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四天王  作者: 原善
第二章 松島奇襲作戦に賭けろ!
43/209

その12 難攻不落

03:45  P6地下3階SC整備室。全部黒で塗装された、ダブルのジャガーストームの脇に桑田の姿があった。運転席にはダブルが苦悩の顔をして乗っている。


「もう・・・なんでわかんないんですかねー!?」

 桑田がキレ気味にダブルに説教をしていた。


「もう一度だ・・・頼むもう一度最初から説明を・・・」

「もーう!あの機械音痴のあのロクさんで“すら”勘で覚えましたよ!」

「お前・・・言い方きつくなったな・・・!?」

「最後ですよ!いいですか!?ダブルさん?」

「ああ・・・」


 桑田が、ダブルに怒って機器の説明をしている。その様子を見ているキーンと高橋技師長。

「なんか明らかに変わってますね?なつみ・・・」

「さっきから、別人になったような気が・・・」


 その様子にキーンはなつみに質問をぶつけてみる。

「おーい!なつみ?どうした?ロクにでもキスされたのかー?」

「そっけんな○△×※□▼◎だがっー!」


 桑田は説明途中にキーンの方を振り返ってキレていた。

「図星か・・・どこの方言ですか?技師長?」

「わ、分かりやすい・・・誰だあいつをスパイって疑ってんのは?」

「さ、さあ・・・?だ、誰でしょうかね・・・?」


 キーンと高橋が小声で話す中、そこにバズーが眠そうな顔で入って来る。

「やっと起きたかバズー・・・」

「あれ?ゴロゴロ様は?」とバズー。

「だ・れ・だ・よ・・・?」とキーン。

「ロクだよ。なんかあいつ、敵から砂漠の雷さまって言われてるんだろ?」


 そこに桑田が素早く飛び込んで来て、バズーの顔の近くまで近寄った。

「バズーさん!それを言うなら砂漠の雷獣ですよ!らいじゅう!ライジュウ!RAIJYU!」


 そういい終えると、再びダブルの車に素早く戻って行く。

「ダブルさん!全然出来てないじゃ・・・死にたいんでしょ!?ねぇ!?ねぇ!?だからここは・・・ぐがぁー違うばい!」

 桑田の豹変振りに戸惑う3人。


「さ、さてと・・・俺はシンガリだよな?北ゲートにいるぞ!」と背伸びするバズー。

「ああ。頼んだぞ!」

「悪いな。お前のはSCが間に合わなくて・・・」と高橋。

「いいえ、ロクとダブル、あの二人が優先ですから!」

「ただフロントガラスは、一応防弾ガラスにしてある!そこは安心しろ!」

「ありがとうございます。おーい、そろそろ時間だろ?ダブル行くぞ?」


「まだです!全然まだです!この人たちに教育?いや学習ってものがそもそも欠けています・・・あー!だぁ・かぁ・らっ!そうじゃなくって・・・こうじゃないですか!?」とダブルに説教を続ける桑田。

「あとは、戦場でロクみたいに勘でするよ。ねぇ、技師長?」ダブルに助け船を出すキーン。

「そ、そうだな。おい、もう許してやれよ。桑田?」高橋も賛同する。

「はあ、私はそんなつもりで・・・でも戦場で困るのはダブルさんですよ?」

「ロクに出来て、俺に出来ない事ないだろ?」なぜか強きのダブル。

「その自信どこから来るのやら・・・?」呆れる桑田。

「じゃあ、俺も行きますんで!」


 キーンはこの部屋を出て行った。するとこの部屋のエレベーターシャフトの扉が開き始めた。ダブルは自分のジャガーストームをシャフト内に入れ始めた。桑田と高橋は、ダブルのSCの側に近寄った。


「必ず帰って来て下さいよ。ダブルさん!」

「同じセリフ・・・ロクにも言ったのか?」


 桑田は何かを思い出して、急に真っ赤な顔をして目が飛んでしまっている。

「そうか・・・お前、隠し事下手~!まあ若いんだからしょうがないけどな!?」

「ロ、ロクさんとは、なんにもないですよ・・・」慌てる桑田。

「そうかい?まあロクにしては上出来だ!もっと奥手だと思ってたからな?まあ、あいつの覚悟・・・見させてもらうよ!」

「な、なんかあったんですか!?ロクさん!?」

「いいや、大丈夫だよ。ロクは俺らが守る!」

「はい!」

「ほな、行って来る!」

 ダブルは運転席から桑田に親指を立てた。桑田と高橋はシャフト内のダブルに対し敬礼をする。



03:50  ジプシャン軍松島基地側居酒屋。

 既に酒場の女たちの姿はなく、タケシは酔い潰れていた。ほとんどのテーブルは兵らが酔いつぶれている中、ヒデと丸田、嶋、石森の4人は酒を飲み続けている。そこへヒデの仲間のタカが入って来る。ヒデの側に近寄ると、ヒデに耳打ちをする。

