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四天王  作者: 原善
第一章 プロジェクトソルジャー
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その6 隠し銃

 予想外の出来事だった。ロクたちの前に現れたのは山口たちではなかったからだ。しかもこれから保護しようとしている、家族の一人までもが人質に取られている。男は銃を構えたまま、横にいたロクにボヤいた。


「俺たちを騙したのか?わざわざ三発の銃声の演出までして・・・お前ら下手な芝居を打ちやがるな?」

「奴とは関係ない。じゃあなぜ俺まで手を上げているんだ?」言い訳のロク。


 二人の会話に大男が声を荒げる。

「何ヒソヒソ話してるんだぁ!?さっさと銃を捨てろ!」


「ここは、奴のいう通りに銃を置いて下さい!」とロク。

「いちいち指図するな。小僧が・・・」

 男は渋々ライフルを遠くに放り投げて、両手を高々と上げた。


「荷台の小僧も出て来い!そして全員テント前に集まれ!」

 ロクと男の家族の5人は、テント前の地べたに座らされた。


 ふと、ロクがトラックの向こうに目をやると、崖の上から山口が顔を覗かせている。ロクは大男に気を取られないよう目線で合図を送る。

 山口の顔が消えたかと思ったら、拳大の石がトラックの屋根めがけて投げられた。


「ゴン!」

という音に、大男の視線がトラックにそれた瞬間、一発の銃声が荒野に響き渡る。


 大男の手から放り出された拳銃。何が起きたのか理解されぬまま空になった手に目をやる大男。慌てて拾おうとしたが、崖から大男に銃を構えた山口が素早く走り下りてきた。


「はーい、それまでぇー!動くな!」大男を牽制する山口。

「お、遅いぞ・・・山口!」

 一瞬の出来事に驚いたのは大男だけではなかった。茫然と山口とロクに目をやる男と家族たち。そこにはロクが小型の銃で、大男を狙い撃ち抜いていた姿だった。


「すいません!先客がおられたので・・・」

 そう言うと、大男の顔を拳銃のグリップ部分で殴りつけ、昏倒させてしまった。


「山口!そいつを縛っておけ!アキラはこいつのSCを調べて来い!シンは周りを警戒しろ!他にこいつの仲間がまだいるかもしれないぞ!山口もこいつを縛り終わったら警戒に当たれ!」

 次々と合流してきたアキラ、シンにも指示を飛ばすと、男の家族の元にゆっくりと歩み寄るロク。


「わかったろう?荒野は危険なんだぜ?」

 ロクは、男に“直美”と呼ばれた怪我をしている少女に、どこからか取り出した包帯を手に持ち近寄って行く。

 

