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四天王  作者: 原善
第一章 プロジェクトソルジャー
26/209

その26 リバイアサン

 この時代、ポリスは既に2つしか残っていない。旧三沢市にある第5ポリスと、旧多賀城にある第6ポリスだけである。第1から第4のポリスは、この時既にジプシャンに陥落させられていた。


 ポリスは旧自衛隊が設けた核シェルターから始まっている。いつからポリスと呼ばれたのかは定かではない。由来は、ポリス=小都市の説もあるが、地表に生き残ったジプシーを救っていた頃、警察の役割をしたからとも言われている。言わばジプシー側が付けた愛称だった。



 弘士はロクにP7に向かへと命令していた。P7とは・・・?

P6が海の沖合いに作り出した、移動海上ドックの名で正式なポリスではないが、七番目のポリスとしてP6の中での通称であった。主に戦前に沈んだ沈没船を引き上げ、貴重な金属を回収するのと、海からの食料となる魚や海草を捕獲し、深海から海洋水を調達するのが主な役割であった。また軍事的には、ポリスの海兵を教育する施設でもある。


「前司令から詳しく話はあるだろう。」と弘士は険しい顔でロクに語る。

「はあ・・・P7で俺にどうしろと?」

「行けば分かる。前司令も同行する。詳しくは・・・」

「タケシは・・・また来ます!」弘士の言葉の途中でロクは立ち上がり反論した。

「だろうな。しかし今はP5を救うのが先だ。心配するな。P7からはすぐ戻る予定だ。」


「はあ・・・」溜め息を漏らすロク。ロクにはP7に行きたくない理由があった。



 真夜中の丘。ヒデたちのキャンプ。ヒデが一人テントに寝ている。そこへ、丸田が入って来る。

「ヒデ!大変だ!」

「なんだ!?」起きるヒデ。

「聖がいないんだ!」


 ヒデが起き上がり眠い顔を手で擦った。

「それが!?」

「それがって?本当にP6に投降したんじゃないのか?」

「先にアジトに帰ったんじゃないか?」

「SCと武器を置いてか?」

「ほっとけよ・・・時期に食料が無くなったら戻るさ・・・」

「しかし・・・」

「タケシには報告するなよ。銃殺だ・・・」

「わかった・・・」テントを出ていく丸田。

「聖の奴・・・」ヒデはテントの隙間から一人遠くを見つめた。



 P6指令室。夜のせいか人も少なく司令席には誰もいない。桑田は一人でパソコンをいじっていた。

「らいじゅうらいじゅうっと・・・雷獣?これか!?白鼻芯?ハクビシン?哺乳類?タヌキに似た?・・・それと・・・雲と雲を行きかう神出鬼没の伝説の獣・・・うーん、これがどうしたのか?」



 P6のある個室。聖がベットで天井を見ながら寝ている。

「明日、タケシは来るのか?その時はヒデも・・・?」聖は眠れない様子だった。



 P6の大場家族の部屋。家族4人が川の字になって寝ている。その中、大場と直美だけが起きていた。

「お父さん?いつになったら、地上に出れるのかな?」と直美。

「さあな・・・?」大場は幼い二人の寝顔を見ている。

「水や食事に困らなくなったのはいいんだけどね・・・なんだか不安なんだよね・・・?」

「この子らが安心して寝れるならいいじゃないか。」

「ポリスってなんか好きになれないのよね・・・」



 ジプシャン軍本部。100台以上のSCが並んでいる横にタケシと石森の姿。

「各車ミサイル積載完了です!」

「そうか・・・見ていろ・・・雷獣め!」



 P6の南ゲートの塀の上。ロクが一人、夜の海を見ている。

「P7か・・・」ロクは一人呟いた。

 


 各々の、運命の日が開けようとしていた・・・




 軍服を着た久弥が、ポリス軍区画の地上にいた。太陽は東から昇り始めていた。空は雲一つない快晴。すると、ロクのジャガーカストリーが向こうから走ってくる。久弥の側に止まると、ロクが降りてくる。