「海竜が妙な動きを・・・?」


「ん?」傍にいた嶋がそれに気づく。


「補給をし、再び海に潜っています・・・」とタカ。

「そうか・・・わかった・・・」

「それと・・・」

「ん?」

「ミキが戻っていないって女たちが騒いでます・・・」

「そうか・・・捜せ・・・」

「はい・・・」

 タカが店を出る。その様子を見て、不審がる嶋。


「どうしたヒデ?」と嶋。

「いえ、なんでも・・・」

「・・・・・・」無言で目を細める嶋。

「そういやぁ、なぜポリスの船はここを襲わない?」


 すると、嶋とヒデの会話に石森が口を挟む。

「湾の入り口に大量の機雷を敷き撒いてる。」

「潜ればいい。向こうは海中を潜れる潜水タイプと聞く?」とヒデ。

「向こうの方がデカイ。機雷の下はくぐれないのさ。それに湾の中は、浅いところも多く座礁しやすい。湾内にはいくつもの沈没船がある。所用箇所に船をあらかじめ沈めておいたのさ!水陸両用タイプにしては、エアーブースターの船底をぶつけたら致命だ。今度は陸に上がれないからな・・・そうだな嶋?」


「ああ、過去20年近く、ポリスはここを破ってない。俺が敵なら機雷を除去して攻めるな。しかしその時間にこちらは、守備を固められる。後ろは山、左右は細い海岸道、更に正面に海とたくさんの島々だ。ここは難攻不落の自然の要塞だ。古来、大津波がこの地域を何度も襲ったと聞く。だがここは被害すらなかった。ポリスのSCだろうが、船だろうがここを突破など不可能だ!」


「ふはははっ!」

 ヒデは突然笑い出した。

「ヒデ?何がおかしいんだ!?」

 嶋がその態度にヒデを責めた。

「いや、悪い悪い!急に昔の仲間を思い出してな!」

「仲間だと?」

「ああ、絶対に無理だと聞くと、破るまで何日も考える馬鹿がいたなと思ったら、急におかしくなってよ!」

「ふっ!バカバカしい!」

「うふふふ、あの馬鹿が生きてるなら、ここをどう攻めるんだろうな・・・?」天井を仰ぐヒデ。



03:54  ロクのジャガー。ロクは車内の時計を見つめていた。

「あと30分・・・」

ハンドルを握る手が微かに震えている。


03:55  P6北ゲート。キーンのSC。

「出るぞ。我妻!ゲート開けてくれ!」

『了解!』

 星明かりのない暗闇の荒野。北ゲートから出るダブルとキーンのSC。2台は北の浜田基地方面に向かった。



03:58  レヴィア1番艦ブリッチ。国友がある地形モニターを検索してる。

「なんてこった・・・ジプシャンの奴等!この湾の入り口だけで20隻以上の船を自沈してます!どうしてもここは通さない気ですよ!」ボヤく国友。

「くっ・・・魚雷で爆破でもするか・・・?」とほのめく桜井。

「駄目ですよ!楠本さんに後で報告して、P7で引き上げて貰います!鉄不足のP5が泣いて喜びますよ!」

「ふふふ、そうだな・・・」と桜井。

「それで桜井さん!このルートなら、突入にリスクは少ないかと・・・?」

 国友の席に近寄り、地形データーを見つめる桜井。

「うん・・・確かに・・・作戦まで26分・・・行くぞ。三島!後方の3隻に照明信号!“ワレ二ツヅケ”だ。」

「了解!」

「俺らがここを通過しなければ、作戦は成り立たない・・・ロクさんの言葉じゃないけど・・・さぁーて、行きますか?」



03:59  レヴィア2番艦ブリッチ。司令と佐々木がいた。

「1番艦より照明信号。“ワレ二ツヅケ”です。」

「来たか?よし我艦も動くぞ!」と弘士。



04:01  レヴィア1番艦ブリッチ。

「進路このまま。微速前進!」桜井がレバーを引く。海中で動き出すレヴィア。



04:02  レヴィア4番艦ブリッチ。久弥が席から立ち上がり、一人腕を組んでいた。

「1番艦から3番艦!移動を開始した模様!」ある兵が叫ぶ。

「動いたか?この艦は指示があるまでここで停止!頼むぞ!・・・ロク!・・・桜井!」


 満潮まであと22分だった。

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