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四天王  作者: 原善
第三章 死龍覚醒
59/209

その9 虹の三角

 ポリスが設立されて20年余。未だ現役で走るポリスの大型輸送車を人は“虹の三角”と呼んだ。正式名称は当初あったが、今では誰もその名前を覚えていない。三角柱をそのまま横にし、その底に大型のタイヤを108つ付けた大型輸送車。車と呼ぶには既に想定外の大きさで、長さは70メートルにも及ぶ。今のポリスの技術からすると、かなりクラッシックで単純な造りでもあった。60度に傾いた側面は太陽光を取り入れやすく、左右の側面前面にソーラーパネルを貼り付けている。大型の箱物にしてはエアーブースターを取り付けているのでもなく、タイヤ走行という走りはまさに“奇跡”だった。


 虹の三角の由来だが、虹を見ることは奇跡と言われたこの時代。まだ一度も大破したことがなく、奇跡の三角・・・そして虹の三角と呼ばれるようになった。主にP5からは鉱山や武器を運ぶ事が多く、またP6からは引き上げた沈没船の鉄くずや食料を運ぶ事が多い。当初、ポリスには同じタイプが5機存在したが、2機は現役を退き、今は既に3機のみとなっていた。



P5のほぼ中心部分に巨大なコンテナが3棟。所々被弾したのか、大なり小なりの穴がいくつか開いている。各棟の中には、虹の三角が1機、今まさに発進しようとしていた。その一機の前面の三角の一番上の部分にガラス窓があり、どうやらここがコクピットになっている。その窓の下には『2』のマーキングがされていた。その2のマーキングの下が左右に開いていて、5メートル程の階段を設置したトラックが2台、虹の三角に繋がっている。そのトラックの階段をたくさんのジプシーたちが登って虹の三角に入って行く。コクピットの更に上には、三角の峰の部分に10メートルの間隔に渡って機銃が設置されている。



 2番機虹の三角コクピット。約10メートル平方の室内のコクピットには死龍と5名ほどの兵が座っていた。死龍が慌しく激を飛ばした。

「ジプシーの乗り込みはどうだ!?」と死龍。

「8割ってとこです!」インカムの男が振り返る。

「急がせろ!他はもう出れるぞ!乗員のジプシーはなるべく虹の中央に集中させろよ!上部を使っても構わない。この艦だけは絶対に守るからな!」

 死龍の言葉でコクピット内の兵は皆緊張する。



 隣の棟には1番機がスタンバイしている。同じコクピットには山中艦長が座っている。

「鉱山物の積み込み終了しました!」

「2番機は?」

「もう少し時間が掛かる様子です。」

「500名だからな・・・3番機は?」

「部品は全て積み込み完了です!」

「今回は2番機が優先だからな!3番機の富久にも伝えろ!敵の前線突破までは2番機を中心に逆V字態勢を取る!いいな!?」



 P5北ゲート前。ボブを中心に20台のSCが揃っていた。ボブは20名の兵を前にして声を上げた。

「いいか!2番機だけは死んでも守るからな!」



 ジプシャン軍P5前線基地指令室。大広が部下の報告を受けていた。

「妙な動きですか?」と大広。

「はい。恐らくP6への定期便かと・・・?」

「タケシのミサイルSC本隊がいないのを、敵に察知されましたね?ここはチャンスと悟られたのでしょう・・・?」

「は、はい・・・」

「バイク隊の意地、総帥に見せるチャンスですね。タケシへの意地もあります!総力を上げてこれを阻止して下さい。」



 P5北ゲート前。ボブのSC隊が集中している所へ、3機の虹の三角が到着する。ボブはひとりSCに乗り込む。ボブのSCは、車高の低い流星系、真っ赤なボディ、車両の先頭部分には接近戦用なのか鋭い突起物が付けられていた。ボブはハンドルのボタンを押すと、指令室に無線を飛ばした。

「こちらボブ!北ゲート開けてください!」

『了解!』

『指令室、待って!開けないで!ボブもよ!』

 突然割って死龍からの無線が入る。


「ど、どうされましたか?死龍さん?」

『今日の死神は本気のようよ・・・』



 虹の三角2番機コクピット。死龍が窓から外を見ている。虹の三角のコクピットの高さはおよそ15メートル。P5の塀の高さよりも高い位置にある。死龍はコクピットから塀の外の様子を伺っていた。

「死神が牙を剥いたわね?ボブ、犬死したくなかったら出るな!20台のSCで何とかなる数ではない。」


 死龍が覗いた先は、“荒野の死神”こと大広率いるジプシャン軍バイク隊が、数百台も待ち構えていた。

『こ、これは・・・!?ここを援護なしで行くのですか?』山中からの無線。

「20台とは言え惜しい数だ。出れば半分はやられるな・・・」

『しかし・・・死龍さん・・・?』

「私を誰だと思っている・・・ん?」

『無理ですよ。援護なしでは?』

「命令よ。ボブはゲート開閉時の北のゲートを守って。なぁに虹の三角にしたらバイクなど蟻同様!いいわね?」

『死龍さん!?』

「まだ若いんだから、死に急ぐことはないわ。山中艦長?富久艦長?聞いてたわよね?護衛なしで行くわよ。」

『り、了解・・・』声が強張る山中。

「山中艦長?指揮官がそんな返事でどうすんのよ!?」

『了解!』空元気の山中。

「なら行くわよ!指令室ゲート開けて!・・・ったく!男ってのは・・・どいつも、こいつもね・・・?」


 

 北ゲートがゆっくりと左右に開き始めた。それに合わせ最前前線にいたジプシャン軍のバイク隊も前に出てくる。北ゲートの塀の上の機銃砲が一斉にバイク隊を狙い撃ち始めた。ゲートは完全に開き、山中が乗る1番機よりP5の外に出て行く。

 ジプシャン軍のバイク隊は各々手に手榴弾を手にしている。最前線にいたバイク隊は一斉に虹の三角1番機を襲い始めた。



 P5の指令室。司令が北ゲートの虹の三角出撃を見ていた。

「死ぬなよ。死龍・・・・・・」

 モニターを見ている司令、やがて他のオペに大声を掛けた。

「何してる機銃!?全然援護になってないぞ!虹を援護しろ!」



 虹の三角1番機コクピット。1番機はバイク隊の手榴弾攻撃を受けていた。

「14、29タイヤ大破!」

「右側面被弾!」

「機銃何してる!よく狙え!」

 虹の三角の上部から放つ機銃は、数多いバイク隊に手古摺っていた。



 ボブは北ゲートの中からその様子を見ていた。

「ボブさん!?いいんですか?」ある守備兵が叫ぶ。

「大丈夫だ。死龍さんだから・・・」

 ボブは自分が参戦出来ないのを悔やんでいた。ボブは遠ざかる3機の虹の三角を見つめていた。拳を自分のSCにぶつけた。そして北のゲートは完全に閉まって行く。



 北ゲートからは3機の虹の三角が飛び出してきた。その様子をやや離れた小高い丘から見下ろしている大広。

「やつら護衛なしで出てきましたね?いいですか!?一機たりともP6へは行かさないで下さい。」

 大広は自らヘルメットを被り、2輪のバイクにまたがった。するとバイクのエンジンを掛けると、ハンドルのスロットルを吹かし始めた。

「タケシのいない今、戦果を上げなければ・・・」

 大広は一人笑っていた。

「片側のタイヤを狙い横転させて下さい!」


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