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四天王  作者: 原善
第一章 プロジェクトソルジャー
29/209

その29 女スパイ

 P6の街に警報が鳴り響いた。だが街は警報が鳴っても慌てた様子もなく、避難する者は少なかった。最近よく警報が鳴る事が多く、しかもいつも何事もなく警戒が解除されるせいでもあった。街のジプシーは警報がなっても、各家の地下シェルターに入る者はあまりいなかったのだ。


 桑田や直美がいる学校近辺も、地下に避難する者が少なくまだ地上にいる者らの方が多いくらいだ。

桑田は慌てて、直美たちに向かって叫んだ。

「警報!?また敵が来たんだわ!私は指令室に戻るわ!大丈夫だと思うけど、直美さんらは一応ここの地下シェルターに入って!」


「わかった・・・さあみんな入るよ!」妹たちをかばう直美。

「どうして、みんなは逃げないの?」

 雨音は他のジプシーらが逃げないのを見て、直美に問う。


「いいから、入るわよ!」

 桑田は直美が地下に入るのを見守ると、急いで指令室に向かい街を走り出した。



 P6指令室。

「第一波!あと5分で来ます!西ブロック方面!」と柳沢。

「機銃、砲座配置完了!」我妻が叫んだ。

「街の避難はまだか?」と弘士。

「まだ避難してない者がたくさん街中を・・・」

「松井!再度警報だ!何をしてるんだ!?」

「は、はい!・・・もう!なつみどこに行ったのよ!?」

松井は空席になったなつみの席を見つめた。


 指令室内は緊張感が高まった。

「丘のキャンプは?」と弘士。

「まだ動きはありません!」と柳沢。

「風神出れます!」と我妻。

「少し待て!数が多すぎる!40台では・・・ダブルは?」

「地上までまだ掛かりそうです!」

「バズーは?」

「東ゲートで待機してます!」

「ひ、飛行物体です!ミ、ミサイルです!」柳沢が叫ぶ。

「な、なに!?」



 P6の西から来たのは、ジプシャン軍SC本隊で、ミサイル部隊である。

150台あるSCの約120台が屋根部分に4発の小型ミサイルを搭載していた。100発近いミサイルはP6の高い壁を越え街へ降り注いだ。街は避難途中の者もたくさんおり、その中にミサイルは着弾した。


 爆発する家、吹き飛ぶ人々。直美らがいる学校近くにもミサイルが着弾し爆発する。直美たち3人は地下のシェルターで頭を押さえ身を屈めていた。



 P6指令室。

「西ブロック、被弾!」松井が叫ぶ。

「柳沢!被害は!?」

「14、16、17から20のエレベーター破損!」

「住居ブロックに被害拡大!」

「奴らなぜSCにミサイルを・・・」

「司令?こちらもSCを!」と曽根。

「数が違いすぎる・・・砲座は?」

「応戦中!何台かは撃破!数が多すぎると言ってます!」

「バズーさんからです。ゲートを開けろと・・・」焦っている松井。

「少し待たせろ!今は危険だ!外壁の機銃で出来るだけ対抗しろ!」と弘士。

「キーンさんからも連絡!ゲートをすぐ開けろと言ってます!」松井に無線が集中する。

「まだ駄目だ!・・・広角砲!何してる!」



 丘の上のヒデキャンプ。ヒデや丸田の他、たくさんの仲間が被爆されてるP6を見下ろしている。

「始まったぞ!ヒデ!」丸田が立ち上がった。

「なんて数だ!まるで死骸に群がるハエだな・・・」とヒデ。

「これがストラトスのタケシか・・・」

「こっちは見てるだけかよ・・・」唇を噛むヒデ。



 ジプシャン軍のSC本隊。ストラトスにはタケシが乗っていた。タケシは無線を飛ばした。

「2番隊、正面のゲートにミサイルを集中しろ!中へ突入する!」

『2番隊了解!』



 P6の西にある住居地区は一部火の海となっていた。聖はその火の街を彷徨い歩いていた。所々火傷を負いふらふらの状態で意識を失い欠けていた。

「きゃーっ!」

そこを更にミサイルが降り注ぎ、聖は炎の中に消えていった。



 P6指令室。

「敵SC西ゲートに集中してます!」と柳沢。

「予備兵全てを西ゲートに!」と弘士。

「了解!」

「敵がばらけたな!?今だ!風神、アシカム出せ!」

「北、東ゲート開けます!」



「発射!」

 タケシ隊の二次部隊が放ったミサイルはP6の西ゲートを直撃。左右のゲートを破壊した。高さ8メートル程の分厚いゲートが中で待機していた守備隊を押し潰すように倒れていく。