「狭いですが、どうぞ!」助手席のドアを久弥の為に開ける。

「うむ・・・ご苦労!」


 久弥がジャガーに乗り込むと、ロクも車に乗り込み車を走り出した。車はまだ人がいない街を通り過ぎ、南ゲートの前に止まる。塀の上には2名の兵が見える。

「こちら黒豹。南ゲート開けてくれ!」

『了解!』と我妻の声。


 ゲートが開き始めると、全てが開くのを待てずにジャガーはP6を出て行く。車は海へと走り出す。するとその海岸線には、船をひっくり返したような巨大な建造物が海岸に停泊していた。船の底となる部分に艦橋のような物が設置されている。長さは80メートル、高さは艦橋部分で15メートルはあろうか、遠くからみると海岸に転覆した船が打ち上げられたようにも見える。色はくすんだ赤。ジャガーはその巨大な船に走り出して行く。


「何か話があると聞いてますが・・・?」ロクは久弥に向く事なく問う。

「うむ・・・実はお前にP7の配置を考えている。」

「はあ・・・私に車を降りろと・・・?」

「P7でP5から来るジプシーの志願兵を、海兵として育てて欲しい。その教官として働かんか?」

「ありがたい話ですが、少し考えさせて下さい・・・」低い声のロク。

「銃で敵兵を撃てない奴を前線に置けないと、反発する声が多くてな・・・」

「曽根参謀ですよね?」


 久弥はその質問は答えなかった。車はその赤い船の側に来ようとしていた。

「こちら、黒豹。レヴィア1番艦。ハッチ開けてくれ。」

『確認した。了解!』無線が返って来る。


 船の外側の中心部分が上から下へと開き始める。砂地にその部分が付くと、その扉部分が坂道となり車ごと船に入れるようになっている。ロクはSCごとその坂道部分から船へと入る。


 船の中は、SCが5台程が格納される広さだった。扉は再び閉じ始める。艦内は所々が逆さまのままの作りが残っている。扉が閉まると、空気の流動する音が多く聞こえていた。


 薄暗い車庫。車を降りたロクと久弥は、近くの階段で上へと登り始めた。船の底部分、この船では甲板部分に上がると、更にブリッチまでの階段を上がる。


ブリッチ内は意外と狭く、ロクよりも若い海兵4人程が計器を見つめていた。その一人で艦の操縦器を握っていた男がロクに声を掛けてきた。


「ロクさん!これはこれはお珍しい!」

「おお・・・桜井か・・・?」


 ロクに声を掛けたのはこの船の航海士の桜井。歳はロクと同じくらいだ。

「訓練航行で船酔いでダウンされて以来ですかね?」

「それを言うな・・・」桜井から目を逸らすロク。

「この艦、P7に向かうんですよ?陸戦トップのロクさんが海兵のP7に何用なんですか?」

「さあな?親父さんに聞きな?」素っ気ないロクの態度。


 久弥は階段入り口近くの後方中央部分に座ると各員に指示を出した。

「レヴィア発進準備!」

「了解!」と桜井。

「俺は下の格納庫にでもいますよ・・・」



レヴィアはポリス主力の水陸両用のサンドシップだった。名前の由来はリバイアサン(海竜)の語源から来てる。戦前の沈没船を引き上げ、艦底部分だけを切り取り、逆さにしたところにエアーブースターを取り付けた、正にリサイクル艦だった。それ故にいくつかある艦艇は各々長さや作りが違っていた。

逆さにしたのは訳がある。簡単にエアーブースターを取り付けて、改造出来るのが最大の理由だが、海中を潜航する機能を取り入れたのはこの時代、ポリスのレヴィアタイプだけであった。



