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四天王  作者: 原善
第一章 プロジェクトソルジャー
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その5 あらら・・・

 突然、荒野に響き渡った三発の銃声。男はテントからトラックに荷物を運んでる最中だった。窪地を選んで隠れているため、窪地外の様子がよく掴めない状態だった。


「んっ!?やけに早いな!ポリスか?油断も出来んな・・・怖い怖い・・・」作業を止めライフルを急ぎ手にする男。

 痩せ細った顔に長髪。無精髭姿の50前後の男は、急ぎテントに入ると、中にいた3人の子供たちに向かってこう叫んだ。


「ポリスを装うジプシャンかもしれないから、子供たちだけで車の荷台に隠れていなさい!さあ急いで!」

 慌てて10才前後の男の子と女の子がテントから飛び出してきた。後からもう一人、15歳位の少女がテントから出る。先程の男が少女を呼び止め、彼女にそっとライフルを手渡した。

「頼むぞ・・・」


 頷く少女に男は再びテントへと戻っていく。少女は二人をかばうようにトラックのところまで連れて行くと、箱型トラックの荷台に乗せてやる。自分も辺りを警戒しながら後から乗り込み、荷台の扉を完全に閉め切った。するといくつも空いている荷台の銃痕の穴から、息を殺して男のいるテントの方を覗きこんだ。

 ライフルと弾の装着を確認し、子供たちの方に目を走らせ“静かに”と指と口で合図を送ると、再び監視の目を外に向けた。


 男の方はテントの小さなほころびを探し、銃声のした方に監視の目を向ける。男たちがいたのは窪地になっていたせいか、やや見上げるようにその方向をじっと監視していた。



 砂を踏む音とともに現れたのは、大きめのハットにポンチョ姿の男だった。ゆっくりした足取りで一歩一歩テントに近づいてくる。


「貴様っ!誰だぁー!?」

 まだ遠い男に、テント中から大声で問いかける。トラックの中で身を寄せ合っている二人の子供と少女にも緊張が走った。


「おねぇちゃん・・・怖いよ・・・」女の子が少女の手を握る。

「静かに・・・大丈夫、大丈夫だからね・・・」

 小声で声をかける少女も震えている。


「ポリスの者だ!ロクという。あんたらを保護に来た!」

 緩やかな坂道を、ゆっくり下りながら大声で答える。

 

 男は、ロクの答えに安堵し銃の構えを緩めかけたが、腰にぶら下がった二丁の銃に再び警戒を強める。


「わかった!だが銃はそこに置けぇ!それにコートと帽子もだ!」

 そこでで立ち止まり、言われたままに帽子とポンチョを投げ置く。なんとポンチョの下にも左右の脇に銃がぶら下がっていた。


「一体いくつ持ってるんだ?怖い怖い・・・」

 テントの中からロクの様子を監視している男の顔に浮かぶ呆れ顔。トラックの中で息を殺して、成り行き見守る少女たち。


 ロクは腰のベルト、胸に渡したベルトも外し、四丁の銃をそっと自分のポンチョの上に置く。ポンチョの下には上下グレーのポリスの制服姿だった。

最後に口元を覆うスカーフを下にずらし、ゆっくりと両手を上げる。


「子供なのか・・・?時代って奴だな?怖い怖い・・・」

 童顔のロクに、男の口から本音がこぼれる。


「これでいいかぁー!?」とロク。

「よし!そのまま真っ直ぐこっちに来い!」

「ああ・・・」

 両手を上げたまま、ゆっくり男のテントに近づくロク。安心したのかトラックの中の少女も荷台の扉を開け、ロクにライフルの狙いを定めていた。男も銃を構えたままテントからゆっくり出てくると、周りを窺いロクに向かって歩き出した。


「そこで止まれ!どこのポリスの者だ?本当にポリスなんだろうな!?」

 男も銃を構えながら足を止めるとロクに問う。 


「第6ポリスだ!」ロクは答えた。

「何っ!?P6(ピーシックス)だと?」

「そうだ!」

「ここはあんたらの管轄外だろ?保護は拒否出来るんだよな?」

「そうだが、何か不都合があるのか?」

「ああ、あまりポリスには世話になりたくはない。ほっといてくれないか?」

「一応・・・こっちでは規則なんでね・・・」

「ポリスが勝手に作った規則だろ!?従う義務はないはず!」ムキになる男。

「おいおい・・・やけにポリスの事に詳しいな?」その言葉にボヤくロク。


『厄介なタイプだな・・・このおっさん・・・』渋い顔のロク。その時だった。


「んっ!!」

 突然、荒野に響き渡った銃声にロクと男に緊張が走った。


「きゃぁぁー!」

 重なる少女の悲鳴。


「直美!?」

 トラックに向けられた男の銃先で、右手の甲から血を流しながら少女が投げ出された。荷台からは、恐怖に声も出せず泣いている女の子の髪の毛を鷲づかみし、その頭に銃を突きつけた迷彩服に目だし帽をかぶった大男がゆっくりと現れた。


「お、おとうさんー!」女の子が助けを呼ぶ。

「なっ・・・!!」驚く男。


 大男は周りを警戒しながら荷台から降りると、女の子を羽交い絞めにし、銃を突きつけたまま叫んだ。

「銃を捨てろ!!そっちのポリスもだ!変な真似をしたらこのガキを殺すぞぉー!」


 ロクはひとり焦った。

「あらら・・・意外と早かったな・・・?」

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