その21 ソーラーキャノン
P6指令室。突然ドアが開き、車イスに乗ったロクとそれを押す桑田が入って来る。
「ロク!」
「ロクさん!」
「ロクさん!?」
「怪我大丈夫なんですか!?」
驚いたのは指令室のみんなだった。さっきまで意識不明の男が急に車椅子で現れたのだから。指令室のほとんどがロクの周りに集まり始めた。
「戻りました!心配掛けました!」とロク。
「だ、大丈夫なのかロク?重症と聞いたが?」と曽根参謀。
「なんとかしました!」とロク。
「出た出た・・・しかもちょっと新しいパターン・・・いえいえ本人このように強がってますが、まだ傷口はかなり痛いみたいですよ?」とロクの腹の傷口を触ろうとする桑田。
「おいおい桑田・・・これでも麻酔が効いてるようだし・・・本当の痛みはこれからじゃないですかね?」
「呑気に人事のように言うな!」と曽根。
「じゃあ、まだ寝てなきゃ駄目だろうが!」と弘士。
「死龍らが無事なのを確認したらすぐ戻りますよ。」
「さっきは、食堂にいたぞ。」と弘士。
「死傷者ゼロ・・・P5のクルーたちに感謝されたよ・・・」
曽根の言葉が痒いくらいにロクに優しく聞こえる。
「そりゃどうも・・・」
「だがテスト走行でP5まで往復600キロ・・・聞いた事がない珍事だぞ!」曽根は呆れてロクを睨みつける。
「その責任は取ります。桑田を連れ出した事も・・・」
「その件は、死龍に感謝しろよ!」と弘士。
「はぁ?」
「死龍が駄目な後輩に代わって全責任を取ると!」
「死龍・・・いつまでも後輩扱いか・・・というか管轄違うでしょ!?」ロクは口を尖らせた。
「これでいいかな?分かったら少しはベットで安静にしてろ!」と弘士。
「はいはい・・・桑田?地下6に戻るぞ!」
「いいんですか?もう?」
「把握した・・・」
「では・・・司令すいません!」一礼する桑田。
「ああ・・・」
指令室を出て行く2人。
「あれ!?桑田の入室は誰が許可したんだ!?」と曽根。皆が顔を背ける。
エレベーターに乗るロクと桑田。
「桑田?」
「はい?」
「死龍を連れて来てくれないか?話がある・・・」
「地下6にですか?」
「俺のID持って行け。これで入れるだろ?」
「はい・・・」なぜか暗い顔の桑田。
P6北ブロック軍事施設倉庫。虹の三角1番機から、物資を出す作業をたくさんの人々がしている。指揮は高橋技師長。そこへ久弥がやって来る。
「順調か?」
「おやじさん!?」作業を止める高橋。
「ロクが撃たれたと聞いた・・・」
「心配要りませんよ。あいつが銃弾で死ぬ奴ですか?」
「死龍らは?」
「地下で飯でも食ってるんでしょ?随分激戦だったらしいですから・・・」
「こいつを見れば分かる・・・」
久弥は被弾した虹の三角を見上げた。
「このソーラーキャノンはどうするつもりですか?予定通り街の四方に・・・?」と高橋。
「こいつをレヴィアに取り付ける。」
「レヴィアにですか?」
「計画通り街の四方に・・・と思っていたが・・・6番から10番艦はすでに艦首に取り付ける準備はしている。」
「移動砲台・・・と言う事ですか?しかしそれでは・・・」
「わかっておる・・・問題は太陽光だな・・・?」顎髭を擦る久弥。
「こいつみたいに側面全部がソーラーパネルなら、大量の太陽光が吸収出来ますが、レヴィアでは少し難しいのではないでしょうか?なんせ今は、自分を動かせる太陽光を取り寄せるだけのエアーブースターだけで精一杯ですから・・・それにこれ以上、甲板にソーラーパネルを付けるのは難しいです!」
「いっその事、こいつに取り付けるか?」久弥は虹の三角を見つめる。
「可能ですが、こいつはP5の物です・・・死龍がなんと言うか?」
「死龍か・・・?」
「一番巨大のキャノンは、正直虹からどうやって取り出すかは、まだいい策がなく。このまま取り付けたら私ら技術班にしてみれば楽なんですが・・・」
「死龍に話してみよう!」と久弥。
