その15 ロクVS三方魚雷
死龍はロクの無線に答えず唇を噛み締めていた。
『どうした?死龍!?』
「・・・」無言の死龍。
『死龍!?』
死龍は意を決して無線に向かった。その時別の無線が飛び込んできた。
『山中です。2番機がこの先で横付けします!』
「・・・」厳しい顔の死龍。
『なっ・・・バカな・・・』とロク。
『後方のタケシ隊だけは食い止められます!死龍さん、先に行って下さい!』と山中。
「た、頼む・・・山中艦長・・・」苦肉の決断の死龍。
『仲間を見捨てんのか!死龍!』ロクが無線に割り込む。
「ロク・・・それしか方法は・・・ないの・・・」
『なら俺も残る!奴に・・・タケシに背は向けれない!』
『山中です!ロクさんには1と3の護衛をお願いします!』
『前方のミサイル隊は、弾がなければただのSCだ。虹の三角だけで出来る。しかしタケシのストラトスは別だ!あんたがその覚悟なら俺もここに残る!いいな死龍!?』
「しかし・・・」
『たまには俺の言うことも聞けよ・・・な?』
「ロク・・・」
『死龍?桑田を頼んだぞ!山中艦長!頼む!』
『あんたも噂通り頑固だな・・・ああ、任せてくれ!』と山中。
「ロ、ロクさん・・・」
無線を横で聞いていた桑田は心配していた。
「死ぬなよ・・・ロク!」無線を握る死龍。
『なんとか・・・する!』
ロクのジャガーは最後尾を走っていた2番機の後ろにまわるためスピードを落とす。すると虹の三角2番機は山と山の間が狭い箇所を見つけると、横付けに停車し道を塞いでしまった。
タケシの後方部隊。ヒデらの装甲車もいる。
『1台が道を塞いでしまいました!!』と嶋。
『正面に雷獣もいます!』と石森
「仲間を逃がすつもりか!?しかし自ら逃げ道を断ったか!?雷獣!?敵は1台だ!逃がすなよ!討ち取れ!」
ロクのジャガー。ジャガーの正面にはタケシの部隊が迫ってきた。ロクは彼らの砂煙を見ている。
「15台と装甲車が1台?装甲車はヒデか?道幅は狭い・・・ストラトスだけここから引き離す。・・・さて、行きますか。」
ロクは再びギアを入れると、壁になっている2番機を背にしてタケシの隊に向かって走り出した。
「山中艦長!タケシのストラトスを連れて行く。後は機銃で応戦してくれ!ある程片付いたらそこを脱出するんだ。」
『了解!相手はタケシだ!無理するなよ!』
「俺の前は走らせないぜ。」
ロクは無線を切ると、タケシのストラトスの正面に向かった。
タケシはジャガーが突っ込んで来るのを確認する。
「行くぞ!三方魚雷だ!!」
『おう!』
『おう!』
ストラトスの3台が正面からジャガーを囲み込んだ。
「この間の技か!?同じ技を!?」
ロクはその時、キーンがバイクを整備している時の事を思い出していた・・・
「後方から?しかも3台で?」
「そうだ!その時に迂闊にも側面を取られてしまった・・・キーン?なんか知ってるか?」
「それは、第二次世界大戦時に三機の戦闘機と魚雷だけで、駆逐艦や巡洋艦などの足の速い艦艇を沈める戦法だな?」
「さすが物知りのキーン!で?魚雷?艦艇?なんだこれって飛行機の戦法かよ?」
「そうだ!それをこの陸戦で、しかもSCで行うなんて・・・タケシはとんでもない奴かも知れないな・・・?」
「どうすれば防げる?」
「後方から来た場合は、逃げ切ればいい。ジャガーの速度なら問題ない。しかし・・・」
「しかし?」
「正面から来た際は、なかなか難しいだろうな?なんせカウンターだからな・・・」
「そうか・・・」
「しかし、所詮は人の作った策・・・しかも舞台が違う・・・どうすれば・・・?」
「まあ、なんとかする!」自信満々のロク。
「最初の一撃はどっちから来た?」
「右だったな?」
「で?どっちにかわした?」
「普通は左だよな?」
「それで後方から来たSCに、左を突かれたか?」
「そうだな?左だ!」
「そしたら右に逃げ左を取られた・・・だろ?」
「そうだ。よくわかったな?」
「人は・・・嫌、動物も昆虫すら、危機を回避するための本能があると言われる・・・」
「本能?あんまり難しい言葉使うなよ!」渋い顔のロク。
「ふふふ・・・ロクが逃げる際って、その場からいち早く脱出するために・・・右、左、右とか、左、右、左とか・・・そんな風に逃げないか?」
「まあ、言われればそうだな。俺もそうするかも?」
「敵はこれを読んでいる。お前の無意識をな・・・?となればこの裏を読め・・・」
「右から来たら同じ右にか・・・?」
「うん!そうすれば2回目の攻撃が出来ない・・・だろ?」
「右、右、右ってただ回るのも手だな!」
「確かに敵の3番手の攻撃は翻弄されるはず!」
「本能、無意識か・・・?そこまで奴等は・・・?」厳しい顔のロク。
ロクのジャガー。
「わざと、罠に落ちたように見せる・・・やってみるか?」
ロクはギアを下げ、スピードをやや落とし3台のストラトスの中心に入る。
「スピードが下がったぞ!行けっ!1番!」とタケシ。
『おう!』
嶋のストラトスがジャガーの右サイドに体当たりを掛けた。
「来たか!?なら・・・」
ロクは嶋のストラトスの正面にハンドルを切る。
その行動に嶋は慌ててハンドルを切る。
「こ、こいつ!俺たちの動きを・・・!」
「偶然か!?雷獣め・・・よし、次2番、石森!」戦況を見つめるタケシ。
『おう!』
嶋に続き、石森のストラトスがジャガーの左を突く。
「やはり・・・ならっ!」
ジャガーはまたしても、石森のストラトスの正面に立つべく左にハンドルを切った。
「雷獣が・・・やはり、こちらの動きを・・・なら・・・ヒデ聞こえるか!?」
『はい!』とヒデ。
「お前の装甲車で雷獣の正面を押さえろ!」とタケシ。
『分かりました!正面で良いのですか?』
「そうだ!正面だ!」
『了解!』
「嶋、石森。ヒデが奴の正面を押さえる。例の奴をするぞ!タイミングはヒデに合わせる。」
『分かりました!』と石森。
『では私が後方に回ります!』と嶋。
「よし!行くぞ!見てろ雷獣!“十字魚雷”だ!」
ジャガーの四方から3台のストラトスと装甲車が近づいく。