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四天王  作者: 原善
第二章 松島奇襲作戦に賭けろ!
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その8 ミュウ

 関根は深刻な顔でロクに語り始めた。

「ちょっと危険かな・・・?」

「そんな・・・」

「実は死んだ赤ちゃんがあまりにも不自然で、検査して調べたの・・・そしたら・・・」

「ま、まさか・・・」

 ロクの顔色が変わった。


「うん・・・ミュウの反応・・・」

「ほ、本当ですか?」

「あの子はここに来た時には、問題なかった。ただ7:3で女性が発症する確立は多い。ただ今回は恐らく男の方。」

「男・・・」

「怪我も、流産自体もそう影響はないの、ただミュウの影響の方が大きく母体に響いた。あんたの説得でここに来たんでしょ?後で男の詳しい事聞いてきなさいよ。」

「は、はい・・・それで命は?」

「私、専門じゃないからなんとも言えないわ。後はポリスの医師チームに渡すつもりよ。ただ今までのデーターから言えば・・・」

「助けて下さい!お願いします!」

 ロクは深々と頭を下げる。関根は困った顔をしていた。


「あんたの言葉じゃないけど・・・なんとかする!引き渡すまではね・・・」ロクの肩をポンと叩く関根。

「お願いします!」

「そう言えば、この遺体の家族っていなかった?」

「他のシェルターにいて無事でしたが・・・」

「そう・・・幼い子供もいたわよね。また孤児が増えたわね。ちゃんと面倒みんのよ!ロク!あんたの後輩たちよ!」

「は、はい・・・」

「それと人手が全然足りないの。桑田も松井もどっか行くし。誰か寄越してよ。ポリスは何コソコソしてんのよ!!」

「復旧作業にちょっと・・・」

「聖の事は、任せて!あとで報告するから!いい!?」

「はい!」



22:13  P5指令室。P5の四天王のボブと25前後の軍服を着た男性が言い争っている。周りのオペや兵らもその様子を黙って見守るしかなかった。


「だから何でですか!?」とボブ。

「タケシがいなくても、数が増えてるじゃないか?しかも死神の前線は、1ヶ月前よりだいぶ上がっている。危険度は前の比にならない・・・」

「タケシがいない今がチャンスなんですよ。なぜそれが分からないのですか?」

「分かっている。しかし護衛が少なすぎる。せめて10台のSCを付けて欲しい。」

「数は前回よりは少ないですが・・・しかし・・・」

「せめて、ここから20キロは付いてくれないと・・・いくらバイク隊とはいえ・・・」


「今のうちの現状だと、10台しか無理ですよ!」ボブは必死に説得する。

「死にに行くんじゃないんだぞ!」争う二人。


「騒がしいわね!」

 指令室の雛壇上の扉が開き、そこへ死龍が入って来た。死龍は雛壇を降りてくると、二人に近寄った。

「山中艦長!?どうしたの?」

「明後日のP6への補給です。タケシがいないので護衛を減らすとボブが・・・」

「タケシがいない今も、戦力は裂けれないのが現実よ!」

「しかし、死神のバイク部隊も数が増え、前線基地も前回よりも上がっています・・・」


「不安?」

「はい、兵は不安がっていますし・・・指揮にも影響が・・・」と山中。

「そう・・・なら護衛には私が付くわ。」

「いや、それは・・・」

「わざわざ死龍さんが出る程の事ではないかと・・・」

 ボブが口を挟んできた。


「この間、ロクが来た時の事が気になってね・・・」

「はい?ロクさんが何か?」とボブ。

「あいつ、ポーカーフェイスだから顔に出さないけど、自分が苦しいのを人に見せない奴なの・・・」

「えっ?」

「昔からね、あいつはそういう奴なの。人を巻き込みたくないのよ。だから分かるわ。タケシに苦戦している事・・・」

「ロクさんに限ってそんな・・・」

「後輩の君には見せないわよ。いいわ、私がP6に行く!ロクを救えるのは私しかいないわ!いいでしょボブ?」

「しかし、ここの指揮は・・・?」


 ボブは死龍の無茶な提案に困惑した。

「本来の司令がいるでしょ?どう、山中艦長?私じゃ不満かしら?」

「とんでもないです。兵も喜びます!」

「ご存知の通り、私は運転出来ないわ。それでもよくて?」

「しかし、司令がなんと言うか・・・」

「私から言うわ。駄目なんて言わせない。久しぶりにP6のみんなにも会いたいしね。2日くらいどうってことないでしょ?里帰り、里帰り!」なぜか笑顔の死龍に困惑するボブと山中。



