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四天王  作者: 原善
第三章 死龍覚醒
52/209

その2 四十秒の賭け

 ジプシャン軍本部。寛子の座る大きな部屋の前で、タケシが立たされていた。立たされていたのはタケシだけではない。嶋、石森、早坂や各隊長、その後ろにはヒデや丸田の姿もある。寛子の強張った表情に対し、皆目線を下げていた。


「説明してもらおう・・・タケシ?」頬に手を当てる寛子。

「ああ・・・P6の反撃にあった。2基地を落とされた・・・」何か不服なタケシ。

「報告では、1台のSCの襲撃とも書いてるが?」

「湾から攻撃された・・・船だ・・・」

「湾だと!?なぜあそこが・・・湾は封鎖したはず・・・突破されたのか?」

「わからねぇ・・・しかし、湾内に敵戦艦がいたのは間違いない。」

「前線基地が2つ、SCが150台以上、死者300弱。過去ない失態だ。お前が弟でなければ、その首切り落としていただろう!」

「必ずこの借りは返す・・・」

「その必要はない!お前は我が軍の主力となるSC本隊を壊滅状態まで追い込んだ。これ以上P6への関与は許さん!即刻、残存部隊を引き連れP5の前線に戻れ!」

「しかし、これは俺の責任だ!」

「反論の余地はない!命令だ!」席を立ち上がる寛子。


 寛子の口調は強いものに変わっていた。

「わかった!・・・行くぞ!」

 タケシは反論せず、嶋や石森たちを引き連れその部屋を出て行く。


「犬飼!この本部を引き払う!これより本部は鹿島台とする。海岸の基地を失ってはここは丸裸だ。それと参謀らを集めろ。P6の対策を再度練り直す。やはりただの平地の基地ではなさそうだな?」

