表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
四天王  作者: 原善
第一章 プロジェクトソルジャー
31/209

その31 夕焼けのバラード

 ロクは聖を背負い、必死の形相でP6の地下廊下を走っていた。

「ど、退いてくれ!」

廊下にはたくさんの負傷者が座り込んでいる。皆ジプシーだ。ロクの向かう先には少しづつ人が多くなり、廊下を走るのも困難になっていく。ロクはそこを掻き分けて行く。

「先生っ!?」


 ロクが着いたのは、地下三階のジプシー専用の医療室だった。関根の他、僅か10名程のスタッフがジプシーの手当てを手早く行っている。患者はスタッフ以上。既にそこは戦場だった。


「先生!?この人を・・・」

 関根はロクが言い終わる前に口を挟んだ。


「急患!?それ以外は今無理よ!」

 関根の言い方に、ロクも事態を把握した。


「突っ立ってないで、あんたも手伝いなさい!もうポリスは全然応援も寄越さないんだから!」ロクについ不満をぶつける関根。

「酷い火傷なんです。どうしたら・・・」

「とにかく、まず冷やして!それから隣の部屋から包帯とガーゼを持ってきなさい。」


「は、はい・・・」

「終わったら下から、桑田や松井たちを呼んで来なさい!出来ればポリスの医療スタッフもね!」

「分かりました!」

「いい?みんな!重い患者を優先よ!軽い怪我の人は後回しよ!」


 スタッフが10名程しかいないジプシー専用の医務室は、既に戦場以上となっていた。次から次へと運び込まれて来る患者たちに、関根は苦悶の表情を作っていた。



 街を彷徨う、直美とその兄妹たち。

「お姉ちゃん・・・?」雨音は直美の手を引っ張った。

「お父さんは?どこに行ったの?」と勝也。

「家の形が・・・街はどうなちゃったの・・・?なにがあったのよ・・・?」直美は呆然とし三人は街をただ歩くしかなかった。



 ポリス指令室。弘士がポリススタッフを中央に集めていた。

「まずは、ジプシーの救出が優先だ!それから西ゲートの復旧!エレベーターはその次だ。人手はいる!P7の海兵も呼び戻す。いいな!?」指示を出す弘士。

「了解!」


 そこへロクが指令室に入って来る。

「桑田、松井!関根さんのところ手伝えないか?司令!医療室が負傷者で一杯だ。スタッフも手が足りん・・・それとポリスの医療スタッフも・・・?」

「手配してる。松井、桑田。いいだろう、行ってやれ。」

「はい!」


 桑田と松井はインカムを外すと司令室から出て行く。

「被害は?」

「死傷者で7000人・・・まだ増えるな・・・」

「そうか・・・ダブル!?」


 そこにダブルが入って来た。

「司令、ロク・・・軍施設に隔離していた大場だが・・・」

「どうした?」とロク。

「射殺されていた・・・」

「どういうことだ?」と弘士。

「車の銃弾ではない。拳銃の銃弾だ。胸を撃たれて即死していた・・・」

「護衛がいたじゃないか?」

「護衛も撃たれていた。俺が見つけた時には、護衛にはまだ息があった・・・撃った犯人は若い女だと・・・」

「若い女だと・・・?」

「あそこは軍関係者しか入れない。やはり軍部にスパイがいるのか・・・?ほ、他の家族がいたはず!どうした?子供たちは?」

「家にはいなかった。シェルターにもだ・・・」

「そうか・・・」


 弘士は桑田に案内をさせた事を思い出した。

「桑田が、大場たちを家に案内したはずだが・・・」

「桑田に聞いてみる。それと昨日、投降した聖だが・・・」とロク。

「どうした?」

「今、医療室にいる。酷い火傷を負ってる。」

「そうか・・・」

「自分、医療室に戻ります。負傷者が増えてますので!」

「頼む。」


 ロクは弘士に敬礼をすると指令室を慌てて出て行く。

「やはり、ポリス内にスパイはいるのでしょうか?」とダブル。

