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四天王  作者: 原善
第一章 プロジェクトソルジャー
28/209

その28 なつみとなおみ

 レヴィアブリッチ。桜井が艦長席に座るロクに向かって叫ぶ。

「出発しますよ。艦長!」と桜井。

「艦長って・・・お、俺かい?」

 桜井の突然の言葉にロクは動揺する。


「はい、おやじさんに帰りの指揮はロクさんにやらせろって。」

「か、艦長をか?で、出来るわけないだろ?俺は陸戦歩兵部隊の・・・」

「ふふふ、嘘ですよ!ただそこに座っててくれれば、後は我々がしますから・・・」

「そ、そうだよな・・・?」ホッとするロク。

「左がレーダー員の国友、右が通信兵の三島です!」桜井が二人のクルーを紹介する。

「国友です!」

「三島です!ロクさんを乗せれて光栄です!」

「ああ・・・頼む・・・」顔が益々強張るロク。

「ふふふ、この人結構人見知りなんだよ!」笑いながら二人に紹介する桜井。


 諦め半分で今朝おやじさんが座っていた、後方の指揮席に腰掛けるロク。ブリッチが慌ただしくなった。

「アンカー切り離せ。レヴィア1番艦潜水準備!」

「進路クリアー!ブリッチタラップ上げます!」と三島。


 1番艦のブリッチの階段が上がり、ブリッチは密閉される。桜井は艦内用の無線のプレーストックボタンを押し放送を始める。

「本艦はこれより、潜水航行を取る!各員配置につけ!」


『艦内異常なし!左右バランス良好!』スピーカーが鳴る。

「潜水します!」桜井が操縦管を引く。


 レヴィアはP7のすぐ側で海に潜り始めた。30メートル程海底に潜ったあと停止する。

「180度反転。取り舵一杯!」

 レヴィアはその場で艦首を反対側に向け始めた。

「進路P6。微速前進0、5ノット!」

「P7より無線。ロクさん宛てです!」と三島。

「こっちに繋げ!」


 ロクの座っていた席のスピーカーより久弥の声が聞こえた。

『ロクか?弘士に志願兵を頼むと伝えてくれよ。』

「はあ?」

『至急、兵らは海兵としてものになるまで鍛えると・・・』

「了解です!」

『任せたぞ。ロク・・・』



 P6の街外れ。ある建物から大場の家族が現れた。そこへ待ち受けていたのは桑田だった。

「大場さんですよね?」と桑田が笑顔で近寄る。

「そうだが・・・」と大場。

「家まで案内を任されました。桑田と言います。」

「よろしく。先日は・・・」

「よろしく・・・」と直美。

「家はこちらになります。行きましょう!」

「はい。」


 桑田は先頭を歩きながら、後ろの直美に話しかける。

「ダブルさんが喜ぶ訳が分かりました。」

「えっ?」突然に驚く直美。

「綺麗な人って言ってましたけど、直美さんですよね?」

「あいつ・・・そんな事言ってたの?」目が険しくなる直美。

「はい!」

「なんか鼻に付くのよね。あの背の低いの・・・そしてもう一人の奴・・・」

「だ、だ、誰ですか?」嫌な予感の桑田。

「ロクだっけ?あいつの名前?」軽く握り拳の直美。

「ああ、ロ、ロ、ロクさんですか?ま、まぁ変わりもんで屁理屈屋で頑固ですけどね・・・ははは・・・ははは・・・はぁ・・・」何か気まずい直美との間の空気。


「あいつの事、よく知ってるの?」今度は直美が質問する。

「私、ロクさん専属のメカニックなんです。っていうか、子供の頃からいつも一緒で兄貴なんですよ。ダブルさんもみんなです!」

「そうなんだ・・・そう言えば、あいつ四天王なの?」

「しっ!・・・ここでは四天王って禁句です。四天王狩りはポリスの中でもあるんですよ。ジプシャンはどうも街にスパイを侵入させているようで・・・」


 桑田は直美の四天王の言葉に敏感に反応し辺りを警戒した。

