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四天王  作者: 原善
第二章 松島奇襲作戦に賭けろ!
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その5 白装束

20:33  大会議室が静まり返った。ロクの単独の囮作戦に誰もが声を失っていた。


「1台で行くだと・・・!?」

 弘士がロクを睨むと、再びダブルの説明が続く。

「今回のタケシの奇襲ですが、先程も言いましたがロクはジプシャンから高く評価されていると思われます。初戦のタケシとの戦闘です。それでタケシは本領を出しP6を襲った・・・」

「あらら・・・そうかな~?」惚けるロク。

「P5の再三の偵察で、敵の兵からも“砂漠の雷獣”と呼ばれ恐れられているくらいです!」

「ロクがか・・・?」驚く曽根。

「司令?もしそのロクがたった1台で松島基地に突入したらどうでしょうか?」

「俺なら・・・まあ迎え撃つわな?」

「はい・・・」

「し、司令!?しかしそううまくいきますか?」と曽根。

「少なくても、仲間の仇を取りにきた“バカ”には見えると思いますが。なあキーン?」とダブル。

「ああ!死にに来たお馬鹿さんにな・・・」とキーン。


「おいおい・・・」細目のロク。

「いっそロクに白装束を着させて突入させますか~?」とダブル。

「おいおい・・・」頭を抱えるロク。

「だが・・・タイミングが合わなければ、ロクは犬死だぞ?」と弘士。

「ジャガーのエアーブースターがあります!」

「ん?」

 

 ロクが再び息を吹き返し会議に入って来る。

「最悪、崖は這い上がりますよ!」

「砲撃前に、浜田に突入はいいがタケシの50台に常駐を合わすと70から80台はある。それはどうする?」

「なんとかします!!」

 ロクの言葉にキーンは一人薄ら笑いをする。 

「出た出た・・・」


「馬鹿な!一台でなんとかなる数か!?」呆れる曽根。

「司令?浜田基地は1台の攻撃に70も迎え撃ってくれるでしょうか?」

「うーん・・・俺なら出して20台前後だな・・・?」と弘士。

「ですよね~だから1台で行く事に意義があるんですよ。これが5台、10台なら“作戦”に見えるのです!」


「わはは、確かに、敵討ちにきたバカには見えるな!」バカ笑いする弘士。

「おいおい、司令まで・・・えーそこで浜田を突破されれば、松島も出てきます。どうでしょうか!?」

「ふふふ・・・確かに面白いな!」他の参謀も意見してくる

「はい!」声を揃えるロクたち。

「幹部で検討する。お前らは下がっていろ!」弘士がロクたちに叫ぶ。

「了解!」



20:37  P6大会議室前廊下。ロク、キーン、ダブルと桜井が出てくる。

「もう一度、練ろう。絶対成功させたい!」とロク。

「うーん・・・柳沢の力がいるな・・・?」とキーン。

「指令室に行こう!」



20:38  P6大会議室。弘士や他幹部がいる会議室に久弥が入って来る。

「もう戻られましたか?」と弘士。

「聞いてたよ。ロクの作戦・・・」

「少し無理があるような気がしますが・・・」

 曽根はロクの案を無理と感じていた。


「P5の事を思って立てた作戦だろ?あいつらしい。確かに可能性は無くはない。」

「敵の裏を突く面白い作戦とは思います。しかし、ロク一人で突入させるのはとてもまともな作戦とは・・・」他の参謀たちが口を揃える。

「ロクは狂ってます。奴の作戦では・・・」曽根も賛同する。

「賭けてみようじゃないか。その奇襲作戦・・・」

「はあっ!?」驚く曽根。

「しかし・・・」顔を見合わせ不安そうな参謀たち。

「P5が落ちればこちらも危ない、多少の援軍になればいいが・・・ワシの4番艦も出す。1、2、3の帰りのルートを確保する為、湾の入口の機雷を砲撃しよう。」

「しかし、それでは・・・」

「犠牲が出てもロク一人・・・なにかまずいことはあるのかね?曽根参謀?」

「下手すればレヴィア3隻もです。湾内にどんな仕掛けがあるかわかりませんよ!」と曽根。


「先頭は桜井の1番艦・・・奴ならやってくれる。それで駄目なら仕方あるまい・・・即2、3番艦を撤退すればいい。」

「しかし・・・」

「曽根?松島基地側にいるジプシーは何人いるんだ?」

「何年か前の資料ですが、25名程ですが・・・」

「軍人相手で食いつないでる若い女ばかりだろ?恐らく子供もいるはずだ。」

「そう聞いてます・・・」

「その命まで救うために、ロクは自分の命を掛けようとしてるんだ。俺なら松島基地砲撃後、ジプシーが居るのは知らなかった・・・なんて後から弁明するとこだがな・・・曽根参謀もそうするだろ?」

「い、いや・・・私はそんな・・・」

本音を久弥に突かれ慌てる曽根。そんな中、弘士だけが黙っている。

 