「お願い出来ますか?」
P6地下6階ポリス専用医療室。ロクの寝ているベットに死龍がやって来る。
「どこをうろついてる?その怪我で・・・さっき、皆でここに来たが居なかったぞ?」
「すまない・・・」
「まあいい。それで?平気なのか?怪我は?」
「これか?まあさっき医者に怒られたがな。1ヶ月はここに入院だとよ!」
「まあ暫く休む事だな!」
「そうもいかないさ!」
「ん?」
「タケシはまたここに来る!」
「こんな時くらいは、戦闘や作戦を忘れなさい!」
「ふふふ、その母さん口調変わんないね?」
ロクは死龍を見て苦笑いしていた。
「ロク!真面目に聞きなさい!」
「それそれ・・・イタタ・・・」ロクは笑いが堪えきれなく腹を押されながら笑っている。
「もう・・・」
「それでだが・・・タケシではないが、ストラトスの1台を仕留めた。このまま引き下がる相手ではないと思うが、死龍の意見を聞きたい?」
「わかった、わかった・・・仕事熱心なのはいいが、まずその体を直す事だ!」
「1ヶ月もか!?奴はそんなに待ってくれないぞ!」
「相変わらず頑固ね!」
そう言うと、死龍はロクの腹を軽く叩いた。ロクは思わずうなった。
「うっ!」
「これでジャガーに乗れと?」
「おいおい・・・そっちこそ手加減知らないな・・・」
「タケシは任せなさい。明日帰る予定だったけど、2、3日は足止めくらいそうよ。」
「ん?・・・虹か・・・?」
「2番機ね・・・特に酷いのは・・・まあ久々の里帰りですもん、こっちもゆっくりするわよ。」
「タケシの件は、皆に話しておいてくれ。」
「分かったわ。ちゃんと寝てんのよ!」
「ああ・・・」
すると、病室にダブル、キーン、バズーが入って来る。
「お邪魔だったかな?」
ダブルが二人の会話に何かを感じたのだろう。部屋に入るのに一度躊躇いを見せる。
「私の方は、用は済んだわ。じゃあねロク!」
「おお・・・」
「意外と元気そうで、安心したぞロク!」とキーン。
「こいつがそう簡単に死ぬかよ!」とバズー。
そう言うと、バズーもロクの腹を軽く叩いた。
「うっ・・・お前らな・・・」
「心配して損したよ!さあみんな!仕事に戻るぞ!」とダブル。
「なんせ、虹から貨物を降ろすのに大変でな。誰かのせいで!」
「俺じゃねぇし・・・」
「20ミリ弾か?ジャガーの装甲を貫いたのは?」とキーン。
「ヒデの装甲車だよ。」
「あいつ、まだうろついてんのか?そう言えば聖が言っていたのもヒデ・・・まさか・・・?」とダブル。
「ああ、奴の事だ。そう言えば、あいつに撃たれたのは、これで2度目になっちまったな・・・」
ロクは、撃たれた腹を摩った。
ジプシャン軍古川基地。タケシがP5に持ち帰ろうとした新型の船に、弾薬や食料を積み込んでいる。それをヒデと丸田が遠くから見ていた。
「いいのか?無断で?」
「さあな。俺らの責任じゃねぇし。」
「確かにそうだが・・・」
「さっきの話じゃ、ジプシャンも面倒臭いな。」
「はぁ?」
「タケシだツヨシだ・・・次期総帥争いに巻き込まれんのはご免だ。」
「何か、あの女に遊ばれているような気がしないか?」
「それよ。別に今のままでいいと思うんだが・・・」
そこへ石森がやって来る。
「2時間後には、ここを出る。」
「夜に出るのですか?」
「テスト走行も兼ねてだ。」
「はあ・・・」
「それと・・・嶋のストラトスはヒデに乗ってもらう事になった。」
「俺がですか?」
「タケシ様が、お前の装甲車の運転を高く評価した。どこかでドライバー技術を習得したのか?」
「我流です!」とヒデ。
「ああ、こいつ昔からですよ。」と丸田。
「ならば、明日からストラトス隊だ。いいな?」
「分かりました!」
石森が去っていく。
「いいのか?ヒデ?死人のSCだぞ?」丸田がヒデの顔を伺った。
「くくく・・・ストラトスか・・・このマシーンなら、他の四天王とも互角に戦える・・・」ハンドルを握り不敵に笑うヒデ。