「そ、そうなんだ。」口を手で覆う直美。

「ど、どうしてロクさんが四天王だと?」

「父がね・・・保護された帰り、車の中であいつに向かって四天王じゃないかって聞いたら、最初はハイって言ったんだよ。」

「あ、あいつ・・・」次は桑田が握り拳を作る。

「えっ!?どうしたの?」

「いえ、べ、別に・・・そ、それで?あいつ・・・いえロクさんなんて言ったんですか?」

「四天王さまが直々にジプシーの保護に来ますかー?って言ってたかな?」

「そ、そうですよね。そ、その通りですよ・・・」何か誤魔化そうとしているなつみ。

「四天王様って言うくらいだからやっぱり違うのかな?でも変な奴だよね?あいつら・・・?」

「た、確かに変わってます。でも・・・」

「で、でも・・・?」ここはすぐ突っ込む直美。

「優しいですよ~ん!ロクさん・・・」


 既に自分の世界に入り、一人照れるなつみに対し、直美は冷ややかな視線だった。

「ふーん、そうなんだ・・・桑田さんでしたよね?桑田さんはポリスの“人”なの?」


「い、いえ・・・私、ジプシーの出で・・・」

「そうなんだ。なんだ同じだね。私、ポリス嫌いなんだ。逃げてるばっかだもんね!」


「す、すいません・・・」

「なんで桑田さんが謝るの?私はポリスが嫌いと言っただけで・・・」なぜかなつみの態度に恐縮する直美。

「ここで育ったんです・・・ポリスに助けられたと言うか、育てられたというか・・・」

「そうか・・・ごめん・・・そうだよね?ここで育ったらここが故郷

だもんね・・・?」

「い、いえ・・・」再度頭を下げる桑田。


「ねぇ?なつみちゃんはいくつなの?」と直美。

「15です。もうすぐ16ですが・・・」

「15?なんだ~!一緒じゃん!」

「そうなんですか。全然年上に見えました。嫁がどうのこうのって言ってたんで・・・」


 直美が険しい顔でなつみを覗き込む。

「な、何よ?嫁ぇー?い、いきなり、何の話よ?」今度は両手が拳の直美。

「い、いえ、こっちの話です・・・」気まずくなった桑田。


 そこに大場が慌てて二人の会話に割り込んでくる。

「そ、その話は、冗談だよ・・・」と大場。

「えっ?お父さんまで・・・ちょっと、何なの二人して・・・」怒る直美。

「そ、そうなんだ・・・冗談でしたか・・・あっ、ここが大場さんたちの新しい家になります。」


 そこは街から少し離れた所にあった家であった。他のジプシーが入れない軍施設内に10軒くらいの家が立ち並んでいる。家の近くには機関銃を持った兵が3名程見える。


「給食センターは向こうになります。学校はあっちです。しばらくは大場さんたちは、監視と護衛の兵が付きますので・・・御用があれば兵に申して下さい。」

「学校がまだこの世にあったとは・・・」

「読み書きは必要ですからね!私も最近読み書きが出来るようになったんですよ!」

「時代って奴だな・・・?わかった・・・ありがとう。」桑田に礼を言う大場。

「よかったら、学校と給食センター案内しますよ。直美さん、みんなで一緒に行ってみない?」と桑田。

「うん。行こう行こう!お父さんいいよね?」

「ああ、行っておいで!」

 桑田は直美の弟と妹を連れて、別の施設に向かった。



 P6指令室。柳沢が監視中に異変が起こった。

「西から敵SC・・・た、大群です!」と蒼くなる柳沢。

「街に警報だ!風神出せ。バズー、ダブルも呼べ!」と弘士。

「了解!」と我妻。

「柳沢、正確な数を出せ。松井、レヴィアはどうか?」

「現在、こちらに向かっています!」

「各ブロック外壁砲座用意!予備兵は各ゲートだ!」

「数150!車両不明!新型です!」と柳沢。

「150・・・ジプシャンの本隊なのか!?」弘士は驚く。

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