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四天王  作者: 原善
第一章 プロジェクトソルジャー
25/209

その25 誘惑

「下に行く。取りあえず乗れよ!」とロク。


 キーンはロクの車の助手席に乗り込むと、車はシャフト内に入庫する。

「あの大場のおっさんの発言で、俺たちにもスパイ疑いが掛かっている・・・」

「あらら・・・スパイの件か?まあ誰が騒いでるか察しがつく。」


 苦笑いするロク。

「桑田や松井らは、さっき指令室を一時外された。」

「それは酷いな・・・で?俺たちは?」

「まだ指示は出てない。」

「仲間なのにな・・・」ふと寂しげな表情を浮かべるロク。

「それとロク!?丘の上で何してた?指令室は大騒ぎだったそうだぞ!?」

「ふふふ・・・ジプシーの保護活動だよ・・・」

 ロクは微笑んだ。


「お、お前?撃たれたのか?」

 キーンはロクの穴だらけのポンチョを見て驚いていた。

「いいや。ここから撃っただけだ。撃たれたんじゃない。」

「なんでこのタイミングなんだよ?しかも敵のど真中かよ?今、一番疑いがあるのはロクだぜ?P5に用もないのに行ったりするだろ?あの参謀がうるさく言ってるそうだ。」

「ポリスは何でもかんでも、こっちのせいにするよな?まあ今更だけどな・・・」



 エレベーターが停まると、地下3階の車庫に到着する。そこには桑田と松井が待っていた。

「ロクさん。ご無事で・・・」と桑田。

「聞いた。指令室を外されたんだって?」


 松井もここぞとばかりロクに愚痴をこぼす。

「酷いですよ。ジプシーだからって・・・」

「そう言うな。ポリスも仕事だろ?対象者は何人だ?」

「約8人です・・・それと司令が呼んでいます。」と桑田。

「俺たちは指令室に入っていいのか?」

「ロクさんたちは、IDはまだ無効になってないはずです。」

「すぐ行く!そうだ、それと桑田?“らいじゅう”って意味調べておいてくれないか?」

「は、はい・・・“らいじゅう”ですか?」首を傾げる桑田。

「うん・・・頼む・・・」



 P6指令室。雛壇の上には弘士でもなく、久弥でもない軍服を着た男が座っていた。歳は45くらいだろうか。そこにロクが入ってくる。

「司令は!?」

「敬礼ぐらいしろ。ロク!」男はロクを叱りつける。


 ロクは、不機嫌な仕草で敬礼をする。

「どこにいます!?参謀?」


 男はこのP6の参謀で曽根。ロクたちの天敵だった。

「会議室で会議だ。少し待て!」

「あんたか?ジプシーの隊員を追い出したのは?」

「まずは報告だろうが!P5はどうなんだ?」

「なぜ仲間を疑るんだと聞いている?」

「司令の命令だ・・・」

「その事で司令に会う!」無理に突破しようとするロク。

「駄目だ!」体を張って曽根が阻止する。


「桑田らがここに入れないなら、俺たちもここに入らないぜ!」

「それは構わないぞ・・・で?まず説明しろ!丘で何をした?」

「保護活動さ・・・」口を尖らすロク。

「敵と接触してたのではないか?スパイがどうのこうの言ってる時に、疑われる行動するな!」


「仲間を信じないのかよ?あんた、どうかしてるぜ・・・」


「参謀!北ゲートから連絡。ジプシーの女性が一人、投降した来たとの事です!」我妻が曽根に報告する。

「なに?」

「それが・・・今街に入った。ライジュウを出せと言ってるそうです?」

「ロク、お前のようだな?保護活動が実ってよかったな。」


 まるでロクに嫌味を言うように曽根は呆れていた。

「上に行きます!P5の件は四天王は2名不明。大場のおっさんの言う通りだとそう司令に伝えて下さい。」

そう言うと、ロクは指令室をそそくさと出て行った。



 P6北ゲート。既に日は暮れていた。塀の向こう、暗い荒野の中にライトを浴びて聖が立っていた。タンクトップは胸の下まで、半ズボンは穴だらけ。露出の多い聖を見たさに、既に塀の上にはたくさんの見物兵でいっぱいになっていた。