「わしはロクを信じてみる・・・一人の兵を信じてみる!これじゃ指揮官として駄目かな、弘士?」

「リスクはロク一人ですか・・・?」

「敵も数時間で反撃してくるとは思っていまい。そこを突く!」

「わかりました!」弘士は納得した。

「司令!?」曽根が弘士の顔を伺う。

「弘士は2番艦で総指揮、曽根!お前は3番艦だ。」

「ははっ・・・」

「1番艦は桜井でよかろう。SCは1台も出さない。これでいいか現司令?」

「はい。前司令・・・」互いに見つめ合う久弥と弘士。



20:41  P6指令室。桑田の席に、ロク、キーン、ダブル、桜井の4人がやって来た。

「桑田?俺の式典用の白い軍服があったよな?」

「ありますが・・・2年前ですよ。少し太られません?特にズボンは・・・あっ失敬!」


「おいおい・・・言うね~なら上着だけ用意してくれよ。」

「どうするんですか?」

「着て行くんだよ。戦場に・・・」

「まるで戦場に死にに行くみたいじゃあ・・・?えっ?えっ!?それどういう意味ですか!?」驚く桑田。

「敵に覚悟を見せるだけだ。大した意味はない。」

「そ、そうですか・・・分かりましたが・・・」何か腑に落ちない桑田。


「柳沢!忙しい所悪いんだが、もう一度時間を逆算して欲しい。」

「は、はい!」

「満潮が4時24分・・・この時間に湾入り口を通過。しかも3隻のレヴィアをだ。それから、各基地を砲撃ポイントまでの移動。浮上から砲座を出して、標準を合わせる。俺はいつ浜田に突入すればいい?」


「ジャガーの足ならレーダー範囲から浜田まで、3分で到着するな・・・まずそっからだな!?」 とキーン。


 キーンがパソコンをいじる柳沢に注文を入れた。

「レヴィアなら入り口からポイントまで10分、急浮上で砲座用意まで3分でしょうか?」と柳沢。

「レヴィアの砲撃位置到着後ならいつでもいいんじゃないんですか?」と桜井。

「とは言え、あまり遅いと日が昇る。レヴィアが海上にいるのが分かる程度の明るさでは駄目だ。奇襲の意味がない!そうだろロク?」

 桜井とキーン、ダブルの意見が続いた。


「日の出か・・・さすがキーン!そんな計算まで・・・桑田?明日の日の出は?」とロク。

「明日は・・・05時25分ですね!」

「問題は浜田から松島に応援を要請し出てくる時間か?」

「どっちにしろ、時間はないのは確かだな?」


「面倒だから、04時24分の満潮時に突っ込むよ!」とロク。

「は、早いですよ。なんかヤケクソになってませんか?ロクさん?もしレヴィアに何かあったら・・・」

「桜井。その時は、作戦はなし!」

「なしって・・・そ、それではロクさんが・・・?」

「・・・なんとかする!」

 

 ロクのいつもの名セリフを桑田は一人、小声で楽しんでいた。

「出た出た・・・」

「そうだな・・・そん時は、海にでも飛び込むよ。」

 そのセリフには、桑田は口を挟んだ。

「ロクさん・・・人が整備したSC放り出すの!?」

「最悪な・・・機雷の海を泳いで帰るよ!これでいいかな?みんな?」

「ああ、後はロク次第だよ。」とダブル。

「そう言えば、俺らの出番がないんだよな・・・?なあダブル?」とキーン。

「えっ?」

「そうそう、少しは俺らの見せ場くれよ?」とダブル。

「後方支援で・・・どう・・・?」恐る恐る二人を見つめるロク。

「納得出来ないなぁ・・・」


 腕組みして、ロクに対峙するキーンとダブル。

「んー。ジプシャンの情報が欲しい。砲撃の合間に浜田基地に侵入。情報を盗む・・・スパイの濡れ衣を晴らす・・・は?」

「まあいいだろう。どうだダブル?」

「ん!?・・・情報収集なら俺の出番ってとこだな・・・いいだろう!」

「忘れてた!バズーは・・・ん~と、切り込み役でいいかな?」


 後ろでわいわい騒ぐ3人の様子を見ている桑田はなぜか嬉しそうだった。

「桜井さん?まるで、みんなでどっかに遊びに行くみたいですね。とても作戦をするように見えないわ・・・」


「この人たちとっては、そうなんだろうな・・・どこか楽しんでるよね?・・・って桑田さん?指令室入ってるし?」

「あっ?いっけねぇー!」


 慌てて指令室を飛び出す桑田。そこへ、弘士、久弥、曽根の3人が指令室に入って来る。

「おやじさん!?戻られたんですか?」ロクが叫んだ。皆が久弥の元に集まる。


「ロク!お前の作戦を実行する!」と弘士。

「はい!!」

「各員!作戦準備に掛かれ!」

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