「腕を見せてくれ?手当てをする!」

「大丈夫!こんなのかすり傷よ!」


 直美はロクと目も合わすこともせず、避けるように弟や妹のそばに行き、二人を抱きしめた。二人は安心したのか大声で泣き出した。

「もう大丈夫よ。泣かない泣かない・・・」


「・・・どこに隠していた?」

 男が自分の家族を見守りながら、横目でロクに問いかける。

「ん?何が?」惚けるロク。

「拳銃だよ?」

「・・・足首だよ!」

「小僧、拳銃を何丁持ってやがるんだ・・・?」呆れる男。

 ロクはズボンの裾をめくり上げ、足首にある拳銃ホルダーに小型の銃を収めると笑顔で男に話しかけた。


「それじゃあ、保護?受諾してくれますね?」とロク。

 男は長い髪の毛を掻きむしり二、三度頷いた。

「勝手にしろ!ただし条件はあるからな!」

「保護成功なり・・・」ニヤリとするロク。



「隊長!こいつ・・・何にも吐きませんよ!?」

 山口は目出し帽の男の胸ぐらを掴み、ロクに報告する。男たちのテントは既にシンやアキラによって畳まれており、男の家族たちはロクの監視の下、移動の準備を終えていた。


 ポンチョに大き目のハット姿に戻っていたロク。

「そいつはジプシャンだろ?しゃべらないはずだ。しかも、一人でここまで追ってくるような奴だぞ。無理無理・・・」諦め顔のロク。

「こいつ、昨日の連中じゃないんですね?」と山口。

「昨日の連中ならすぐ吐くだろうな~装備から見て、こいつはそんな素人じゃないぜ!」


「おい?トラックは置いて行くのか?」

 二人のところにあの男がやって来た。

「追手が来ている。トラックでは追いつかれる。後ですぐ取り来させる。今は必要なものだけにしてくれ。」

「こいつはどうしますか?」

 山口が大男をライフルで小突いた。

「帽子を取れよ!」


 大男の頭から目だし帽を外すと、すでに山口に殴られただろうたくさんの痕が顔にあった。その様子を見ていた男が顔をしかめた。

ロクは男の様子を横目に山口に命令をする。

「いい面構えだな?たった一人で来るなんて。ジプシャン軍の事は色々知ってそうだな・・・お前のトランクにでも入れておけ。連れて帰る。P6でたっぷり聞かせてもらう事にしよう!」

「怖い怖い・・・」

 ロクの冷めた言い方に、男はふざけてそう口に出した。

「そっちの準備はいいのかい?」男に問うロク。

「ああ・・・」男は高い空を見つめた。



 ロクたちP6のメンバーと男の家族は、ロクたちの車が置いてあるところまで移動してきた。山口たちは後方をやたらと警戒している。そんな中、男はロクの黄黒の車体を見て絶句する。


「なんだ!?こいつは?これもソーラーカーなのか?そしてこの低さ・・・」

「そうだが・・・」ロクは頭を掻いた。

「パネルがないじゃないか?ソーラーパネルが・・・まさかガソリンで動くタイプか?」


 男は前後左右とロクの車を舐めるように覗き込む。

「ま、まさか・・・ボディ全部がソーラーパネルで、その上に太陽光だけを通す特殊なコーティングを加工しているんだ。拳銃では穴1つ空けれないのさ!」

「ふーん、時代って奴だな・・・?怖い怖い・・・」

「少し狭いが、こいつに乗ってもらうぜ!」

「家族全員か?」

「そうだ。無理すりゃ狭いが5人は乗れるんだぜ!」


「隊長!北方向に砂煙確認!急いで下さい。来ます!装甲車です!」

 アキラが手を向ける。その方向に目をやると、まだ遥か彼方だが砂煙がハッキリと確認出来る。


「来た道は帰れないか・・・迂回して、内陸のルートで戻ろう!全員急げよ!」

 ロクは男の家族を自分の車に乗せると、急ぎその場を後にした。



 車内は後部座席に男と幼い子供二人、助手席には直美が座っている。

「大場だ!」

 運転中のロクに、後部座席からいきなり男は名乗った。

「ロ、ロクだ・・・」


 運転席から後ろを振り返り手を差し伸べ握手を交わす。

「上から、直美、勝也、雨音あまねだ。」

「よろしくな!」


 ロクは助手席の直美に片手を差し出し挨拶するが、直美はロクに背を向けて窓から外を見ている。返事も無かった。ロクは渋々と出した手を引っ込める。

「・・・しかし、あんたいい腕だったな?あの男の拳銃だけを撃ち抜くなんて神業だな?あいつは怪我ひとつしてなかったじゃないか・・・?」

「そりゃどうも・・・」

 褒められるのに慣れてないロクは返事に窮する。重ねるように大場の質問が来た。


「あんた・・・四天王・・・だろ?」


 大場の言葉に車内が静寂が走る。直美までもが振り返りロクの横顔を見つめている。大場にバックミラー越しに返答するロク。


「・・・ああ、俺が四天王だ!」

  驚きに言葉を失う大場と直美だった。

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