「よし!突入する!動く者は女子供も皆殺しだ!」

 タケシ率いる三次部隊が西ゲートからP6に進入して来た。タケシのストラトスは街に侵入、道行くジプシーを機銃で撃ちまくっていた。白い外壁の町並みが血で染まっていく。



 P6指令室。

「西ゲートが内側に倒れた?守備隊が全滅?どういう事だ!?」

「敵SC、街内に入り込んでいます!」飛び交う無線。

「くそっ!守備隊はどうしてる!?」と曽根。

「一部が応戦中ですが・・・ゲートに押し潰された者も多く!」

「補助電源作動しません!西ブロックのエレベーター使用不能!兵を送る事も出来ません!」

「他のブロックに振り分けろ!」曽根が叫び続ける。

「ジプシーの死傷者多数!救助班を上に!」

「三班!?どうした!?・・・西ブロック守備隊応答なし!」

「SC戦が無理なら各員銃を持て!街の中で各建物を使ってでも白兵戦に切り替えるぞ!瓦礫で敵も易々と街の奥まで入れんはずだ!?」独り厳しい表情の弘士。



 北の軍ゲートから出たキーン率いるSCの風神隊は、敵SCと交戦中だった。

「指令室!数が多すぎる!歯が立たない!ダブルはどうした?ダブルの援護が必要だ!?」とキーン。

『こちら松井!停電やエレベーターの故障で地上に上がれないのが多数で、閉じ込められてる者も多く・・・他のブロックに振っていたり、別のを使ってますが、街の道が瓦礫で封鎖されており自由に移動が困難になっています!』

「もういい!!バズーはどうした!?」

『今そちらに向かってます!』



 その頃、海中を航行するレヴィアにも無線が入った。ロクの座っている艦長席のモニターに我妻の姿があった。

『P6はミサイルで攻撃を受けており・・・』

「ミサイルだと?敵はSCだけだろ?」

『敵のSCに搭載しているのを確認しています!』

「すぐ戻りたいが、この足だ・・・」とロク。

『西の住宅街に侵入されており・・・』

「なんだと?あのゲートが破られたのか!?浜に上がり次第、すぐ艦砲射撃で援護する!随時連絡をくれ!」

『了解!』

「頼むぞ!」


 無線が切れるとロクは席を立ち上がった。

「桜井!艦を浮上させる。ジャガー出撃もある。浮上と同時に主砲用意!桜井?こいつの射程距離は?」

「約3、8キロメートル!」と桜井。

「海上からでも撃てるのか?」

「可能ですが、波があり海上からは正確な砲撃は不可能かと思いますが、うちの砲撃手なら任せて下さい!」

「とにかくP6へ急行しろ!全速だ!」

「了解!多聞?聞こえるか?浮上と同時に主砲を出すぞ!主砲用意!方位そのまま!角度35度!」桜井が内線を掴む。

『了解!桜井!?訓練じゃないよな?』聞きなれない声。

「実戦に決まってるだろ!」内線に怒鳴る桜井。


「タケシの奴、やはり・・・みんな・・・持ちこたえてくれよ・・・」焦るロク。



 街はパニックになっていた。破壊された街を逃げ惑う人々。地下シェルターから火が着いたまま飛び出してくる者。建物の下敷きになりもがき苦しむ者。そこへジプシャン軍のSCが流れ込んでくる。


 大場の新しい家でも、大場が地下のシェルターに入っているが、子供らが気になって1階と地下を行き来している。するとすぐ側で銃声が聞こえる。地下にいた大場は驚き、地上へと上がろうとした。

 

 その時だった。大場の前に黒いヘルメット、体のラインがわかるライダースーツを着た者が突然銃を持って現れた。その容姿は女性で大場に一歩一歩近づいて来た。


「誰だ貴様・・・!?」

「久しぶりね?大場・・・」ヘルメットの奥から女が答えた。

「まさか・・・る、瑠南花るなかか・・・?」大場は女を見て慌てた。その女は引き金を引き、大場に狙いを付ける女。


 突然、一発の銃弾が大場の体を貫いた。 

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