
「火災か?」と弘士。
「発報の種類は?桑田?」
「すいません!・・・煙感知器でした・・・」
「火災ではないのか?」
「すぐ確認させろ!」
「はい!・・・あの・・・88って・・・?」言いづらそうな桑田。
「なんだ?」と曽根。
「この指令室の真上なんですが・・・」
「ん?」
「・・・」みんなが真上を向いた。
「私・・・見てきます!」桑田は席を立ち上がる。
「おい!」
「平気です!見るだけですから!」
「なつみ!はい!これ!」
松井は桑田の席にあった白い拳銃、ワイルドマーガレットを放り投げた。
「サンキュー!」
「弾込めた?」と松井。
「大丈夫!」
「桑田!兵に行かせる。席に着いてろ!」
「我々のほうが早いです!しかもスパイかも!?」
「はぁ?」
「自分の疑いは自分で晴らしますよ!曽根参謀!」とウインクする桑田。
「お前なぁ!命令が・・・」
「銃は持ったのか?」と久弥。
「は、はい!」
「偵察だけだぞ!無理するなよ!」
「了解です!」
桑田は銃を腰に装着すると、急いで指令室を出て行く。
「おやじさん・・・」曽根が渋い顔で久弥に詰め寄る。
「言ったら聞かない。ロクの妹だよ・・・弘士ここを固めろ!敵は白兵戦で来るぞ!」
「分かりました!全員!司令室のドア周りを固めろ!各ドア電子ロックを掛けろ!」と弘士。
タケシのストラトス。タケシらはポリスの街の中心にいた。何人かは無防備にも車を降りている。
「なんだ、誰も出てこないじゃないか・・・」と早坂。
「人ひとりいないのか、この街は?」と丸田。
「あそこだ!」とタケシ。
タケシが指す所に煙が立ち込めていた。
「煙?・・・発炎筒か?」と石森
「あそこは・・・?」とヒデ。
「行くぞ!ついて来い!」タケシが叫ぶ。
「後続は我々が・・・」
「早坂、任せるぞ!」
タケシらは再びSCに乗ると、その煙の立つ所へSCを飛ばす。
P6指令室。
「敵SC動き出しました!」と柳沢。
「どこだ?」
「北ブロックに向かいました!」
「なぜ軍事施設だ・・・味方SCなにやってんだ?」
「今度は、街の外に逃げるのか?妙だ・・・?」と久弥。
死龍は街の中の建物に身を潜めていた。そこにSCのエンジン音が聞こえてくる。死龍は窓からその方向を覗くと、先頭にストラトスが走ってくるのを確認した。
「ストラトス!タケシか!?」
死龍はブーツの中に隠していた小型拳銃を取り出すと、そのSC隊らが通り過ぎるのを待って路上に飛び出した。すると最後尾のジープタイプのSCに向かって拳銃を発砲した。弾は機銃を構えていた敵兵に命中するが、助手席に乗っていた兵に気づかれ、バズーカを撃たれる。
死龍は慌てて隠れていた建物に隠れたが、バズーカの弾の威力が大きすぎて、建物ごと吹っ飛んでしまう。爆風に吹き飛ばされる死龍。ぐったりして動けなくなってしまう。