「わからん・・・」

「キーンとバズーは?」

「街で救出作業にまわっている。」

「私の隊もそちらにまわります!」

「頼む!」



 地下3階の医療室。山口ら黒豹隊も負傷者を手当てしている。そこへロクがやって来た。

「山口!すぐ偵察だ!」

「はあ?どいういう事です!?」

「敵SC隊を追え!また襲って来る可能性がある!」

「ひ、一人でですか?」

「逃げるのだけは得意だよな・・・山口?」

「は、はい・・・」顔が引き吊る山口。

「それと桑田を捜しているんだが?」

「奥にいますよ・・・」

「了解!早く行けよ!いいな?」

「り、了解!」



 医療室の奥に入るロク。関根の患者の足を押さえる桑田と松井。

「桑田!大場の家族はどこだ?」

「学校のシェルターです・・・どうかしたんですか?」

「行方不明なんだ。わかった。ありがとう。」

「私も行きます。松井さん!あとお願い!」

「わかったわ!」

 そう言うとロクと桑田は医務室を出て行った。



 地上に向かうエレベーター。

「直美さんたちがどうしたんですか?」

「父親が何者かに撃たれた・・・故意的にな・・・」

「えっ?それで大場さんは?」

「死んだ・・・」

「そ、そうですか・・・」

「家族の直美らも危ない・・・」

「そ、そんな・・・」



 再び街に出るロクと桑田。先程と違ってポリス兵や、他のジプシーが救出作業を行っていた。 ロクはあるシェルターから出てくる。

「学校のシェルターにはいない・・・」

「私、大場さんの家に行きます!」

「ダブルの話だと居なかったらしい。」

「静まってから戻ったかもしれない。」

「そうだな。手分けしよう!」

「はい・・・」

 


 ロクが瓦礫の街を捜索していると、ある建物から直美と弟、妹が出てきた。

「無事だったか・・・」とロク。

「父が家にいないの・・・どこかに運ばれてない?」

「実は・・・大場さんは・・・」幼い子供たちの前で、言葉が出ないロク。


「父はどうしたの!?」

「死んだんだ・・・」

「えっ・・・」


 二人に声はなかった。 P6街は長い影が帯び、日が暮れようとしていた。



  四天王 第一章 プロジェクトソルジャー 完




      第二章予告  


ロク「桑田がスパイ?」

弘士「あの時、地上にいたのは桑田だけだ・・・大場を暗殺出来たのは・・・」

ロク「ふざけるな!!仲間を疑うのか?」


女性二人に囲まれ酒を飲むタケシ。

タケシ「わはははー。P6なんざ、口ほどにもないわ!」


死龍「私がP6に行く!ロクを助けれるのは私しかいないわ!」


桑田「生きて戻ってきてください。」

敬礼する桑田。車の中から桑田に親指を立てるロク。


直美「何で父は死んだの!ここは安全って言ったじゃない。」

ロクに激しく詰め寄る直美。


ヒデ「タケシを殺してここを脱出する・・・」

丸田「面白い。」


曽根「ロクは狂ってます。奴の作戦では・・・」

久弥「賭けてみようじゃないか。その奇襲作戦・・・」


病室のベットで寝ている聖。

聖「私が・・・奴らを説得する・・・」

ダブル「その体じゃ無理だ!」


バズー「なにやってんだ!あと2分だ!!」

バズーが銃撃し、機械の前で焦るダブルとキーン。



『ロクが放つ奇襲作戦とは?そしてポリスの怒涛の反撃が始まる!』


海上から浮上するレヴィア3隻。砲座が上を向く。

桜井「発射5秒前・・・4・・・3・・・2・・・1」


ロク「あんたらが、いつまでもこんな差別をするから、この戦争は終わんないんだ!」

会議室の中、一人立ち上がり怒り叫ぶロク。



ロク「必ず生きて帰る・・・」

 見詰め合うロクと桑田       




  次回 四天王 第二章 松島奇襲作戦に賭けろ!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