「噂では、あの街は神の街だと・・・」と犬飼。

「迷信だ。我が父も、それを恐れていた。しかし所詮は人が作った物。P3以来負けなしの我軍に不可能ではない!」

「はっ!」

「それを考えると、本来ならタケシは銃殺だぞ・・・ここに来て我軍が敗れるとは・・・」笑みを溢す寛子。



 P6の指令室。本来桑田と松井が本来座る席に、ダブル、キーン、バズーの姿があった。ダブルは必死でパソコンを操作している。

「まだかよ、ダブル?」とバズー。

「なんせ、奴らと形式が違うんでな・・・」機械を操作をするダブル。

「あー、俺寝るわ。昨日徹夜だったし・・・」あくびしながら背伸びするバズー。

「そうしろ!そうしろ!」


 バズーは、ダブルの作業に興味すら沸かないのか指令室を出て行った。

「うーん。結構暗号で守られてる。なにか鍵のようなキーワードがいるな・・・」

「お前を持っても駄目か?」とキーン。

「他は、簡単なんだ。そういうのに限ってどうでもいい情報だし・・・しかし、この重要なファイルだけはどうしても開けない・・・2、3日・・・いや4、5日くれないか?」

「俺に言うより、司令が帰ったら伝えろよ。じゃあ俺も寝るわ。今日の当番お前だよな?」とキーン。


「俺がタケシならすぐ反撃するぞ・・・」モニターを見たままのダブル。

「まさか?タケシ隊は壊滅した。反撃など無理だよ!」

「夜明けに襲撃された時の奴の攻撃・・・死をも恐れない姿勢・・・そんな奴が、おめおめと引き下がるはずがない。奴はここに最初に来た時、たった3台で来たんだぞ!」

「考えすぎだ。今朝の攻撃で下手したら奴は死んでる・・・」

「そうなってくれてればいいがな・・・」



 その頃レヴィア1番艦は、P6近くの海岸に停泊していた。船の左側の格納扉が開く。格納庫からはロクのジャガーが飛び出して来る。

「ふう・・・やっと・・・陸だ・・・」


 そこへ、弘士と曽根、桜井が格納庫から浜に降りてくる。桜井が停止したジャガーの運転席側の窓を叩いた。

「大丈夫でした、ロクさん?」

「ジャガーに乗ってれば少しは平気かな?レヴィアは揺れ過ぎだよ・・・」

「ふふふ、では我々はここで・・・」一礼をする桜井。

「ありがとう。今回の作戦はお前のおかげだ!」

「とんでもないです!ロクさん勇気ですよ!」

「またな!桜井!みんなにも宜しく伝えてくれ。」

「はい!ロクさんも!」


 ジャガーは弘士と曽根を乗せると、真っ直ぐP6に向かって走り出した。出てすぐロクは無線を飛ばした。

「こちら黒豹!P6、聞こえるか?」

『こちらP6の我妻。黒豹どうぞ!』モニターに映る我妻。

「まもなく到着する。東ゲート開けてくれ!」

『まだ3キロもあるじゃないですか?許可降りません!』

「なら40秒だな・・・?」笑みのロク。

『ふ、不可能でしょう・・・』


 ロクは我妻の言葉を聞くと、ジャガーを停車した。後部座席の弘士と曽根が無線に口を挟む。

「あーあ、言ってしまったか?我妻よ。ロクにその言葉は禁句だろ?」

「おい、ロクどうした?」

「我妻?不可能かどうか賭けてみるか?」

『な、なにを・・・ですか?』

「なら俺が勝ったら、お前がジャガーの洗車。俺が負けたら、お前の夜勤変わってやるよ。」

「お前らな・・・」


 呆れる曽根を横に、無線の我妻から勝気な返事が返ってくる。

『う、受けますよ!』

「よし!ここから、東ゲート前な。司令?カウントお願いします。」

「よかろう!許可する。」


 弘士の言葉に、慌てたのは曽根だった。

「し、司令?馬鹿言わないで下さい。わ、私は降ります。あ、歩いて帰りますよ・・・」


「5秒前!」

「えっ!?」

「曽根参謀!シートベルトを!」

「だ、だからロク・・・お、俺降りるって!」

「2・・1・・・GO!」


 ロクはギアをトップに入れアクセルを踏み込んだ。曽根は後ろのシートに頭をぶつけるほどの加速でスタートした。車はぐんぐん加速しスピードメーターはわずか5秒過ぎで300を超えていた。

「ロク!お前な・・・」

「参謀!?たまにはSC乗りの気持ちも体験しないと。いい司令官になれないですよ。」


「なりたくなーい!」

「そうですか?この辺は小石一つないから平気ですよ。」

「ふふふっ・・・」


 慌てる後部座席の曽根に対し、弘士は助手席で眉一つ変えなかった。すると視界にはP6の東ゲートが見え始めた。曽根は外を見ることが出来ず、ロクの座る座席を両手で抱え込んだ。

「そろそろ止まりますが、二人ともシートベルトしてますよね?」

「ああ。」

「おお。」

 

 曽根は顔を上げ正面に目を向けると、閉まったままの東ゲートがぐんぐん迫ってくる。スピードメーターは430近くを指していた。

「ブ、ブレーキだ!ロ、ロク!」

「まだまだ。」

「お、おい!」


 ロクはギアを変えると、ハンドルを切りながらブレーキを掛けた。5、6回車体はスピンしただろうか?ジャガーはゲート前1メートル前で停まっていた。

「司令!?タイムは!?」

「ああ・・・39秒フラット。ロクだな。」

「よし!」

『あちゃースゲー!』


 無線の我妻も驚くしかなかった。ロクはバックミラーで後部座席の曽根の様子を伺う。

「どうですか?曽根参謀?400キロの世界?」

「ロク・・・漏らしちゃった・・・」

「はあ?車内でですか?」

「く、くくっ・・・」

 弘士は苦笑いし、ロクが慌てて後ろを振り返ると曽根は真っ赤な顔をして下半身を隠していた。やがて、P6の東ゲートが開き始めた。ジャガーはポリス内に入っていく。


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