その30 ポリス爆破命令
レヴィアは海上に浮上した。浮上と同時に甲板前部の砲座口が開き、2連砲塔が上がってきた。ブリッチからは既に海岸が見え、その先にはP6が煙を上げているのが分かった。
レヴィアの砲座内に15、6の少年兵が一人いた。レヴィア1番艦主砲担当の砲撃主で名は多聞。
「おい?桜井?砲撃目標は!?さっきの指示じゃ街を砲撃する事になるぞ!?いいのか!?」
レヴィアブリッチ。
「少し待て!多聞!」と内線に叫ぶ桜井。
「P6までの射程距離は?」ロクが国友に問う。
「あと1キロ!」
「砲撃用意だ!」ロクが指示を出す。
「主砲は出しました。しかし、すぐ傍に味方もいるようです!」と桜井。
「三島!P6に連絡、西ゲートの味方を下げさせろ。こちらから砲撃が出来ん!」
「了解!」と三島。
「国友?敵のSCの様子を細かく報告しろよ!?」とロク。
「了解!」
丘の上のヒデたち。
「海の方を見ろ!ポリスの海竜が浮上してきたぞ!」海岸を見ていた丸田が叫ぶ。
「丸田!装甲車の無線で、タケシに連絡してやれ!海から海竜が来たと!」
「わかった!」
街内を走行中タケシのストラトス。
「何っ!ポリスの援軍だと?海からだぁ?あと少しで撤退する。まだ海の上だ!そう簡単に砲撃出来んだろ!?石森!外の連中に敵と一緒にいるように言え!砲撃される!出来るだけ敵を引き付けておけ!嶋はいるか!?各エレベーターへの作業はどうなってる?」
『はい!なんせ数が多く・・・頂いた街の地図ではなかなか街を移動出来ません!』と嶋。
「半分でいい。壊滅しては姉貴に叱られる。それと奴は出て来ないのか?」
『外にはいません!』と石森。
『中にも見当たらないです!』と嶋。
「雷獣め、どこだ!?今度こそ決着つけてやる!」
P6指令室。桑田が遅れて部屋に入って来る。
「遅くなりました!」
「遅いよ!ロクさんのレヴィアとの無線をお願い!西ブロックの敵のSCをレヴィアで砲撃するの!その細かい指示を出してあげて!」
「了解!・・・松井さん?状況は?」
「悪いよ。とってもね・・・街は白兵戦になっている。被害は見当もつかないわ・・・」
「変です!街のSC隊が外に出てきてます!撤退と思われます!」と柳沢。
「なぜだ?圧倒的なのに・・・桑田!西ゲート部分に敵が集中すると思われる。そこを砲撃を出来ないかとロクに伝えろ!」
「ほ、砲撃を?に、西ゲートをですか?」と桑田。
「西ゲートごとだ!西ゲートの守備隊を下げろ!」
「了解!レヴィア?聞こえますか?西ゲート近辺に砲撃出来ますか?」
『波が高く、正確な砲撃は不可能だ!陸地に上がるまで待てないか?』とロクの声。
「敵がなぜか引き上げているんですよ!」
『こちらに気づかれたな・・・』
ジプシャン軍本部。寛子が例の部屋に座っていると、参謀の犬飼が入って来る。
「総帥!浜田基地より連絡!タケシ様の第一SC隊がP6を襲っているそうです!」と犬飼。
「馬鹿な!タケシは今朝、北のP5に向かったのではないのか?」犬養がその報告に驚く。
「どこかでUターンして戻られた様子です!」
「寛子さま・・・如何いたしましょう?」
「すぐタケシを呼び戻せ!」寛子が呆れた顔で命令する。
「はい!」
「タケシ・・・何をやっているのだ!?」
タケシのストラトス。
「設置した者から撤退させろ!急げよ!」
『了解!』と嶋。
「石森!後続は任せるぞ!」
『了解!』と石森
「ヒデのいる丘に全車を集める。早坂の2番隊は全車P6から撤退させろ!」
その頃、ダブルのジャガーストームはP6内で、敵SC隊と交戦中だった。
「敵が引き上げてるぞ。指令室?どうなっているの!?」とダブル。
