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四天王  作者: 原善
第一章 プロジェクトソルジャー
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その4 行きますか?

 ロクたちを乗せた4台は、南に向かって荒野を走っていた。

「追手かよ!?装甲車だろ?なぜ鈍足の装甲車なんだ?」とロク。


 車のフロントガラスには、桑田の姿が映し出されている。走行中の為か、時折ブレる桑田の映像。

『本隊がまだ動いてないそうです。親父さんらの話では、昨日のダメージが多少あるのでは?という事ですが・・・』

「まあ、そんなとこだろ。敵も日に日に数が減っているような気がするしな。昨日は死者も出しているはず・・・しかしおかしいな?偵察隊を普通追うかな?」

『昨日の戦闘・・・またなんかやったんでしょ!?』

「べ、別に・・・」口を尖らすロク。


『もうっ!新しい情報があり次第、また連絡します!』ロクの言葉に呆れる桑田。

「もう無線電波の限界だ。後はこっちでなんとかする。まあ俺らには追いつけないよ・・・」

『出た出た・・・あっ!いえいえ!そ、そうですね。了解しました。気をつけて下さい!』

 小声で慌てる桑田を見てロクは少し笑った。

「ああ・・・わかった・・・」


 映像が切れると、仲間に無線を入れる。

「みんな聞こえたろ?後方から装甲車らしい。少し先を急ぐぞ!」


 ガラスのモニターには代わって山口が投影された。

『了解!装甲車とは厄介ですね。奴ら軍の者でもないのにどこから調達してるんでしょうか?』

「さあな。そんな事より、山口!タイヤ跡を見落とすなよ!情報ではトラックらしい。余程じゃない限り残るはずだ!」

『わかりました。トラックぐらいの車高なら目立つはずなんですがね・・・?』

「昨日の目撃情報、走行距離、夜間移動を考えると・・・この先に大きな窪地があったよな?俺なら夜はそこに隠しておくが・・・どうか山口?」

『同感です!距離的には、あそこでしょうね。夜は移動しませんからね!』

「まあそう簡単には見つからないがな・・・急ぐぞ!風が強い。タイヤ跡が消えてしまうぞ!」


 無線を切ると、ロクは少し考え込んだ。

『なぜ、逃げるのにトラックのような足の遅い車なんだ?やはり敵の罠か・・・?』

 運転するロクの眉間にはしわが寄る。



 丘の上。ヒデが仲間を集め、ジープの荷台に立って周りに睨みを効かすと叫び始めた。


「昨日のポリスとの戦いで、リキが死んだ!殺ったのはあの装甲の厚いド派手な黄黒の奴だ!その黄黒が、さっきノコノコとポリスを出てきた。たった4台で南に向かっている。4台とも武装をしていない偵察タイプだ。今、丸田が装甲車で追いかけている!」


 すると中の一人がヒデの話に口を挟んできた。

「足の速い奴だろ?なぜ装甲車で追わせた?」

「装甲車がなければ、ポリスがこっちに攻めて来るだろ?」

「そうだ!そうだ!」

「なぜ行かしたんだ?」

「負傷者の手当てが先だろ!?」

「もうじじぃたちはハエに食われちまうぞ!!」

 周りの者たちも同じように騒ぎ始める。


「奴らが今まで攻めて来た事があったか?出てきたら戦えばいいだろうが?いつから臆病になった!?」


 ヒデが大声を上げると、声を静める周囲の者たち。

「リキは俺らのリーダーだった。そして俺のダチだった。いや俺たちの兄だったはずだ。兄なら家族の仇をお前たちは討ちたくないのか!?」


 その一言で静まり返る。みんながヒデの真剣な顔を見つめている。

「装甲車で奴を追わせたのは訳がある。装甲車の機銃しか黄黒を狙えない。まして偵察隊だ。装甲車で追われれば奴ら別ルートでポリスに戻ってくるだろう。丸田にはあえて海岸ルートで追わせている。つまり奴等は内陸ルートでしか帰れないという事だ。いくら足が速くても、山場はどうだろうか!?」


「槻木か?」

「あそこは、山と山の間が極端に狭いな・・・」

「しかし、我々がポリスを後ろにするのはどうか?」

「ポリスでも、仲間ぐらいは助けに来るだろ?後ろを突かれるぞ!?」

「奴等に後ろを取られたら、こっちが危ないな・・・?」


弱腰の仲間たちの声に、再びヒデが吠えた。

「ポリスは街から出てこない!一度、北に帰ると見せかけ、山側を迂回して南に戻る。ポリスには察しされずに槻木で待ち伏せする。俺らの銃でも奴のタイヤくらいは狙えるはずだ!どうだみんな!?」

「おぉっー!!」


 ヒデの作戦に賛同したのか、みんなは機関銃を空に突き上げていた。中には空に向かって機関銃を派手に撃ちまくる奴もいる。



 ロク隊の4台。荒野を横4台で並行して走っている。ロクも車内から目を凝らし荒野を見渡している。

「あったぞ!左舷方向!」


 ロクは、荒野に太いタイヤ跡を見つけスピードを落とした。横に広がっていた他の車もそのタイヤ跡を確認する。ロクは車を降りてその跡を確認した。他の者もロクのそばに集まってくる。


 ひときわ高い長身のロクは他の者より頭一つ抜き出している。またロクが羽織ったポンチョの間からは腰に幅広いベルトを巻き、左右のホルダーに拳銃を携帯しているのが見える。


「まだ新しい物です!半日経ってない!この方向・・・?やはりあそこの窪地でしょうか?」と山口。

「そうだな!?急ぐぞ!1時間で後ろの装甲車に追いつかれる。窪地近くになったら、エンジン音を低くして風下にまわるぞ!いいな?」

「り、了解!」怯える山口。

「心配するな!交渉は俺がする!お前らは後方支援だ!」

「あ、相手は脱走兵ですよ!?」どこか怯えてる様子の山口。

「普段通りだ!訓練を思い出せよ!行くぞ!」

「了解!」全員が一つになった。

「太陽光の充電で、まだ足止めしててくれればいいが・・・?」

 四人は再び車に乗り込むとすると、そのタイヤ跡の先に向かって車を急ぎ走らせた。



「妙です!丘の奴等が北に向かいました!撤退する模様!」

 柳沢の一言で再び慌ただしくなる指令室。そこに黒服の老人が雛壇を降りてきた。さっきまでいた桑田の姿は席にも指令室にもなかった。


「どうした?なぜ北に向かった?」と老人。

「30台全部です!変だと思いませんか!?」と柳沢。

「撤退?わからん・・・?どうしたいんだ奴等?」

「誰かに追わせますか?」柳沢は何かを確認している。

「黒豹の偵察隊は全部出払ったか?困ったな・・・我妻?ダブルを呼べ!」

「了解!」桑田の席の隣にいた男が命令を受ける。



 ロクは荒野に立っていた。先程まで強く吹いていた風も弱まっている。ロクの後ろに控える山口ら3人。ロクは彼らを振り返ると、左手で左右を指さす。3人は無言でロクの指先の方向に二手に素早く別れた。荒野にひとりになったロク。


「さぁーて・・・行きますか・・・?」

 

 ロクはそういうと深呼吸をし、スカーフで口を隠し右腰の拳銃を抜き空に向かって三発の銃弾を発射した。

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