その16 十字魚雷
ロクのジャガーの正面にはヒデの装甲車、後方からストラトスの3台。ジャガーはまさに四方を囲まれる状態だった。
「今度は後方からか!?しかも正面に装甲車・・・装甲車は囮か?なら・・・」
ストラトスの3台はジャガーを囲むように並走する。
「囲んだぞ!逃げ道を塞いだぞ雷獣が!今度こそ・・・行くぞ嶋!1番!」とタケシ。
『おう!』
嶋のストラトスがジャガーの右横を突く。
「右から!なら・・・」
ロクはあえて先程の反対の行動を取り左へ逃げる。そこへ後方にいた石森のストラトスがハンドルを左に切ったジャガーの左側面を突く。その時、ロクは更に左にハンドルを切った。慌てたのは石森だった。ロクのジャガーが正面から突っ込んで来たのだ。石森は慌てて回避する。タケシも慌てた。本来雷獣が回避するところに雷獣は逃げて来なかったのだ。
「後ろ!貰ったぞ!」
『何っ!?なぜここにぃぃー!?』
ジャガーが回避したのは、一番最初にジャガーを突いて回避運動を行っていた、嶋のストラトスのすぐ後ろだった。嶋は慌てて回避しようとした時だった。
「油断したな!?ストラトス!」
ロクは運転席の窓から、嶋のストラトスの右後輪に向かって拳銃を撃ちまくった。何発かは命中する。バランスを取られハンドルを取られる嶋。その時、右前輪のタイヤが衝撃で外れる。
「くくく・・・天罰さ・・・」
ヒデは装甲車の運転席からその様子を見て声を発した。嶋の車は凄いスピードで横転していく。
「嶋っ!?」
『嶋ぁーっ!!』
タケシと石森は嶋のストラトスが激しく横転するのを目の当たりにする。
「少し味方のフリでもしておくか?丸田!機銃だ!」
『あいよ!』
丸田が装甲車の上部にある機銃を、雷獣に向け撃ちまくる。乱射だったが、その1発がジャガーのフロントガラスを貫通していた。
「くっ・・・」
弾はロクの右腹に命中していた。拳銃を握っていた右手を握っていたままで腹を押さえ込む。座席には大量の血が流れはじめていた。
「あ、あらら・・・こ、これは・・・やばいかな・・・?」
『タ、タケシ様!嶋のストラトスがー!?』石森の無線は慌てていた。
「わかっている!ヒデ、もう一度奴を追い込む!」
『嶋さんはどうするんですか?早く救出しなければ、SCは炎上してしまいます!』
ヒデはあえて本意ではない事を言葉にしていた。
「石森?雷獣は?」
『逆方向に逃走しています。銃弾は浴びせてる様子です。あのスピードです。これ以上は追えません!』
「逃がしたか・・・嶋の救出にあたる!急げ!」
『了解!』
「じ、十字魚雷も通用しないのか・・・雷獣め・・・!」
ロクのジャガー。ロクは苦しそうに右脇腹を押さえている。
「山中・・・艦長・・・き、聞こえるか?」
『こちら2番機山中!あんた無事か?』
「タ、タケシは引き付けた・・・だ、脱出しろ!」
『了解した!そっちはどうする?』
「はぁ・・・迂回してP6に向かう・・・向こうで合流しよう・・・」
ロクは無線を切ると、P6に向けてアクセルを踏んだ。
「こ、こんなとこで・・・く、くたばれるか・・・」
タケシと石森が横転している嶋のストラトスの側にいる。中にいた嶋は既に息絶えてる。
「し、嶋・・・」悲しみを堪える石森。
「雷獣が・・・仇は取らせてもらうからな・・・」タケシが唇を噛み締める。
その中、ヒデだけが薄ら笑みを浮かべている。
死龍が乗る虹の三角1番機。死龍と桑田が機銃でタケシのミサイルSC隊を応戦していた。すると急に敵のSC隊が後方に引き上げて行く。
「敵が引き上げてるだと?」インカムに答える死龍。
『死龍さん!後方の2番機も動き出した様子です!』
「やってくれたか・・・ロクのジャガーはどうした!?」
『こちらでは確認できません!』
その無線に隣の機銃にいた桑田の表情は、不安を隠せない。
「分かった。戦闘配備を解く!警戒態勢!後方に気をつけろ!まだタケシがいるんだ!」
『了解!』
「P6まであと40キロだ。速度落とすなよ!まだ基地はあるぞ!」
『後方に黒豹確認!真っ直ぐこちらに向かっています!』
「ロク・・・無事か!?」と死龍。
「よかった・・・」ロクの確認に死龍も桑田もホッと胸を撫で下ろしていた。
「桑田!ここはいい!コクピットに戻れ!」
「了解!」
虹の三角1番機コクピット。死龍、桑田が窓から正面を見ている。するとコクピットの窓からロクのジャガーが虹の三角の前に飛び出してくるのが見えた。ジャガーは運転席側の窓を開けるとロクの右拳が出てきて親指を立てているのが見えた。
「ロク・・・」
「ロクさん・・・」
その時、ロクからコクピットに無線が入る。
『し、死龍・・・先に行く・・・応援を呼んでく・・・』
ロクの無線の声の異変に気づく死龍。。
「どうした?ロク?」
『平気だ・・・先に走ってるぞ・・・』
車内のロクは苦悶な表情に、青白い顔でジャガーを運転していた。ハンドルを握る手も感覚がなく、目も虚ろだった。