『レヴィアが上陸します。それを勘付かれた様子です!』と松井。
「ロクか!?またあの野郎!おいしい所を・・・バズーに西ゲートに行けと言え!敵は西に集中するぞ!」
『いえ、このまま西ゲートごとレヴィアで敵を砲撃する予定です!各車、敵の追撃は行わないで下さい!』
「西ゲートごとか・・・無茶しやがる・・・了解だ!」
その頃、ロクの乗るレヴィアはP6の南の海岸に上陸していた。レヴィアは下部の部分から大量の空気を放出し、巨大な砂煙を吐き荒野を走り始めた。時速は30キロ程度だったが、その姿は砂漠を走る船でもあった。
レヴィアブリッチ。
「桑田?街の中の敵SCは?」とロク。
『撤退しています!ダブルさんらが西に追い込んでいます!』
桑田の報告とは裏腹に、ロクは疑問が残っていた。
「なぜだ?この船だけで逃げる相手じゃないぞ・・・?」
「しかし・・・さすがにタケシですね?逃げも早い・・・」と桜井。
「国友!敵の動きを全て報告しろよ!」
「了解!現在何台かは例の丘に集結しつつあります!」と国友。
「丘だと・・・?」
P6指令室。
「敵は丘の上に集結しつつ・・・」と柳沢。
「数が数だ!我妻!ダブルに深追いするなと伝えろ!」と弘士。
「了解!」
「司令?夕方になります。敵も帰りのバッテリーを考えているのではないでしょうか?」と曽根参謀。
「それなら、日が高いうちに襲っているはず・・・ロクのレヴィアは?」
「間もなく、南ゲート付近に着きます!」と桑田。
「みんなよく耐えた!街の救出に向かえ!」
丘の上に到着していたタケシ。ヒデや丸田もいる。皆P6を見下ろしていた。
「皆帰って来たようだな・・・?さあ、ショータイムだぜ!」
タケシは何かのボタンを押す。すると先程、嶋の隊がP6の地上エレベーター部分に仕掛けていた爆弾が各地で爆音を出しながら爆発した。
レヴィアブリッチ。
「なんだあの爆発は!?」ロクは驚いた
「西ブロック住居地区近辺です!」と国友。
P6指令室。
「な、なに?地響き・・・この音?」怖がる桑田。
「な、なんなんだ柳沢!?」
「各エレベーター!爆破されてます!」
「敵の罠か・・・?」弘士は嘆いた。
エレベーターで街に救出していたポリス兵らが箱のままシャフトを落下し最下位部で爆破していた。ポリスの街中も次々と炎と煙を上げていた。街中で救出活動していた者もこの爆発に巻き込まれていた。
レヴィアブリッチ。レヴィアは西ゲート近くに停泊した。時はタケシ撤退から一時間程が経過していた。日は沈みかけ、街の建物に長い影を落としている。
「だいぶやられたな・・・指令室は?」ロクは無線を握る。
『無事です。エレベーターがだいぶ落下して、被害は拡大してます・・・』と桑田。
「外から見てると建物の数が減ったな・・・」
『41エレベーターは無事です。そこから地下へ・・・』
「みんな無事なのか?」
『一応は・・・』
「そうか・・・」
桑田の声も沈んでいた。
ロクはP6の街中を歩いていた。車で来たのだが瓦礫が多く途中から歩きだしていたのだ。街に動くものはなく、燃えている建物からは煙が出ている程度だ。道端には黒こげに焼き爛れた死体から、銃で撃たれて血まみれになった死体まで瓦礫以上にジプシーの死体の数が多かった。
その一つが微かに動いているのに気づいた。ロクは急いでそこに近づき、微かに動いていた体を抱き起こした。
「おい!しっかりしろ!」
顔に火傷を負っていた。服も所々火で燃えたあとがある。性別は僅かに女性と分かる程度であった。その時、ロクはある事に気づく。上に着ている服は違うが中に着ていたタンクトップが露出が多い事だ。
「まさか・・・?ひ、ひじりさん!?」ロクは驚いた。