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四天王  作者: 原善
第二章 松島奇襲作戦に賭けろ!
42/209

その11 生きて帰る

 一度、顔を離し互いの顔を見つめ合うロクと桑田。

「・・・」

「・・・」

「ちゃ・・・ちゃんと帰って来て下さい・・・」涙が止まらない桑田。

「うん・・・」


 そう言い終えると二人は再びキスをし始めた。一度目よりも大胆に・・・互いに何かを確かめるように唇を重ねて行く。上から流れてくるシャフト内のライトが微かに二人を照らしている。ロクは桑田の助手席に体を合わせ、更に深くキスをする。すろとシャフトは止まり、前方の扉が開き始めた。二人は我に戻り顔を離した。抱き締めあった手も急に互いを突き放すように離れていく。扉が完全に開き切ると、ロクは車を前に出す事無く静止していた。


「あらら・・・規則を破ってしまった・・・」

「うん・・・ですね・・・?」笑ってみせる桑田。

「ごめん・・・」

「いいんです・・・」

「ごめんな。どうかしてた・・・」

「だから・・・いいって・・・」

 桑田がロクの顔を見るとロクは再び桑田の肩に手を回すと桑田の顔を引き寄せキスをした。


「えっ・・・!」

 一瞬驚いた桑田だが目を瞑り、ロクの大きな背中に腕を回す。何かを忘れようと無我夢中で二人は求め合う。するとロクが急に桑田から離れると、再び我に返った。

「生きて帰る!」

「うん・・・」


 離された桑田は目が輝き笑みさえこぼれていた。ロクは車のギアを入れるとシャフト内から車を急発進する。車は復旧続くP6の住居街を走る。ロクは途中で車を止めた。地下に入る人用のエレベーター前だった。

「ここで降りろ。このエレベーターは生きてるよな?」

「はい・・・」


 桑田はロクの車を降り、運転室側に回り込んだ。運転席から桑田を見つめるロク。

「ほんと・・・生きて帰って来て下さいね?」

「なんとか・・・する・・・」

「ぷっ!」緊張していつものセリフすら言えないロクに、つい笑ってしまう桑田。


 桑田は笑顔で車の側でロクに敬礼をする。ロクは右手の親指を立て桑田に答えた。するとロクはギアを入れると再び車のアクセルを踏み、街中を走り始めた。その姿を桑田はいつまでも見つめていた。



02:35  P6北ゲート前。軍事ゲートではあるが、兵の数はいつもより半分もいなかった。そこへロクのジャガーカストリーが来た。ロクはハンドルの内側の無線を押した。


「こちら黒豹。指令室聞こえるか?」

『こちら指令室我妻。どうぞ!』

「頼むな!我妻?」モニターの我妻を見るロク。

『桑田ほどうまくいくかわかりませんが・・・』自信なさげな我妻。

「黒豹出る。北ゲートを開けてくれ!」

『了解!』


 すると北ゲートが左右に開き始めた。ロクはいつものように開き終わるまでにはゲートを通過し、外の真っ暗な荒野に飛び出して行った。



同刻  P6南ゲートに揃う、1番艦から4番艦からのレヴィア4隻は、既に発進準備に入っていた。2番艦ブリッチには司令と、艦長の佐々木がいた。

「司令!各艦発進準備が整いました。」

「ご苦労、佐々木艦長。艦の方は宜しく頼むぞ。予定より早いが、1番艦から4番艦は外海へ向かう。」

「了解!各艦発進!先頭は1番艦。」

『了解!』



同刻  レヴィア1番艦ブリッチ。

「レヴィア1番艦、発進する!」

「進路良好!風無し。」

「各艦、1番艦出ます。」


 桜井らの乗せたレヴィア1番艦が砂埃を巻き上げ、海に向かって動き始めた。続いて2番艦、3番艦、4番艦と4隻のレヴィアは縦一列になり、海に向かっていた。



同刻  P6を見下ろせる丘。マントを被り、姿勢を低くしてこの様子を見ていた男がいた。

「こんな夜中に海竜が?・・・動いたのか・・・?」

 男は慌ててその場を走り立ち去った。



03:00  浜田基地より南西約8キロの地点。浜田基地のレーダーの範囲からはギリギリの箇所である。そこにいたのは浜田基地を徒歩で偵察していた山口のSCがあった。そこに静かにライトも点けず近寄ってきたのはロクのジャガーだった。ジャガーは山口のSCの側に停車すると、ロクが車から降りて来た。するとロクは山口の車の助手席に乗り込んだ。


「よお!どうだ山口?」

「隊長!変わりません。敵は偵察車も出してないです!」

「それは舐められたな~!」

「はい・・・って何で白制服なんですか?」

ロクの白の制服に驚く山口。

「作戦さ!そうか・・・偵察も出してないのか?どうせ奴ら、海草酒でも飲んでるんだろ!?」笑ってみせるロク。

「ですね・・・あれ?隊長以外は?」後方を確認する山口。

「ん?ああ“後から”来る。」

「ですよね?いくら隊長でも一人じゃあ・・・」

「一人じゃあ?って?」

「普段の浜田基地でも隊長一人じゃあキツイのに、タケシ部隊50台がある以上、一人で突っ込むのは・・・」

「自殺行為か?」

「はい・・・それ以上かと・・・」

「うふふ・・・そうだな・・・」

 ロクは笑いながら山口を“睨んだ”


「作戦を聞いてないのですが、私はどうしたら・・・?」

「後方支援!」

「はあ~?」

「不服か?」

「いや・・・別に・・・それが偵察隊の任務かと・・・」


 ロクには戦場に出た事がない山口の本心が分かっていた。

「お前を俺の隊に入れたのは、お前は俺と同じように臆病だからだ。」

「はっ?」

「臆病でいいんだよ。無理して死に急ぐより、臆病になって生き延びようって奴の方が俺は好きだけどな。」

「はぁ・・・」溜め息をつく山口。返す言葉がない。

「死に急ぐなよ。まだ15だろ?」

「なんか、隊長にそんなに熱く語られたの初めてです!」

「そうか。じゃあ頼むぞ。後から別隊も来る。お前は北に回りこみ徒歩で松島基地偵察だ。」

「ま、松島基地を・・・了解です!」

「頼むぞ!」

 ロクは山口のSCを降りると自分のジャガーに戻って行った。



03:35  レヴィア艦隊4隻は松島湾入口約1キロの外海の海中にいた。

 レヴィア1番艦ブリッチ。指揮は桜井が操縦を兼ね執っていた。桜井は潜望鏡を覗いている。


「意外と多いな。国友?行けそうか?」

「厳しいです。特に深い所にはびっしりですね・・・」

「まあこの数を敷けば、向こうとしては安心だな。出来るだけ薄いとこを検索してくれ!」

「了解!しかしもう少し時間が・・・なんせその先は沈没船のオンパレードですし・・・」

「ふふふ、だろうな?ジプシャンめ!いい所ばかりに船を沈めていやがる!それも想定内だ。急げよ!ロクさんの勇気から比べれば俺たちなんて・・・あの人を死なせわしない!」



同刻  レヴィア2番艦ブリッチ。沈黙のブリッジ。

「どうしたんだ?なぜ停止し動かない?」と弘士。

「ルート検索でしょう。桜井の事です。何か考えはあるはずです。」と佐々木艦長。

「間に合うのか・・・?もうすぐ満潮だぞ・・・」腕時計を見て不安がる弘士。


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