「いい女じゃねか!なんて格好だよっ!?」

「よう!ねぇちゃん、早くこっちに来いやー!俺たちが暖めてやるぜ!はははっ!!」

 塀の上からたくさんの声が飛ぶ中、聖は徐々にイラついていた。


「いつまで待たせるのさ!夜なんだからさ、凍えちまうよ!」


 すると、重い北ゲートが左右に開きだした。ゲートの中からは銃を構えた兵が5名程、その中にロクの姿があった。すると後からダブルがこの5人を追いかけてきた。


「耳が早いな・・・ダブル・・・」とロク。

「なぜ俺に連絡しないのかな?ロク君・・・お待たせしましたお嬢様・・・」

「あ、あんた誰!?」


 唖然とする聖に対して、ダブルはいつもの口調だった。

「申し遅れました。わたくし・・・」

「ヒジリか?」


 その名前に一番びっくりしたのは聖本人だった。

「おいロク・・・お前な・・・?」とダブル。

「どうして私の名前知ってのよ!?」ダブルを無視してロクに語る聖。

「無線でそう呼ばれていた・・・」

「耳がいいねぇー!さすが四天王!」

「随分派手な格好だな?」聖を下から見回すロクだったが、聖の露出の多い格好に、一度目をそらした。


「イヤらしい目で見ないでねよね!武器を持ってないように見せないと撃たれるじゃん!」

「俺の説得で投降したわけだ?」

「そうよ!ありがたいと思ってよ!」口を尖らす聖。

「寒かったでしょう。中にどうぞ。お嬢様?」とダブル。

「だ・か・ら・あ・ん・た・誰・よぉー?」

「申し遅れました・・・わたくし・・・」

「私は、この四天王に用があるの!ねぇ早く街の中を案内してよ?」


 すると聖は、ロクの肘に手を入れるとP6の中に入っていった。

「くっ・・・ロクめ、いつもおいしい所を・・・」二人の背中を見つめるダブル。



 ロクと数名の兵が聖を乗せてエレベーターに乗り込む。ダブルの姿はなかった。聖はロクの横顔をじっと見つめていた。

「あんた・・・本当は弟を殺してない・・・」突然、聖の重い口が開く。

「ん?」

「噂が本当ならあんたは人を銃で撃たない。さっき、指を折った者が一人だけ・・・しかも銃を構えないで撃つなんて・・・ジプシャンなら殺されていた・・・」

「その噂、どんな噂だよ・・・?」目を細くするロク。

「いいの!あんたは弟は殺してない!そう決めたんだ!」

「ふっ・・・変な女だな。確かに俺はあの時何もしてない。だが俺のせいで死んだのは事実だろ?恨まないのか?」

「弟と言っても、本当の弟じゃないし・・・」

「すまなかった・・・」

「いいの。もう忘れる・・・」

「ところで、ライジュウってなんだ?そう言われていた。」

「さあ知らないわ。皆がそう言ってたから。そう言えばあんたの名前は?」

「ロクだ。明日から取調べをする。いいな?」

「ろく?・・・じゃあ、あんたが担当してよね?」

再びロクの肘に腕を絡める聖。

「あいにく、担当外でな・・・」

 エレベーターが止まると、ドアの前には桑田がいた。桑田はロクよりも聖に目が行く。


「ふーん・・・ポリスにも女はいるんだ?」

桑田の姿に慌てて手を振り切るロク。

「と、当然だろ・・・ど、どうした桑田?」桑田の様子を伺うロク。

「は、はい。会議が終わったので、司令が会議室に来て欲しいと伝言です・・・」

「わかった。この人を連れて行ってからそっちに行く。」

二人の様子を興味深く観察する聖。


 そうするとロクたちは、桑田を置いて廊下を歩き始めた。

「今の・・・あんたの彼女でしょ?」

 聖は初めてロクの前で笑顔になる。


「血は繋がってないが・・・妹だ。」

「嘘よ。彼女を見れば、わかるわよ。同じ女ですもん!」

「何がだよ?」

「私といたあなたを見て、悲しい顔してたわ。謝っておいてね。」

「あんたが謝ることはない。彼女はそんなに弱くないさ・・・さぁて、今日はここにいてくれよ。」


 ある長い廊下に面した一室の前に二人は止まる。その部屋に真っ先に入る聖。小綺麗な作りのワンルーム。聖の目が輝く。

「あら、ポリスにしては随分まともね。ベットもあるし・・・私ね、誰か添い寝してくれないと寝れないの。今日はあんたでいいわ。」上目使いでロクを見上げ、胸の谷間を寄せてみる聖。

「おいおい・・・まだ首と胴を離したくないんでね・・・さっきの奴なら声掛けておくけど?」慌てて聖の目線から目を逸らすロク。

「いい男だけど、あたし背の低い子駄目なの・・・」

「ふふっ。そう伝えるよ!また明日な!」部屋を出ようとするロク。

「明日、あんたじゃなきゃしゃべんないからね!」

「なら自白剤で吐いてもらうさ。」


 ロクはそう言うと部屋を出て行った。聖はベットに飛び込んで横になった。

「ベット初めて!」

 聖は枕を力任せに抱き締め、ベットを左右に転がり始めた。



 会議室。20名くらい座れる丸テーブルに、弘士一人が座っている。そこにロクがノックして入ってくる。

「入ります!」

「すまん。まあ座れ。」


 弘士に対するようにテーブルの反対の席に座るロク。

「桑田の件ですが・・・」まずロクが開口一番に発した。

「ああ、明日にでも解除させる。あんな噂が出る以上しかたがなかった。許せ・・・」

「いいえ・・・」

「P5の二人の件は曽根参謀から聞いた・・・二人ともお前が育てあげたんだよな?」

「弟以上の奴らでした。まだ二人とも15歳なのに・・・」

 ロクは目の前のテーブルを力任せに叩いて見せた。


「それで?向こうは持ちそうなのか?」

「次の定期便で、残りのジプシーを送りたいそうです。」

「そうか・・・いよいよだな・・・?」

「P5の地下工場プラントが無くなれば、P6は・・・」

「確かにSCはもちろん、武器等はなくなる・・・」

「しかし・・・死龍ならやってくれると思います。あの・・・?そう言えば司令は私に話があるのでは?」

「あ、ああ・・・ロクに命令を下す!」弘士が急に命令口調になる。

「は、はい!」 ロクは直立になる。


「明朝、07(ゼロシチ)時にレヴィアにてP7(ピーセブン)に向かへ!」

「P7・・・?ですか・・・?」 ロクは一瞬戸惑った。

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