 自分の居場所がないと感じたロクはブリッチを出ようとしていた。

「ここにいろロク。間もなく潜水航行を取る。」

「はあ・・・」

「ブリッチ、封鎖します!タラップ上げろ!」桜井は発進準備に入る。


 ロクは仕方なく、開いている席に座った。甲板からブリッチに通じている階段が上がり、ブリッチ内は密封された。



 P6の見える丘。ヒデのテントに丸田が入って来る。ヒデの隣には、裸の女が寝ていて、慌ててテントを出る丸田。

「おいおい・・・」

呆れる丸田。テントの外で丸田はヒデのテント内に大声を上げた。

「ヒデ!雷獣だ!しかも海竜もいる!」


 ヒデは渋々テントから出てくると。裸の上半身にポンチョを羽織っていた。

「待機だろ!?出る幕じゃねぇよ。」

「いいのかよ!?昨日とは態度違うんじゃねぇか!?」


 丸田はヒデの態度に怒りさえ感じていた。するとP6の方から巨大な、砂煙と轟音が響き渡った。風のせいか、5キロ離れた丘までも聞こえてくる。 丸田が海竜と言っていたのは、ポリスの強襲戦艦レヴィアであった。レヴィアは船体の周りからは砂煙をはきながら海へと移動して、そのまま海へと入って行く。更にしばらく行くと甲板まで海水に漬かり、しまいには見えなくなってしまった。


「海に入ったら追えねぇな・・・」双眼鏡でその様子を見つめるヒデ。

「どうすんだよ!?」と丸田。

「待機だろ?もうひと寝入りだな・・・」再びテントに入るヒデ。



 レヴィアブリッチ。既に海中を航海している。

「レヴィア潜水航行に入ります!」と桜井。

エアー音からエンジン音に船は切り替わった。


「ロク・・・先程の話だが、断ってもいいんだぞ?」と久弥。

「はあ・・・?」

「弘士に言われた時に、ロクは受けないと思うと言ったんだ。お前は進んで車から降りないとな。ストラトスのタケシもタイミングよく来たしな。ロクにはまだまだSCに乗っててもらわないと、奴とまともに戦えるのはロクとダブルくらいだしな?」久弥は海中の窓を見つめる。

「おやじさん・・・」

「海兵の教育はわしがしよう。元々わしがする予定だ。わしの最後の仕事だ。ロクも車相手なら戦えるのだろ?」

「まあ・・・」

「なら、弘士にはわしからそう伝えておく・・・」決してロクの顔を見ない久弥がいた。

「すいません・・・」



 P6の取調室に机と二脚の椅子。一つに聖が座らされている。そこへノックもせずダブルが部屋に入ってくる。

「なんだ、あんたか!?」がっかりして机にダラケて見せる聖。

「俺じゃ悪かったようだな・・・」ちょっとムッとするダブル。

「あいつは?ロクとかハチとか・・・」

「今日はいない。」

「そうか・・・じゃあ早く取調べしてよ。」


 聖はロクが居ないのを知ると、机に両肘をついて頬杖をつき、気を抜けた態度を取る。

「なぜ投降を?」

「昨日、あいつに話したよ・・・」目を合わさない聖。

「聞いてないな・・・」

「タケシ・・・また来るよ・・・」話を変える為、話題を逸らす聖。

「なぜ?」

「仲間・・・そう言っていたし~!」

「あんたは軍に所属してるのか?」

「まさか!正式にはまだよ。ジプシャン軍が出した条件は四天王の首だった・・・仲間は四天王の首を取ろうとした・・・でも失敗・・・」

「それでポリスに侵入した・・・?」


「もう嫌になった!!ロクみたいなのがまだゴロゴロしてるんでしょ!?無理よ・・・あんたも四天王のひとりなの?」時折キレてみせる聖の喋り。

「ここでは四天王とは言わない。ジプシャンの四天王狩りが始まってからは特にな・・・」

「そうだね。確かにハイって言わないよね?」

「タケシはいつ来るんだ?」

「さあね。上の人間だけ会ってるけど、見たことないしね。タケシの命令で丘で待機になってるようよ・・・ねぇ?本当にここ大丈夫なの?ポリスはいい噂聞かないよ?来て早々に陥落させられたらイヤだよ・・・」

「心配するな・・・」



 潜水航行中のレヴィアブリッチ。桜井の動きが慌しくなる。

「親父さん!間もなく、P7近辺です!」

「よし、レヴィアを海上に浮上させる!」と久弥。


 レヴィアは海上に浮上し始めた。海上は波が高く、浮上したレヴィアはその波に大きく揺れていた。その前方には、幅が300メートル、高さは海上から20メートルくらいの四角い鉄の要塞が海上に浮いていた。

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