22:40  地下3階SC整備室。高橋技師長一人がロクのジャガーを整備している。そこへロクがやって来る。

「お呼びですか?技師長?」

「おお。来たか・・・説明だけさせてくれ。」

「はぁ・・・」


 高橋は上半身を車内に入れると中の説明を始める。

「バッテリーは倍積んでる。夜に行くなんてお前らしいな。それで車の重心が後方にぶれるからな。バルカンも結構バッテリーを喰う。乱射は避けろ。それとあまり飛ばすなという事だ。まあこの辺は説明しなくてもいいだろ・・・今回改造したのがブースターの射出口だ。」

「射出口?」

「お前の注文通り、噴射量も調整出来るようにした。まあこの辺は簡単だったがな!」

「さ、さすがです!」

「なんだ、お前から褒められるとゾッとするよ・・・」目を細める高橋。

「へへへ・・・」

「射出口は角度が調整出来る。前だけ、左だけとか、左右だけとか・・・煙幕を自由に張れるという事だ。以上・・・」


「それだけ?」何か不満げなロク。

「ああ、ブースターはバッテリーを消費しやすい、くれぐれも使い過ぎるな。本来、ジャガータイプはバッテリーを消費しやすい・・・昼間明るい内に走るならともかく、歴代のジャガータイプは夜戦用じゃないんだ。バルカンくらいなら平気だが、ブースターはかなり浪費するからな。」

「なら泳いで帰りますよ。」

「な、なんだ?ジャガーを捨ててくる気か?」

「作戦前に呼び出す事ですか?そんなの全部計算の上ですよ!」

「なんだよ!会議中、助け出したろ?」

「はあ・・・それはありがとうございます・・・」

ロクは不本意なお辞儀をしてみせた。


「素直!恐いなぁー!」それに驚く高橋。

「もう行きますよ。作戦前に少しでも寝ておきたいんです。」

「ああ、勝手にしろ!」

 ロクが整備室から出て行こうとした時、高橋は再度ロクに声を掛けた。

「おい!ロク!」怒った口調の高橋。

「まだ何か?」嫌気な返事のロク。


「生きて帰って来い・・・」

 高橋はロクに背中を向けたままそう呟いた。

「はい・・・技師長・・・」

ロクは高橋の背中に語った。



23:01  P6指令室。弘士が指揮を取り各部に声を掛けている。

「レヴィアはどうなってる?」

「砲弾、ミサイルの積み込み完了!」

「ロクらは?」

「仮眠を取ってるのでは?」

「余裕だな?」笑う弘士。

「ただの馬鹿ですよ・・・」小声の曽根。

「救助作業は?」

「80%完了。西ゲートも今夜中には・・・問題はエレべーターかと・・・」と我妻。

「曽根参謀!後は任せていいか?一度、レヴィアに向かう!」

「了解!」



23:10  P6地下4階ポリス専用食堂。時間も遅いせいか、広い食堂に10名程が食事をしている。その1つのテーブルにロク、キーン、バズー、ダブルの4人が軽食を取っている。

「ああっ!?桑田がスパっ・・・!?」

「声でかいよ。バズー!」バズーの口を塞ごとするロク。

「どうりで・・・それで今回、指令室を外されてんのか・・・?」

「馬鹿にしやがって。どこまでジプシーをコケにすんだよ!」とダブル。

「俺が司令にハッキリ言ってくるよ!」

 バズーはいきなり席を立った。


「いやいや、お前が行くと余計話がこじれるから・・・」

 バズーを落ち着かせ、無理矢理席に着かせる3人。

「しかし、地下3階以降に入れる奴だろ?」とバズー。

「確かに・・・数は限られる・・・」とダブル。

「今回の作戦も漏れてなければいいんだがな?」とキーン。

「ほんとに一人で大丈夫かよ?」とダブル。

「今更なんだよ。ダブルの提案だろ?」

「そう聞くと不安になる・・・」


「なんとかする!」決めポーズまで入れるロク。

「出た出た・・・」声を合わせる三人。

「な、なんだよ?・・・じゃあ俺は少し寝る。みんなは?」

「寝るか?」

「そうだな?」

「ならここ2時集合で・・・」

「ああ・・・」

 4人は席を立ち、各々の部屋に帰っていく。



23:20  P6地下4階。ロクの部屋。

暗い部屋の中、ロクが毛布に包まってベットに寝ている。ロクは目を見開いたまま起きていた。よく見るとロクの体は小刻みに震えている。


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