その13 侵入せよ!
3隻のレヴィア艦隊は、湾の入口に近辺にいた。海上は波風もなく穏やかで、夜明け前か若干、東の海の空の色が変わり始めていた。その海底を3隻は微速で進んで行く。しかし、湾の入口には数百の機雷がこれを拒むように、立ち塞がっていたのだ。近いものでは1メートル間隔で浮遊する機雷まである。
04:10 レヴィア1番艦ブリッチ。緊張した桜井たち。
「機雷まであと30メートル!」
「微速のまま艦をギリギリまで寄せるぞ!国友!海流も計算してくれよ!」
「了解!」と国友。
「桜井さん!満潮まであと14分!」と三島。
「よし。少し早いが行くぞ。どうせ数センチしか違わないだろ!?艦首を機雷の真下につける!万が一に備え、艦首部分の乗組員を下げる!微速前進!」
桜井らの乗るレヴィア1番艦は機雷網の真下に艦を移動させて行く。そこの機雷の間隔は2メートル程で、桜井のブリッチからでも微かに見えるくらいに近寄って行く。
「艦を停止する!」
レヴィア艦が停止する。まさに艦首の真上に3つの機雷が浮いていた。
「ふぅー!確かにくぐれないな・・・?国友?これ以上艦を潜れないか?」
「無理です。海底まで50センチ切ってます!海が荒れていたら、上は艦首すら危ないですし、船底部分は座礁しかねます。これ以上は・・・」
「なら予定通りだ・・・少し早いが行きますか?」
「はい!」
「行きましょう!」
「艦首部分のみのエアーブースター始動!空気弁オープン!」
レヴィアの艦首部分の真下からたくさんの空気が噴出した。空気は泡となって船の左右に別れ海面に上がって行く。海面に上がる頃には、大きな泡となって海面に出てきた。
「どうだ?国友?」
「機雷・・・位置変わらず!駄目です!動いてません!」
「くそっ!もう一度、空気を出す!」
「現在エアーの残り75パーセント・・・緊急浮上用のエアーを残して60パーセントを一気に噴出しませんか?」と国友。
「しかしだ・・・」
「桜井さん!?」
「ロクさんが、命張って敵基地に突っ込むんだ・・・俺たちだって・・・」
「やりましょう!桜井さん?」と国友。
「うん、やりましょう桜井さん!」国友の意見に賛同する三島。
「わかった!残りのエアーで最大量を噴出する!」
「了解!」
「60%のエアーを艦首部分に集中!」
「これで駄目なら・・・作戦は中止する!よし!エアーブースター再始動!空気弁オープン!」
再度、レヴィアの艦首部分からエアーブースターの空気が噴出される。1回目より空気量も多く、たくさんの泡は海面まで一直線に上がって行く。たくさんの泡は海面を揺らし波になり、機雷を少しづつ左右に動かして行く。
「機雷!左右に動いてます!」と国友。
「よしやったか!急ぎ前進するぞ!微速前進!三島、2番艦に照明信号。“ワレワンナイ二ハイル”だ!」
レヴィア1番艦のエアー噴出で機雷は左右に動き、1番艦は機雷と機雷の間をギリギリで通過する。
04:14 レヴィア2番艦ブリッチ。
「1番艦・・・無事通過しました!」
「よし!俺たちも後に続くぞ!」弘士が叫ぶ。
「了解!無線員、3番艦に照明信号だ。“ワレニツヅケ”だ!」
04:15 レヴィア3番艦ブリッチ。曽根参謀と艦長の水谷艦長がいる。
「2番艦より、連絡!“ワレ二ツヅケ・・・”です。」
「よし!微速前進・・・」曽根が恐る恐る指示を出す。
「微速前進!」
「2番艦のケツに付けろ!」
「了解!」
「万が一だ!こちらもエアーブースター用意!船の移動の海流で、機雷が戻る可能性がある・・・念には念だ!」と曽根。
04:20 レヴィア1番艦が作った海の道を、2番艦、3番艦と続けて通過した。満潮ながらたまにブリッチの屋根部分が少し、海上から顔を出していた。そのブリッチのすぐ両脇には、機雷が浮いている。
04:22 レヴィア1番艦ブリッチ。
「3番艦無事通過!作戦は成功です!」と国友。
「慌てるな。本当の作戦はこれからだ。三島、照明信号!“ワレシテイノバショニイドウスル”だ。」
「了解!」
「国友!オペ頼むぞ。ここからは浅瀬との勝負だ!座礁する訳にはいかんからな!お前が目となれ!」
「任せてください!」と国友。
「本艦は浜田基地の射程内まで移動する!面舵一杯!」桜井はレバーを倒した。
04:23 レヴィア2番艦ブリッチ。
「1番艦より照明信号です!ワレシテイノバショニイドウスル・・・です。」
「了解。ケントウイノル・・・と打ち返せ!」
「了解!」
「我が艦も、浜田と松島の間の目標砲撃地点に速やかに移動する。後は任せたぞ佐々木!」
「了解!レーダー!浅瀬、見落とすなよ!」
04:24 ロクのジャガーカストリー。
「そろそろ時間だな?どこからも無線連絡がないなら・・・こっちも行かせてもらいますよ?」
ロクは車のエンジンを掛ける。ロクはポケットからカセットテープを取り出すと、車内にあるデッキに放り込んだ。するとロック調の曲が段々と大きく聞こえ始める。ロクもそのリズムに合わせ、アクセルを吹かしまくる。するとロクは車のライトを点ける。闇夜に赤い光が妖しく光った。
「さあーて・・・・・・行きますか?」
ロクは車のギアを入れアクセルを踏み込んだ。赤いライトが暗い荒野を切り裂いていく。
“砂漠の雷獣”伝説第二章が始まろうとしていた。